大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・連載戯曲『あすかのマンダラ池奮戦記①』

2017-07-15 06:21:16 | 戯曲
連載戯曲・あすかのマンダラ池奮戦記①

 作:大橋むつお


 


時: ある年の、暖かい秋
所: マンダラ池のほとり ミズホノサト

人物: 元宮あすか  女子高生
    イケスミ   マンダラ池の神
    フチスミ   イケスミの旧友の神
    桔梗     伴部村の女子高生(フチスミと一人二役)


 軽快なテーマ曲流れ幕が開く。通称まんだら池のほとり。ドタバタと猫の走る音がして、あすかが駆けてくる。背中にリュック式のかばん。手には、壊れたラクロスのスティック。頬にひっかき傷。

あすか: こら! まて! この恩知らずネコ! 逃げ足の早い奴だ。たすけてもらっといて、ひっかいてくことはないだろ、イテテ……命の恩人だぞ、あたしは……せめて、ニャーとかミャーとか、お礼の一言ぐらい言ってけよ……(池の水面に顔を映す)あーあ顔に二本も赤線……赤は成績だけで十分だっつうの。アニメだったら、ここからドラマが始まるとこだよ「なんとかの恩返し」とかなんとかさ(壊れたスティックを見て)高かったんだぞ……もともと出来心で入ったクラブだけどさ……イケ面の真田コーチも辞めちまうし……ラクロスなんて場合じゃないのよねえ(成績票を見る)……ああ、英・数・国の欠点三姉妹! あわせて物理と化学も四十点のかつかつじゃん!?……もう終わっちゃったよ、あたしの人生……こりゃ、お母さん思うつぼの轟塾かあ……やだよ、あそこ。成績はのびるけど、変態ボーズの宗教団体系ってうわさだよ。冬なんか褌一丁の坊主といっしょに座禅とかで、偏差値の前に変態値が上がってるっつーの!

 うしろ手に手をつき、足を投げ出す。

あすか: ……雨、ザーッと降ればいいのに。壊れたシャワーみたいにさ。そしたら、そのシャワーで溶けて、流れて……ウジウジ悩んだり、あせったりしなくて……そんなふうに思って雨に打たれたら、ドラマのヒロインみたい……冬のソナタ……秋のヌレタ……濡れた女子高生……なんかやらしい……だめだ(降らない)変なことばっかり言ってるから、猫も雨も、みんなあたしを見かぎる……ん……うそ!? 成績票が(池=観客席、に落ちてる)

 池に落ちた成績票を壊れたスティックで、たぐりよせようとするが、あせってかきまわすばかり。とうとう池に沈んでしまう。

あすか: あっちゃー……って、おっさんか、あたしって。コーヒーのしみつけただけでネチネチ三十分。なくしたなんて言ったら、どれだけ嫌み言われて、しぼられることか。「通知票を粗末にする奴は、二学期に絶対欠点!」……とっちゃったもんなあ……「池に落としてなくしちゃいました」「じゃ、あすかも消えて無くなればァ……」うかぶよ、担任のおっさんの顔が……秋深し……って言っても例年にないこの暖かさ。くよくよしても仕方ないか……よし、走って帰るぞ!……って、空元気つけてどうすんだよ……ウ!……ウンコ踏んじゃった。

 雑草やティッシュで、ウンコを拭き取り、ぶつぶつ言いながら、池の水で靴を洗う。ややあって、そのあすかの目の前の池の中から、イケスミ(池の神)があらわれる(観客席の一番前に座らせて隠しておく)

あすか: ……ワッ?!
イケスミ: こんにちは……(チェシャ猫のように油断のならない笑み)
あすか: オ、オド、オド……
イケスミ: そんなにオドオドすることないからね。
あすか: オドロイてんの! 急に池の中からあらわれるんだもん。
イケスミ: ヌハハハ……
あすか: やっぱ、気持ちわるーい……
イケスミ: ここは、あたしの家なんだからね! そして、あんたがしゃがんでんのが、そのあたしの家の玄関先……ほら、そこに鳥居の跡があるでしょうが?
あすか: ……この切り株みたいなの?
イケスミ: 昔は、お社(やしろ)とかもあったんだけどね……
あすか: ……ごめんなさい、靴洗っちゃった……ウンコつきの……怒ってる?
イケスミ: まあな。でも、いちいち怒ってたらきりがない。
あすか: ほんとにごめんなさい(居ずまいを正して頭を下げる)
イケスミ: おっと、手の先十センチ、おっさんがもどしたヘド!
あすか: ワッ!
イケスミ: ……気をつけな。
あすか: は、はい。
イケスミ: ところで、あすか……
あすか: あたしのこと知ってるの?
イケスミ: 神さまだよ、あたし。もうこの池に三百年も住んでる。
あすか: 三百年……神さま?
イケスミ: トヨアシハライケスミノミコトと申す……オッホン。
あすか: ト、トヨアシ……
イケスミ: イケスミ……イケスミさんでいいよ。ところであすか、落し物したでしょ?
あすか: え、はい……
イケスミ: 成績票。
あすか: 拾ってくれたんですか?
イケスミ: はい、あすかが落とした成績票(二つの成績票を出す)
あすか: それ……?
イケスミ: 金の成績票と、紙の成績票と、どっちがあすかさんのかしらぁ?
あすか: (ひとり言)これって、昔話にあったよね。正直に言ったら金の方までもらえるって……フフフ、やっぱ猫の恩返しか!?
イケスミ: さあ、どっち。どっちがあすかの成績票?
あすか: はい、もちろん紙の方です! そのコーヒーのしみがついているのが何よりの証拠。紙の方があたしの成績票です。
イケスミ: はいどうぞ。まちがいないわね。
あすか: ……英数国が欠点、物理と化学がおなさけの四十点。まちがいありません、あたしの成績票です!
イケスミ: それはよかった。あなたって、正直者ね。
あすか: いえ、それほどでも(正直に照れる)
イケスミ: 「正直者の頭(こうべ)に神宿る」って、昔からいうのよ。
あすか: 神戸? ひょっとして神さま阪神ファン? 阪神の神って神さまの神だもんね。どうしよう、わたしって巨人ファンだよ……
イケスミ: バカ、頭のことだわよ。神さまは正直者が大好きって意味。
あすか: それって、正直者をおたすけになるってことなんですよね!?
イケスミ: まあね……
あすか: ウフフ……やっぱ恩返し!
イケスミ: ん?
あすか: いえ、なんでも……
イケスミ: というわけで、その正直さを愛(め)で、特別にこの金の成績票もさずけましょう。
あすか: やったあ!……いえ、こっちのことです。ありがとうございます。
イケスミ: それでは、これからも、神をあがめ、自然をいつくしみ正直に生きますように。
あすか: はは!(ひれふす)
イケスミ: ヌフフ……
あすか: ?
イケスミ: いえ、なんでも……めでたしめでたし……
あすか: めでたしめでたし……

 池の中(客席)に消える神さま。ひれふすあすか。 

ジャンル:
小説
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