大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル🍑MOMOTO🍑デブだって彼女が欲しい!・53『そこじゃないとこ』

2017-04-24 06:39:18 | ノベル
🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!・53
『そこじゃないとこ』



 普通エキストラは、下請けのプロダクションが引き受ける。

 ただ、急に特殊なエキストラが欲しい時は間に合わないで、助監督がツテやコネを使って個人技で集めてくる。
 オレたち15人のデブがそうだ。
 バスタオルをまとった桜子たちは、ごく当たり前の女子学生エキストラとして、きちんと某プロダクションから派遣されて来ている。だから、きちんとマネージャが付いている。

 そのマネージャが、小出助監督に噛みついている。

「だまし討ちみたいな撮影に抗議します! 入浴はあくまでオフの時間です。それをドッキリカメラみたいな仕掛けで撮影して! 許せないわよ!」
「それはお詫びします。ここじゃなんですから、応接室借りてますんで、そちらの方へ。女の子たち風邪ひかないように、スタッフよろしく……」
 小出助監督と女性マネージャが建物に消えて行くと、スタッフたちが厚めのパーカーを着せながら女の子たちを誘導し始めた。

「ワクワクするわね!」

 女の子の群から抜け出て、桜子が寄って来た。
「か、風邪ひくぞ」
「大丈夫、しっかり浸かって上がったところだったから」
「え、えと、どうして、ここにいるんだ?」
「桃斗のメール見て、あたしもエキストラのアルバイト。エントリーしたら、ドンピシャここだった」
 桜子は、入浴中に15人のデブが覗きの果てに、浴室の壁をぶち破って乱入してきたことを楽しんでいるようだった。
「やるもんよね。バスが遅れたんで、撮影は明日から。で、油断させて、こんなの撮るんだもんね」
 ちょっと上気して、桜子は勢いを付けて腕を組む。パーカーがパフっと鳴って空気が漏れた。湯上りの香りがホワッとオレの鼻を刺激する。撮影現場という非日常性が大胆にさせているんだろうか、いつもの桜子では考えられないことだ。そんな桜子に、ちょっと意地悪を言ってみたくなる。
「桜子、ホクロがあったのな」
「ホクロ……首筋?」
 そこは以前から知っている。
「そこじゃないとこ」
 それで分かったんだろう、桜子の頬がカッと赤くなった。

 寝床の会議室に戻ると、親父からメールが入っていた。

――お母さんの居所を教えてくれ――
 アっと思った。お袋は若作りしてバイトに行ってしまったが、オレはバイト先を知らない。知らないことに疑問も感じていなかった。
――泊りがけでアルバイトに行くって言ってた。バイト先はわからない。ごめん――
 そう返事して考えた。前の親父と別れてからは、スーパーとかホカ弁のパートに行っていたのは知っているが、泊りがけで行くようなもんじゃないだろ。正直に分からないと答えるしかなかった。
 
 寝床に入ると、また桃が現れた。

「大丈夫、ほかの人たちはしっかり眠ってもらっているから」
 少し怒ったような声で、文句を言いそうなオレの機先を制した。どうも桃は反則技を使ったようで、同室のデブたちは静かな寝息を立てて熟睡しているようだった。
「しかたないなあ」
 いつものように、ヒッツキ虫の桃を抱っこした。ちょっと子どもじみて感じたが、すぐに眠りに落ちてしまった……。
ジャンル:
小説
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