大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・トモコパラドクス・47『友子のマッタリ渇望症・2』

2017-03-30 06:39:05 | トモコパラドクス
トモコパラドクス・47 
『友子のマッタリ渇望症・2』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


「お相席でよろしいですか……」思わぬ声をかけられた。

 駅前のパンケーキ屋はいっぱいなので、向かいの道を一筋入ったコーヒーハウスに入ったのだ。


 で、空席と思った四人がけのシートに腰掛けたら、ウェイトレスの女の子に言われた。
 言われて気づくと、向かいに、大人しめの学生風が、サマージャケットで座っていた。
「あ、ごめんなさい。気がつかなくって」
 そう言って、立ちかけると。サマージャケットが静かに言った。
「これも、何かの縁。よかったらいっしょにどうぞ」
 いつもの友子なら、断っている。そもそも、四人がけのシートに人が居ることに気づかないわけがない。
 面白いと思うより、そこまでボンヤリしてしまっている自分を、そのままにしたくて座ってしまった。

「オレンジジュース」

 そう、オーダーすると、向かいのサマージャケットが、店内の鏡二枚を使って友子のことを見ていることに気づいた。
「オレンジの成分分析で、産地のバーチャルトラベル。悪くはないけど、もっとリラックスしたら」
「え……」

 この時点で、サマージャケットが人間でないことは分かったが、不思議に警戒心は湧いてこなかった。

「ぼく、城南大学の滝川修。君は?」
 友子は、笑いを堪えて答えた。
「乃木坂学院の鈴木友子です」
「じゃ、トモちゃんでいいかな?」
「いいも、なにも、全て知ってるんでしょ?」
「知らない。トモちゃんが、あんまりくたびれてるみたいだったから、オレンジジュースについては読んじゃったけど」
「滝川さんも……義体なんでしょ?」
「そうだよ。ここじゃ、誰でもそうだし、誰も気にしないんだ」
「え……?」

 ウェイトレスの女の子と、三人のお客さんが、友子の方を向いてニッコリ笑った

「ここは、義体が心を休めるための店なんだ。僕たちみたいな……義体のためのね」
「それって……」
「ハハ、難しい理屈は抜き。とりあえずトモちゃんのオレンジジュースだけどね」
「和歌山産ですね?」
「そういう味気ない解析はやらないの。和歌山産のミカンというとね……」
 サマージャケットの滝川は、紀伊国屋文左衛門の故事から、前世紀のミカンの輸入自由化までいろんな話をしてくれた。それは、知識としては友子の頭の中には全て入っていることだったが、滝川の話が面白く、つい笑い転げてしまった。

「じゃ、今度は電話でもするよ」 
 
 楽しく話しているうちに、いつのまにか夕方になっていた。
 店を出るとき、『乃木坂』という店の名前を確認し、表通りに出る前に振り返った。

 そこは、ただ二十坪ほどの更地だった……。

ジャンル:
小説
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