大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・かぐや姫物語・3Преступление и наказание

2017-07-15 17:55:40 | 小説5
かぐや姫物語・3
Преступление и наказание・罪と罰



「えー、そんなの無理だよ!」

 美希の部屋で、姫子が叫んだ。
 喫茶ムーンライトは、3時からアイドルタイムで、お客さんはいない。お客さんがいたら、いくら幼なじみのお隣の店でも、こんな声は出さない。

 豆腐屋の秀哉が「そうだ、こんな手がある!」などと言うので、美希の部屋で相談をぶつことにしたのだ。
「いけるかもよ。家具屋の姫子が、アイドルになったらまさに家具屋姫じゃん!」
「あのね、その呼ばれ方、あたし一番やなの!」
「だから、逆手にとるんだよ。ウケるって、絶対!」
「それに、あたしアイドルになれるほど可愛くないもん」
「それは認める!」
 美希と秀哉の声がそろった。階下で美希のお母さんまで笑っている。
「どうぞ、試作品の試食を兼ねて……」
 美希のお母さんが、フライドポテトの山盛りと、アイスコーヒーを持って現れた。
「これ、お店で出すの?」
「うん、夜は会社帰りをあてこんで、安いディナーやってるけど、アイドルタイムに学生さん相手にやってみようかって。保温式のワゴン買ってお店の前で……どうかな?」
 確かに、団地の横に短大と専門学校があるので、見込みがないわけではない。ただ、今の学生はスタバやケンタ、マックへ行く傾向が高く、なかなか店の中までは入ってこない。そこで、店の前でフライドポテトを売ってみようという腹なのである。
「でも、フライドポテトだけじゃ弱いんじゃない?」
 娘のくせに、美希はズケズケと言う。
「うん、出入りの牛乳屋さんから、コーヒー牛乳の200ミリパックを仕入れてね、ポテトと合わせて200円。どうかな?」
「それ、儲け出るの、おばちゃん?」
「コーヒー牛乳は10円ぐらいしか儲けにならないけど、ポテトといっしょなら、100円にはなる。むろん減価償却はべつだけど……一日100セットで一万。月に20万ぐらいの利益になるかな」

 大人は、やっぱ考えているんだと、姫子は思った。で、秀哉の提案である。「AKRを受けろ」というのである。「可愛くないもん」の姫子の答は正しい。口がきける程度の男の知り合いはいるけど、友だちと呼べるのは、この幼なじみの秀哉ぐらいしかいない。まして「モテタ!」と実感できるようなことは、この17年の人生で一度もない。家具屋の姫子は、どちらかというとヤンチャクレで通っていた。スタイル、ルックスは、本人に「良く見せよう」という気持ちがカケラももないので、本人もまわりの人間も、姫子を「可愛い」のカテゴリーには入れてなかった。

「可愛くない方がいいんだよ」

 誉め言葉とは、思えない言葉で秀哉は説得にかかった。
「AKBの篠田真里子は『狙いすぎてる』って、理由でオーディション落とされたんだぜ。だから1・5期生。可愛いってのは平凡とほとんど同じ」
「でも……」
「そうだ!」

 美希の思いつきで、三人は三軒隣りの化粧品店コスメへ向かった。

「オバチャン」
「いいわよ」
 この二言の遣り取りで、姫子は生まれて初めてのメイクをするハメになってしまった。
「う~ん」
「可愛くはないけど、個性的ね……」
「どれどれ……」
 ちょうど、美容学校から帰ってきた美登里さんが、姫子のポニーテールをサイドに回し、シュシュをつけてみた。
「うん、断然個性的だ!」

 みんなの意見が一致した。そしてシャメをとられ、コスメのパソコンでAKRのオーディションの申込みをダウンロード、シャメを添付。キャッチコピーは『家具屋姫』であった。

 エンターキーを押して、おしまい。

 一瞬宇宙飛行士の姿が頭をよぎった……。

 つづく

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小説
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