大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・31』

2017-06-19 06:06:28 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
 はるか 真田山学院高校演劇部物語・31

出版された『はるか ワケあり転校生の7カ月』の原話ノーカット版。いかにはるかは生まれ変化していったか!?

『第四章 二転三転・2』

 一度だけの印象で人のことを決めつけないように気をつけている。

 女の子の「好き嫌い」なんて、たいていこの第一印象で決まる。

 そういう「第一印象決め」の浅はかさを、わたしは、東京にいたころから知っている。
 お父さんの会社関係の人とか、学校の友だちとか。
 荒川に越してきたころ、工場で働いているオジサンたちはおっかなかった。それまでのお父さんの会社の人たちと全然印象が違った。
 前の会社は、お父さんが社長ということもあり、わたしにはみんな優しかった。
 荒川の工場はまるで違った。
「ばか、ガキが工場の中うろつくんじゃねえ!」
 森さんという、オジサンに叱られたときは、びっくりして泣いちゃった。
 しばらくは、森さんや、田代さんという、オジサンを避けていた。
 少し大きくなると、分かった。工場は輪転機や裁断機とか、子どもにとっては危険なものが一杯ある。
 だから、森さんは最初に、ガキンチョのはるかにカマしておいたんだ。

 わけが分かるようになってからの森さんは優しかった。
 近所の人たちや、下町のシキタリを面白く教えてくれた。お昼の休み時間なんか、近所の仲鉄工のオジサンたちとボール遊びなんかしてくれた。隅田川の花火大会にも連れていってくれた。
「了見しなっくっちゃいけねえ」
 これが口癖で、一番若いシゲちゃん(茂田さん)なんかをよく意見していた。
 だから、自然に人に対しては、余裕のある目で見られるようになったつもり。

 だが、逆に、了見しきってしまうと、容易には変わらない。

 わたしは、お母さんが残している特別なゲラを見なおしてみた。
 赤、青、緑の三色のボールペンで、「これでもか、これでもか」って感じで思案の跡が見て取れた。生々しい激戦場の跡を見る思いだった。
 これだけの苦悩の果てのスランプなんだ……。

 わたしは、おかあさんを了見し直した。

 明くる日、昼休みの中庭。タロくん先輩から、大橋先生の手紙をもらった。

 ちょうどいい機会なので、昨日タマちゃん先輩と話した、クラブのことを相談しようと思った。
 先輩は他の部員にも「手紙を届けんとあかんから」と、ソソクサと行ってしまった。
 先生の手紙には、励ましの言葉とともに好子という役の特徴について、要領よくまとめてあった。
 そして手書きの好子のイラストが添えられていた。
 顔はわたしに似ていたが、ちょっと感情過多。ひとひらの雲に夢を乗せて頬笑んだり、枯れ葉一枚落ちただけで涙するような……。
 それだけ、好子が人間ではなく、アンドロイドと分かったときのショック。そして好子への哀惜が強く伝わる仕掛けになっているんだなあと感じた。
 サインは「目玉オヤジ大権現御使」とあった。
 なるほどね、と思って封筒に戻そうとしたら、B5のプリントがもう一枚入っていた。
「香盤表(こうばんひょう)……?」
 縦軸にシーン割り、横軸に役名……。
 なるほど、これを見たら、だれがどのシーンに出ているか、だれとシーンがかぶっているか一目瞭然。
 さらによく見ると、全員の出番が、ほぼ同じ長さになるように工夫がされていることも分かった。
 こんな手紙を六人みんなに書いている……。
 ということは、昨日タマちゃん先輩と心配していたのと同じこと。それに気がついて、それとなく先生はボールを投げてきたんだ。
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