大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・あたしのあした・34『毎朝テレビの者なんですけど』

2016-10-15 11:15:38 | 小説
高校ライトノベル
あたしのあした・34
『毎朝テレビの者なんですけど』
      

 学校を出て二つ目の角を曲がったところで声を掛けられた。

「ちょっといいかしら、毎朝テレビの者なんですけど」

「はい? なんでしょうか?」
 クエスチョンマークを二つも付けてトボケテはみたけど、水野先生のことだと直ぐに分かった。
「田中恵子さんですね?」
 人定質問をするとマイクを突き付けられた。
「水泳の補講でのセクハラについて聞きたいんですけど」
 本題に入ったところで囲まれてしまった。前にレポーター、左にカメラ、右に音声、後ろは駐車場のフェンスだ。
「水野先生に触られた時は、どんな感じでしたか?」
 セクハラ確定の物言いだ。
「もう何人にも聞いたんですね」
「ええ、いろいろ話してもらえました」
 どんな内容だとかは言わないけれど、眉のひそめ方でセクハラ被害に遭ったことを暗示して答えを誘導する聞き方だ。
「誘導にはひっかかりません。みんなには、あたし一人に一本化するように言ってあります。この件についてはなにも聞き出せていないと思いますが」
 あたしは自分の立位置をはっきりさせておいた。リスクはあるけど、みんなと先生を守るためだ。
「ええ、たしかに他の人たちは答えてもらえません。だから、田中さんに……」
「ここで何を言っても、そちらが結論を持っていたんじゃ意味がないと考えます」
 マスコミの扱いは毎朝新聞と毎朝テレビがいちばん厳しい扱いだった。
「予断とか結論とかは持ってないですよ、みなさんから教えていただいたことをもとにやってますから」
 その教えていただいたことは毎朝テレビが誘導して編集したものだけなんですけど。このことを言い出すと水掛け論になってしまって、争っているところだけを放送されて、いいように使われてしまう。

 あたしはカメラに向かって提案した。

「どうでしょう、あたしたちの補講をみなさんの目で見てもらって判断してもらえないでしょうか。話を聞いたりSNSの動画やコメントだけでは分からないと思うんですが」
「そいうのもあるかもしれないけど、まずは……」
 自分たちの間尺に合わないものは簡単にスルーしようとする。
「いいアイデアでしょう……でも問題があるんです。水野先生が身動き取れないということなんです」
「先生は体調不良でお休みになってらっしゃいますもんね」
 白々しいことを言う。
 だけど、学校がそうさせているんだなどと言うとぶち壊しになる。
「補講が再開できるということになれば、先生は、きっと元気になられます。ぜひ、毎朝テレビやみなさんから働きかけてください!」

 この提案はスタジオの方でも面白がられたようで、レポーターも、それ以上は突っ込んではこなかった。

 インタビューが終わってからレポーターさんに名刺をもらった。性格には似合わず姫野姫子というかわいらしい名前だった。
 メアドなんかも交換して機嫌よく別れたけれど、あたしは思った。

 もうひと押ししておかないと流れを変えることはできない。あたしの提案以外に、もう一つダメ押しがいる……。
 
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