大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・真夏ダイアリー・2『真夏のSOUNDS GOOD・2』

2017-06-18 06:30:31 | 小説3
真夏ダイアリー・2
『真夏のSOUNDS GOOD・2』
        


「まず、みんなの名前を呼びます。大きな声で、返事してください」

 で、百合ちゃん先生が名前を読み上げ、そこで問題が起こった。
「……中村玉男君」
「……はい」
 で、笑い声が上がった。中村玉男は音だけ聞くと中村玉緒で、あの面白いベテラン女優さんが連想される。それに、玉男の返事は、いかにもオネエの感じで、わたしも思わず吹き出した。これで、良く言えばホグレて、悪くいえば緩んでしまった。
「……ええ……春夏秋冬省吾(しゅんかしゅうとう しょうご)……」
 百合ちゃん先生が「君」を付ける前に、教室は再び笑いに包まれた。で、省吾が着席しながらだけど憮然として言った。
「春夏秋冬と書いて、ひととせと読みます。ひととせしょうごデス!」
「あ、ご、ごめんなさい。あ……ちゃんと読み仮名ふってある……」
 百合ちゃん先生は真っ赤になって、目が潤んで、パニック寸前。でも、気を取り直して、それからは、読み仮名を見て、正確に呼んでいった。そう……正確に。

「冬野真夏さん」

 大爆笑になった。わたしは玉男のときに吹き出しかけたのも忘れて、胸に怒りが湧いてきた。
「アハハ、このクラスって、おもしれえ名前のやつ多すぎ」
 その名も大杉ってヤサグレが笑い出した。
「冬の真夏って、矛盾でおもしれえ!」
「大杉君!」
 さすがに百合ちゃん先生がたしなめ、大杉はニヤニヤしながら黙り込んだ。
 それから、百合ちゃん先生は、レジメとにらめっこしながら、配布物を配り、明くる日のスケジュールを確認すると、わたしたちに起立礼をさせて、さっさと行ってしまった。

 そして問題が起こった。

 大杉とその取り巻きと思われる男子が二人寄ってニヤニヤ笑っては、わたしたち三人を見た。玉男も、省吾も無視して教室を出ようと、荷物をまとめていた。わたしは、二度目に大杉のにやけた目と合ったときに、ほとんどブチギレテしまった。
「ちょっと、あんた……人の名前で笑うんじゃないわよ」
「おお、怖ええ」
 大杉はおどけ、わたしは、なけなしの理性を失った。

「好きこのんで、こんな名前になったんじゃねえよ!」

 で、大杉は廊下にひっくり返って、鼻血を流していた……。
「ああ、冬野真夏!」
 省吾が叫んだ。
「遅いのよ、言ってくれるのが!」
 わたしは、入学早々停学を覚悟した。
「出来杉だか大杉だか、知らねえけど、今のはお前が悪い。チクったりするんじゃねえぞ!」
 省吾は大杉の胸ぐらを掴み、取り巻き二人にもガンを飛ばした。
「わ、分かったよ……」
 大杉たちは、見かけによらないあたしと腕のたちそうな省吾に恐れを成して行ってしまった。

「真夏って呼んでいいよな」
「うん」

「真夏は入学したててで尖んがっちまうんだろうけど、すぐに慣れるよ」
 自分も新入生なのに省吾は慣れた調子で言う。でも嫌味な感じはない。
「なあ中村君もさ」
「う、うん」
 これが、三人の付き合いの始めだった。

 二球目の投球に入ったところで声がかかった。

「君たち、テスト一週間前だぞ、いいかげんに帰れよ!」
 校長の轟。名前の通りよくとどろく声に、わたしは固まった。
「すみませーん、最後の一球でーす!」
 ハンパな投球姿勢から投げ出された球には球速は無かったけど、微妙な変化球になり、省吾は見事なフライを打ち上げた。わたしは、打ち上げた球の行方に面白い予感がして、スマホを構え連写した。
 帰り支度をしながら、三人でスマホの画面を確認。三人で大笑い。
「校長先生かわいそー!」
 玉男が、笑いをコラエながら言った。
 シャッターチャンスが良く、最後の一枚は巨大なボールが校長先生の頭の真上に落ちそうに映っている。

 ちょっとオモシロイ真夏のSOUNDS GOOD(なかなかいいね)になっちゃった!


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