大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲・ステルスドラゴンとグリムの森・3

2017-06-16 06:25:50 | 戯曲
連載戯曲
ステルスドラゴンとグリムの森・3



 時   ある日ある時
 所   グリムの森とお城
 人物  赤ずきん
 白雪姫
 王子(アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン)
 家来(ヨンチョ・パンサ)


 いつまでも手を振る白雪。暗転。
 鳥の声がして朝になる。アニマ王子の洗面所。起きぬけらしく、ガウンの下はトランクスとシャツ姿で洗面台にあらわれる。
 ジャブジャブと顔を洗った後、家来?が差し出したタオルで顔を拭く。


王子: ありがとう……ん、おまえ!?
赤ずきん: シー、お騒ぎになるとためになりません。
王子: なんだおまえ?
赤ずきん: 赤ずきんと申します。近ごろ森の中での殿下のおふるまい、ぜーんぶ知ってます。
王子: え……?
赤ずきん: 毎朝毎朝、未練たらしく白雪姫のもとに通い、唇一センチのところまで顔を寄せながら、
 首を横に振るだけで、なーんにもしないで帰ってくること。
王子: おまえ……。
赤ずきん: はい、今一度申し上げます。グリムの赤ずきんでございます。アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン王子さま……!

 そこへ家来のヨンチョが、タオルを持ってあらわれる

ヨンチョ: 申しわけありません、不寝番のルドルフが居眠っておりましたので、
 たたき起こそうとしたのですが、いっかな、こいつ起きません。
 こりゃあきっとゆうべ一晩宿直の者同志でオイチョカブでもしておったのではないかと、叱りつけておりまして……あ、御洗顔は。
王子: ああ、もう済んだ。タオルはこの者から……
ヨンチョ: おお、赤ずくめの怪しき奴! 賊か!? 郵便ポストの化け物か!? サンタクロースの孫か!? 
 それとも 王子様のお命をねらう赤き暗殺者か!? いずれにしても生かしてはおけぬ。
 それへ直れ、十重二十重にいましめて、そっこく……(刀の柄に手をかける)
王子: まてまて、この者は今日よりわたしの近習をつとめる、赤ずきんだ。
ヨンチョ: あ、さようで……。
赤ずきん: よろしく赤ずきんよ。あなたは?
ヨンチョ: 近習頭のヨンチョ・パンサである。
王子: 着替えがしたい。
ヨンチョ: はい、ただちにお召しものを!
王子: ゆっくりでよい。しばらくここで小鳥のさえずりなど聞いていたいのでな、ゆるりと、よいな。
ヨンチョ: ゆるりと、アイアイサー!(退場)
王子: ……これでいいか?
赤ずきん: さーすが。
王子: 赤ずきん、どうしておまえは……。
赤ずきん: それはね……。
王子: わたしは、これでも一国の王子、死んだ兄にはかなわねまでも、武芸一般人より優れておるつもりだ。
 白雪姫に会う時には特に気を配り、家来共も遠ざけておる。
 あたりには七人の小人達の忍んだ気配、それ以外に人の気配を感じたことはないぞ。
 ましておまえのような赤ずくめで隙だらけ、郵便ポストのように気配だらけの者など……。
赤ずきん: フフフ……顔を洗う時気づかなかったよ。
王子: あれは、いつもそこのヨンチョが……。
赤ずきん: わたしとヨンチョさん、ずいぶん気配が違うよ。
王子: ……まだ起きぬけなんだヨ!
赤ずきん: 言葉が過ぎたら許してね。わたし……生きて泣いている白雪さんに会ったの。
王子: なに……白雪姫が生き返ったと言うのか!?(あまりの驚きに、赤ずきんを部屋の隅まで追いつめる)
 いつ!? どこで!? どんなふうに!? どうしていらっしゃる、あの姫は!?
赤ずきん: 夜の間だけ。知らなかったでしょ……。
 日が昇る頃には、あのガラスの棺にもどって、また夕暮れまで死んでいるの。
 そして、話を聞いたんです。毎朝のあなたの思わせぶりな訪れを……。
 一センチにまで唇を寄せて……そして溜息をつき、せつなそうに首を振り、帰ってしまわれる。
 この仕打ちのため、白雪さんの心は悲しみとせつなさに加え、ゆうべは憎しみの芽さえ宿していたわ。
王子: 仕打ちとは心外!
赤ずきん: 心外はこっちよ、あのまま放っておいたら、いずれ人喰いの化物にでもなってしまうわ。
王子: わたしにも人に言えぬ葛藤があるのだ。
 しかし、今夜にでも森に出向き、生きているあの人に話をしよう、このまま放っておくわけにもいくまい。
赤ずきん: それはやめてください!
王子: どうしてだ!? 夜とは申せ、愛している者が生きているというのに。
 それに、わたしに会えぬ苦しみゆえに悶え、憎しみの芽さえ育てはじめているというではないか!
赤ずきん: だめなんです! 夜の白雪さんは昼間の白雪さんではありません。
 彼女の暗い内面が彼女の姿をも支配し、神もそれを憐れんでか、森に結界を張り、白雪さんが森から出られぬようにしておられます。
 おそらく王子さまが入ろうとしても、その結界が遮るはずです。
王子: しかし、おまえは……。
赤ずきん: わたしは赤ずきん、もとから、あの森とは縁のあるグリムのオリジナルキャラクターです。

ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 高校ライトノベル・JUN STOR... | トップ | 高校ライトノベル・メガ盛り... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。