大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・あたしのあした・32『平泳ぎのフォーム』

2016-10-13 10:29:10 | 小説
高校ライトノベル
あたしのあした・32
『平泳ぎのフォーム』
      


 皮肉なことに早乙女女学院は飯館女子に惜敗してしまった。

 だから、あくる日の本選に早乙女女学院は出場できなかった。
 あたしたちは、はるばる滋賀県までやってきて、インターチェンジのテレビで予選の中継を観ただけで終わった。
「これなら学校の視聴覚室で観てるのとかわりないよ!」
 ぼやくことしきりだったが、早乙女の人たちに「ありがとうございました!」と揃ってお礼を言われると、十三人の補講女子たちはウルっときてしまい。やっぱ来た甲斐はあったとしみじみと感じた。

「人の為ならがんばれるのになあ」

 二十五メートルプールの真ん中で挫折して足を着いたベッキーがぼやいた。
 続いていたミャー、ノンコ、キララの三人も挫折する。
「こら、真面目に泳がんか!」
 プールサイドで水野先生が怒鳴る。室内プールとはいえ、メガホンも持たずに通る声にには脱帽だけど、もう怒られ慣れているので、ヤッコラセ~という感じでしか再開できない。
「チンタラやってんじゃねー!」
「「「「は~~~~~い」」」」
 かったる~い返事に、泳ぎ終わってプールサイドでヘバッテいるあたしたちは思わずクスクスと笑ってしまう。
「コラー!! 別役!!」
 再び足を着いたベッキーに雷が落ちる。

 キャ!

 プールの向こう側で悲鳴があがった。
 まっとうに練習をしていた早乙女の水泳部の子たちがビックリしてしまった。
 早乙女女学院には、水野先生のような大声の先生はいないのだろう。
「お前らはなー、フォームがなってないんだよ。体力がないこともあるけど、フォームだ! 別役、こっち来い!」
 ベッキーは、小さなため息一つして前に出てプールサイドで腹這いになった。
「いいか、平泳ぎは足のキックが大事なんだ、お前らの足では推進力にならない。いいか、こうやって……」
 水野先生はベッキーの足を掴んで、平泳ぎのキックの形に動かした。たしかに先生が動かすと速く泳げているように見える。
「ほれ、自分で動かしてみろ」
 数回繰り返した後、先生は手を放した。ベッキーはヤッコラセと足を動かす。
「ちがうだろ、蹴るんだよ。こことここに神経集中!」
 ベッキーは太ももとお尻を叩かれる。ペシペシといい音がして心なしかフォームが良くなる。
「さ、今度は水の中でやるぞ。プールの縁に上半身俯せで腹から下だけ水に漬けろ」
 ノロノロと言われた通りにする。
「なんか、陸に上がりかけのムツゴロウみたいだね」
 ネッチが言うとみんなアハハと笑う。
「関根、余計なこと言うな」
 ネッチはペシリとお尻を叩かれる。いい音がしたので、みんなアハハと笑ってしまう。
 十五分ほどかけてみんなのフォームが直される。それから泳いでみると、半分ほどが上達……したような気がした。

 今日の水野先生は熱心だ。お母さんのお葬式を出したことで悟った……という噂があった。

 あたしは知っている。早乙女のダンス部の子たちが、あたしたちに助けられたことをSNSにアップしたのを、先生はこっそりと観ていた。
 で、あたしたちのことを少し見直したんだと思う。

 うちはパッとしない学校だけど、少しは見どころがあるんだ、少しはね。
 
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