大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・43『第九章・3』

2016-10-29 06:14:22 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語 初稿版・43   


『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第九章 竜頭蛇尾、そしてクリスマスへ・3』


 で、ここらへんまでが、竜頭蛇尾の竜の部分。

 考えてもみて、たった三人の演劇部。それもついこないだまでは、三十人に近い威容を誇っていた乃木坂学院高等学校演劇部。発声練習やったって迫力が違う。グラウンドで声出してると、ついこないだまでの勢いがないもんだから、他のクラブが拍子抜けしたような目で見てんのよね。最初はアカラサマに「あれー……」って感じだったけど、三日もたつと雀が鳴いているほどの関心も示さない。
 わたし達は、もとの倉庫が恋しくて、ついその更地で発声練習。ここって、野球部の練習場所の対角線方向、ネットを越した南側にはテニス部のコート。両方のこぼれ球が転がってくる。
「おーい、ボール投げてくれよ!」
 と、野球部。
「ねえ、ごめん、ボール投げて!」
 と、テニス部。
 最初のうちこそ「いくわよ!」って感じで投げ返していたけど、十日もしたころ……。
「ねえ、そのボール拾ってくれる!?」
 と、テニス部……投げ返そうとしたら、こないだまで演劇部にいたA子。黙ってボ-ルを投げ返してやったら、怒ったような顔して受け取って、回れ右。
「なに、あれ……」
「態度ワル~……」
「部室戻って、本読みしよう」
 フテった夏鈴と里沙を連れて部室に戻る。

 わたしたちは、とりあえず部室にある昔の本を読み返していた。
「ねえ、そのボール拾って!」
「またぁ……違うよ、それ夏鈴のルリの台詞」
 里沙の三度目のチェック。
「あ、ごめん。じゃ、夏鈴」
「……」
 夏鈴が、うつむいて沈黙してしまった。
「どうかした……ね、夏鈴?」
 夏鈴の顔をのぞき込む。
「……この台詞、やだ」
 夏鈴がポツリと言った。
「あ、そか。この台詞、さっきのA子の言葉のまんまだもんね」
「じゃ、ルリわたし演るから、夏鈴は……」
「もう、こんなのがヤなの」
「夏鈴……」
 演劇部のロッカーにある本は、当然だけど昔の栄光の台本。つまり、先代の山阪先生とマリ先生の創作劇ばっかし。どの本も登場人物は十人以上。三人でやると一人が最低三役はやらなければならない……どうしても混乱してしまう。
 じゃあ、登場人物三人の本を読めばいいんだけど、これがなかなか無いのよね……。
 よその学校がやった本にそういうのが何本かあったけど、面白くないし……抵抗を感じるのよね。

 竜頭蛇尾の尾になりかけてきた……。

「ね、みんなで潤香先輩のお見舞いに行かない。明日で年内の部活もおしまいだしさ」
「そうね、あれ以来お見舞い行ってないもんね」
 里沙がのってきた。
「行く、行く、わたしも行くわよさ」
 夏鈴がくっついて話はできあがり。
 そしてささやかな作業に取りかかった……。

 三人のクラブって淋しいけど、ものを決めることや、行動することは早い。数少ない利点の一つ!


 一ヶ月ぶりの病院……なんだか、ここだけ時間が止まったみたい。
 いや、逆なのよね。この一カ月、あまりにもいろんなことが有りすぎた。泣いたり笑ったり、死にかけたり……忙しい一カ月だった。
 病室の前に立つ、一瞬ノックするのがためらわれた。ドアを通して人の気配が感じられる。
 おそらく付き添いのお姉さん。そして静かに自分の病気と闘っている潤香先輩。その静かだけど重い気配がわたしをたじろがせる。
「どうしたの……まどか?」
 花束を抱えた里沙がささやく。その横で、夏鈴がキョトンとしている。
「ううん、なんでも……いくよ」
 静かにノックした。
「はーい」
 ドアの向こうで声がした、やっぱりお姉さんのようだ。
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