大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・オメガとシグマ・78『受賞の次の朝』

2017-05-15 12:47:42 | 小説
高校ライトノベル・オメガとシグマ・78
菊乃のターム『受賞の次の朝』




 好きなものを見ると人間の瞳孔は大きく開く、特に女の子ね。

 赤ちゃんとか、恋人とか、大好きなスゥィーツとか見たら、女の子の瞳は、もうマンホールの穴かってくらいね。
「わー、すごいです、スゴイです、凄いです」
 いろんなニュアンスでSUGOIDESUを連発している増田さんが、まさにそうだ。
 遠くからしか見てないけど、ノリスケを見る時もこういう目をしてるんだろうなあと思う。
 ついこないだまでは、引きこもり寸前だった地味子の増田さんの両眼は緩みっぱなし。
「で、この太一というお兄さんは実在するんですか!?」
「え、あ、まあね」
 
 覚悟はしていたが、あの腐れ童貞が実の兄貴だと言うことを認めなくてはならない。

 同じ神楽坂高校に通っていても、腐れ童貞はヘラヘラした顔の特徴からオメガで通っていて、本名の妻鹿で呼ばれることはほとんどない。
 もし聞かれたら――遠い親類なの――で通そうと思っていた。でも、そんな心配はいらなくって、いまだに真実を知っているのは学校では、ほんの僅かだ。

 今朝、増田さんは最初の信号の所で待ち伏せしていた。

「学校では、あんまりキャーキャー言えませんから」
 それで、校門を潜るまで、瞳孔開きっぱなしのキラキラ目であたしを眩しがってくれている。
 増田さんが、これなんだから、学校には行ったらさぞかしと覚悟はしていた。

 でも、意外に平穏だった。
 なぜか昇降口の所に担任の田中先生が居て「新人賞おめでとう」と小さな声で言ってくれただけ。

 教室に入るといつも通り、月曜日の特有の倦怠感。
 中には運動部とかに入ってやる気満々という人も居るんだけど、そういうポジティブな空気は、なるべく出さないようにしているところがある。増田さんが「学校じゃキャーキャー言えませんから」と言った、あの空気。
 何人かは、突撃新人賞を知っている人が居て、キャーキャーは言わないけど瞳がオッキクなっている子がいる。
 騒がれるのは苦手だから、ま、ありがたい空気だ。

「なあ、オメガが兄貴だって言っちゃだめか?」

 渡り廊下で会ったノリスケが聞いてくる。
「だめ! 自然に知れるのはともかく、バラされるのは絶対だめ!」
「いや、一般ピープルじゃなくて、増田さんにさ。彼女、授賞式のトーク聞いててさ、がぜん腐れ童貞クンに興味を持っちまってさ」
「んーーーーやっぱだめ。まだ作品は発表されてないんだしさ、最低、やっぱ読んでからだよ」
「そっか、じゃ」
 そう言ってやり過ごしてから、再び声を掛けてきた。
「まだ用?」
「あんまりひどく書いてないよな?」
 親友だからの心配なんだろうけど、カチンと来た。
 でも、少し瞳孔が大きくなっていたので「出たら読んで」とだけ言って許してやった。

 放課後、昇降口で下足に履き替えようとしたら、柱の陰から声を掛けられた。

「突撃新人賞おめでとう、妻鹿菊乃さん」
 校内で初めての正面切ってのおめでとうだったので、正直びっくりした。
「わたし二年二組の和田友子、うちの学校から突撃新人賞が出るなんてすごい、それに、こんなに可愛い一年生なんだもの、ほんとにすごいわ」
「あ、ども、ありがとうございます」
 二年生なので、いちおう敬語でお礼を言う。
「ね、わたしとあなたで、学校にラノベ部つくらない?」
 
 にこやかに言う和田さんだけども、瞳孔は開いていない……どころかめちゃくちゃ小さくなっていたのよね。
 
 
※ 主な登場人物

オメガ  妻鹿雄一  高校三年生 その風貌と苗字からω(オメガ)と呼ばれる

シグマ  百地美子  高校二年生 その風貌からΣ(シグマ)と呼ばれる みこが正しい読み方だがよしことも呼ばれる

ノリスケ 鈴木典亮  高校三年生 オメガの保育所時代からの友だち

菊乃   妻鹿菊乃  高校一年生 オメガのツンデレ妹

松乃   杉谷松乃  大学一年生 東京の大学に進学が決まったのでオメガの家に下宿 松ネエと呼んでいる

風信子  宮家風信子 高校三年生 神社の娘で茶道部部長 
ジャンル:
小説
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