大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・8・あの時のそれに似ていた……

2017-05-18 06:06:46 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
  あの時のそれに似ていた……
                   


「なんべんもやるもんやないで」

 セーヤンの言葉には頷かざるえなかった。
 高校生の水準をはるかに超えたCGの技術で、浄化槽の上にホログラムのバーチャル演劇部を出した。
 遠目には10人の演劇部員が発声練習をやっているように見えたはずだ。
「そやけど、あんな中庭の奥ではなあ……もっかい広いとこででけへんか?」
「今も言うたやろ、ホログラムは明るいとこでは見えへん。近くで見られたら、すぐにバレてしまう」
「そやけどなあ……」

 簡易型のホログラムなので、ノーマルに比べれば撤収は簡単なはずだったが、さすがに二人では大変だ。

「たとえ完璧なホログラムを人目につくようにやっても、演劇部そのものに魅力が無いから人は集まらんと思うで」
 最後にパソコンの電源を落とすと、独り言のようにセーヤンがトドメを刺した。
「そやけど、車いすの子が見てくれてたで」
「冷めてたで。付き添いのオネエサンは熱心やったみたいやけど……たとえ入ってくれても、車いすの子が演劇部やれるか?」
「そやけどなあ……」
 啓介はベンチに腰掛けたままゴニョゴニョ言う。
「だいたいが、啓介自身が真っ当に演劇部やろいう気持ちがないやろ。おまえは、ただ演劇部の部室手放したないだけやろが」
 図星ではあるが、素直に頷く啓介ではない。
「それは違うぞ」
「どないちゃうねん?」
「そら100%の気持ちがあるとは言わへんけどなあ、オレの中にも何パーセントかは気持ちがあるねん。そこを汲んでもらわんと」
「オレはなあ、部室棟を残したいねん。オレら情報部の活動拠点でもあるさかいなあ」
「部室棟が無くなることはないやろ。今でも演劇部ほり出して、別のクラブ入れようとしてるんやさかいなあ」
「それは考えが浅い」
「なんでや?」
「学校は部室棟そのものを壊したいんや。部室棟は伝統的に文化部しか入ってない。そやけど文化部はどこも低落気味。元気のええ軽音とかダンス部は、もとから部室棟には入ってへんしな。ま、オレらの情報部みたいに元気なのんもあるけどな、それはそれで鬱陶しい存在や。ま、それは置いといて、学校は部活の振興には力を尽くしたけどあかんかった。あかんから部室棟そのものを撤去する。そういうシナリオができてると思うで」
「そんな深慮遠謀があるのんか?」
「部室棟は維持費だけでも年間数百万円かかってる。まあ雰囲気の有る建物やけど、いつまでも雰囲気だけでは残されへんさかいなあ」
「せやけどな、一寸の虫にも五分の魂や、オレかて、一発やったろかいう気持ちはあるねんぞ!」
 啓介は腕をまくって力こぶを作って見せた。
「おお、啓介て意外にマッチョやねんなあ!」

 セーヤンは意外なほど素直に驚いた。その驚きが恥ずかしく、啓介は封印していた投球動作をしてしまった。

「なんや、啓介ほんまもんのピッチャーみたいやんけ」

「あ、ジェスチャージェスチャー、オレって演劇部だからよ!」

 見上げた夕焼けは、あの時のそれに似ていた……。
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