大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・53』

2017-07-11 06:44:23 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・53

出版された『はるか ワケあり転校生の7カ月』の原話ノーカット版。いかにはるかは生まれ変化していったか!?


アハハと笑いながら読み、高校演劇の基礎とマネジメントが分かる高演ラノベ! 


『第六章 おわかれだけど、さよならじゃない2』

 明くる日は合評会、お菓子やジュースを並べ、観にきてくれた子も何人か交えて賑やかにやった。

「よかったよ!」「すごかったよ!」と、みんな褒めちぎってくれた。
 ちぎって、ちぎって、ちぎり倒してちょうだい!
 しかし……。
 ちぎったお褒めの言葉を掃き散らすように、大橋先生は言った。
「合評会いうのんは、互いに批評する場所や。批評にはええことも悪いこともある」
「悪いとこなんかなかったですよ」
 由香が異議をとなえた。

「そうでもない……」

 先生は、記録に撮ったDVDを観ながら鋭く指摘した。不自然な力み。感情表現のフライング。ミザンセーヌ(舞台上での役者の立ち位置)が、稽古とは違ってしまい、かぶってしまったところ。心理的距離と物理的距離が合っていないことなど。
 やっぱキビシイー……落ち込むよぅ。
「提案が一つある。合評会は元来、言いっぱなし、言われっぱなしでかめへん。せやけど出てきたアイデアは生かしたいと思う」
「アイデアて、まだなんにも出てないと思いますけど……」
 タマちゃん先輩がおそるおそる言った。
「オレの頭には出てる。N音大からもろた譜面生かして挿入曲を増やそと思う。山中さんに譜面預けとくさかい、いけそうなん見つくろうてくれる。あんたの感覚は音大の学生並や……て、ひょっとして音大志望?」
「は、はい……一応」
 みんな驚いた。山中先輩はスーパーガールだ!
「いや、山中さんだけやない。キミらやったらいけると思う。稽古の休憩中に唄てた歌聞いてていける思た。なあ、乙女先生」
「は……はい」
 さっきから静かだと思ったら、乙女先生、顔が真っ青……。
 ズルズルっと先生が椅子からくずおれた!

「乙女先生!」

 救急車を呼んで、乙女先生は病院へ行った。大橋先生と、職員室に居合わせた竹内先生が付いていった。
わたしたちは、どうしていいか分からず、そのままプレゼンに全員が残った。わたしたちは、先生達の都合なんて考えもしなかった。
 乙女先生には、要介護三のお母さんがいる。
 知識としては知っていても、その大変さを想像したこともなかった。
 先生は主婦であるとともに、要介護三のお母さんの娘であり、教師である。そして、その三つの立場には、またそれぞれわたしたちの想像もつかない様々なことがあるんだ。

 二三十分もたっただろうか、タロくん先輩のスマホが鳴った。
「オレや(大橋先生)乙女先生は大丈夫や。過労みたいやな。今は点滴やってる。で、よう聞けよ、これから一週間は部活休みにする。自分らも疲れてるやろ、オレも野暮用溜まってるさかいにな。あ、はるかと代わってくれるか」
「え、わたし?」

 先生はトコさんのケータイの番号を聞いてきた。ケータイを持たない先生だから当然といえば当然なんだけど、なんでトコさんだったんだろう……。

 幸い乙女先生は病院に一泊しただけで、無事に退院。自宅療養。
 お見舞いを考えたんだけど、かえって先生の負担になるだろうと中止になった。
 われわれも、それぐらいの想像はできるようにはなった。
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小説
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