大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・まどか乃木坂学院高校演劇部物語・27『第六章・3』

2016-10-13 06:02:53 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・27   


『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第六章 貴崎サイドの物語2 貴崎マリのスカートひらり……3』


 教頭からの指示ということで校門を出た。

 ニンマリするわけにもいかず、致し方なしという顔でいた。
 しかし、踏みしめるプラタナスの枯れ葉が陽気な音をたててしまうのは気のせいだろうか。
 潤香は、集中治療室から、一般の個室に移っていた。
 付き添いしていた潤香の姉から、大人びたねぎらいの言葉をかけられ、少し戸惑った。
 しかし、潤香の意識が回復するのも近いと聞かされホッとした。
 まどかたち三人はショックなようで、夏鈴が泣き出し、里沙とまどかの目も潤んでいた。
 わたしは二度目だけど……やはりベッドの上の潤香の姿は痛ましい。
 そっと窓に目をやると、スカイツリーが見える。
 孤独に一人屹立した人格を感じさせるのは、抜きんでた六百三十四メートルという高さだけではないような気がした。


 放課後、部室と倉庫の整理をやった。

 部室は、クラブハウスの一角なので、規模も小さく、しれたものだけど。倉庫が大変だった。夕べひととおりやってはいたんだけど、予選で落ちたショックが大きかったのだろう。
 あらためて見ると乱雑なものだ。あらゆるものが、ただ所定の場所にあるだけ。道具や衣装の箱の中は、地震のあとの小間物屋のような状態。
この有り様を予想したわけでは無いだろうが、四人がクラブを休んでいた。
 衣装係のイトちゃんがぼやいていたが、みんな黙々と、それぞれの仕事をこなしていた。

 それは、部長の峰岸クンたちと「新しい倉庫が欲しい」と冗談めかしく話しているときに起こった。

「火事だ!」
 誰かが叫んだ。
 驚いて振り返ると、倉庫の軒端から白い煙が吹き出していた。
「だれか火災報知器を鳴らして。消火器を集めて!」
 白い煙は、わたしの叫び声をあざ笑うかのように炎にかわった。

 そして、信じられないことが起こった。まどかが、燃え始めた倉庫の中に飛び込んだ……。
「まどか!」
 みんなが口々に叫んだ。
 炎は、もう倉庫の屋根全体に広がりかけていた。みんな、まどかの名前を叫ぶだけで助けにに行こうとはしない。いや、できないのだ。勢いを増した炎に臆して足が出ない。輻射熱が、倉庫を遠巻きにしたわたしたちのところまで伝わってくる……。

 ドボンという音がした、わたしの中で何かが落ちるような音だった。

 潤香に続いて、まどかまで……グっと苦い思いがせき上げてきた。
 そして次の瞬間、わたしは倉庫に向かって走り出した。
「マリ先生!」
 峰岸クンが、わたしを引き留めた。
「放して!」
「先生は、先生の身は、先生だけのものじゃないんですよ! 先生は……」
 峰岸クンは、ほとんどわたしの秘密を喋りかけていた。だれにも知られてはいけない秘密を……。
「わたしの生徒が! いやだ! 放して!!」
 わたしは渾身の力で抗った。
 ビリっと、チュニックが裂ける音がして、わたしは峰岸クンの羽交い締めから抜け出した。
 そのせつな刹那、黒い影が、わたしを追い越して、炎が吹きだしはじめた倉庫の入り口に飛び込んでいった。


 この一週間で、病院に来るのは四度目だ。

 まどかは、すんでのところで助けられた。あのとき倉庫に飛び込んだ黒い影に。
 燃えさかる倉庫から、その影は、まどかを抱いて現れた。直後、倉庫の屋根が焼け落ちた……。
 黒い影は、用意されていた担架の上に、まどかを横たえた。
 わたしは、すぐに、まどかの呼吸と鼓動を確かめた。異常はない。
 そして、目視で、やけどをしていないか確認した。
「大丈夫ですか……?」
 黒い影が口をきいた。
「大丈夫、気を失っているだけのよう」
「よかった……」
 初めて黒い影の姿を見た……全身から湯気をたて、煤けた姿は、近所の青山にある修学院高校の制服を着ていた。

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