大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・時かける少女・45『女子高生怪盗ミナコ・11』

2017-05-06 06:13:40 | 時かける少女
時かける少女・45 
『女子高生怪盗ミナコ・11』 
  

 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になってしまった……今度は平成13年のA刑務所から始まり、半年の時間が流れ、ミナコは、美少女怪盗ミナミと出会った。

 
 ワールドトレードセンタービルは、あっけなく崩れてしまった……。

「無慈悲なことをしやがるぜ……」
 謙三爺ちゃんは、朝から何度目かのシーンを見て、ため息をついた。
「爺ちゃん、もう三度目だよ……」
「何度でも見て心に刻んでおくんだ。泥棒稼業で、やっちゃなんねえのは、困っている人の物を取ること。それ以上に、人の命を取ることだ」

 この時、市民派のスポークスマンとニュースャスターが余計なことを言った。

「このテロのやり方の源流には、戦時中のカミカゼ特攻隊の流れがあるような気が致します……」
 その横で、飾り物の女子アナと、どこかの大学教授が、深刻そうに相づちをうった。
「なんだと、下郎ども、許せねえ……」
 爺ちゃんは、酒を飲み干したあとの、茶碗を片手で握りつぶした。
「爺ちゃん……」
「脅かしたな、ミナコ。ちょっくら、一仕事してくらあ……」

 スッとお爺ちゃんが居なくなった。かわりに気配がしたかと思うと、ミナミがフェリペの制服で、茶の間の入り口に立っていた。
「謙三爺お爺様は?」
「あ、たった今、仕事に行くって……」
「さすがね、気配も感じさせずに、お行きになったのね……座布団の温もりさえ残してらっしゃらないわ……この、お湯のみのカケラは?」
「爺ちゃんが、握りつぶしたの。初めて見た、あんなお爺ちゃん」
「さすが、握りつぶしても、血の跡もないわ」
「ミナミ、どうかした?」
 ミナコがお茶を入れようとすると、寸前に爺ちゃんの剣菱を湯飲みに注ぎ、一気に飲み干した。
「あんた、まだ未成年でしょ?」
「さ、どうだか……でも、謙三のお爺様よりは若輩ものです」

 それから、ミナミは語った。学校の教師が、うわっつらに説明をし、アメリカがテロを受ける背景を、よその国の天気予報の説明のようにしたこと。日本人も何十人も犠牲になったというのに。そして、驚くべき事を言った。

「アメリカのユニオンも、このテロには気づいて、あらかじめ犯人たちに接触していたんですけど、改心したと報告してきていました。たった一人、ベテランのメンバーが犯人を尾行して、同じ飛行機に乗り、これは墜落させて、失敗させました。自分と同乗者の命と引き替えに……」
「ミナミ……」
 気が付くと、ミナコも、湯飲みで、剣菱を干していた。
「人の心を取るというのは、難しいものなのですね……」
「こないだの拉致未遂は、どうやら効果ががあったじゃない」
「まだまだ、未熟です」

 そのとき、点けっぱなしになっていたテレビの画面に異変が起こった。

 一瞬の間に眼鏡のキャスターと、女性アナウンサー、大学教授のコメンテーターの三人が下着姿になってしまい。女性アナウンサーの悲鳴で、画面は切り替わった。この間10秒ほどは、慌てふためく三人が、逃げ隠れする姿が映された。10秒後、草色の旧海軍の軍服を着た温厚そうな老人が、気楽にソファーに座った姿で現れた。

「失礼いたしました。ここからは、最後の海軍大臣を務めましたわたくし、米内光政が、お話いたします。キャスター氏は、カミカゼ特別攻撃と言っておられましたが、正確にはシンプウ特別攻撃と申します。カミカゼとは米軍が付けた名称であり、まず、これを訂正いたします。そして、シンプウ特別攻撃と今般のテロを同等に述べられたことも訂正いたします。シンプウ特別攻撃は無謀な攻撃ではありましたが、テロではありません。攻撃目標はあくまで、敵の軍艦であり爆撃機であり、時に戦闘機などであり、あくまでも武装した敵に、それこそ身をもって攻撃したのであって、民間人や民間施設を狙ったことは、一度もなく、まして民間人を巻き添えにしたことなど、一度もありません。今般のテロは許し難いものではありますが、これにひっかけて日本をおとしめる言説をいたすのは、いかがと思い、しゃしゃり出てきた次第であります。それでは、視聴者のみなさん。これにて失礼いたします。米内光政がお送り致しました」
 カメラは、ロングになり、マントルピースを背景ににこやかに微笑む米内の全身をカメラ前の花と重ねてフェードアウトしていった。

「米内さんて、とっくに亡くなった方ですよね……」
「うん、昭和23年……」

 呆然としていると、爺ちゃんが戻ってきた。
「あ、今の、ひょっとしてお爺ちゃん!?」
「三人剥いてやったのはオレだが、米内海軍大臣は別人だよ」
「あ、藤三のお爺ちゃん!?」
「さあてね……あ、おめえら、オレの剣菱呑んじまいやがったな。池之宮のお嬢も一人前だなあ」
「あ、あたくしのこと、ご存じなんですか?」
「最初は分かんなかったけどよ。ミナコから聞いた話と、仲間内のうわさでよ……池内様も三代目なんだねえ」
「謙三お爺様のことも、父や祖父から、子守歌のように聞かされたものです。光栄です。お会いできて!」

 ミナコが見たこともないハニカミを見せる爺ちゃんであった……。

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