大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・あたしのあした・71『急性過食症で検索してみる』

2017-02-13 12:47:07 | 小説
あたしのあした・71
『急性過食症で検索してみる』 




 食べても太らない……検索してみた。

 世間では羨ましがられているようで、どうやったら食べても太らないか、どの食品なら食べても太らないか、そんなことばかり出てくる。

 ウーーーーン

 一声唸って、急性過食症で検索してみる。


 過食症では山ほど出てくるが、頭に急性を付けると、該当するものは出てこない。
 過食は、最低でも一か月くらいやらなければ基礎体重に影響はしないようなのだ。
 でもね……検索しながらでも、あたしは食べている。クラッカーに奈良漬などを載せながら。

 で、閃いた。

 奈良漬といっしょにカマンベールチーズなどを載せてみたらメチャクチャおいしんじゃないだろーーか!?
 
 お財布を掴むと、半纏いちまい引っかけただけでコンビニを目指した。
 おりからの大寒波で、深々と粉雪が降っていたけども、雪⇒寒いに気が付いたのは、レジで精算してコンビニを出ようとしたとき。
 ガラスが真っ白に曇っているので、チョー寒いんだ! と思い至った時。

 でも、寒い⇒きっとオデンが美味しい!

 という思考になってしまい。回れ右してトングを掴むと、カウンター前の四角いお鍋の中の玉子、ジャガイモ、シラタキ、大根をカップに入れて、天晴オッサンの晩酌のノリになってしまう。

 次の角を曲がったら自分の家というところで気配を感じた。

 サクサクサクと、あたしの歩調に合わせて気配が着いてくる。
 普通の女の子なら、ビビって早足になるだろう。
 あたしも早足になっているんだけど、理由は早く帰ってオデンとカマンベールチーズと奈良漬を頂いてホッコリしたいということなんだ。

 フフフ……

 気配が笑ったような気がした。
 ムッときて、初めて振り返る。
 降りしきる雪の中に人影はない。

 これ、ふつう怖がるよね?

 でも怖いと言う気持ちが湧かないものだから、白い息を三つほど吐いて家を目指す。

「これなら、話しても大丈夫だな」

 はっきり聞こえて、あたしの前に人影が現れた。
「あ……」
「御無沙汰」
 その人は、ゆっくりと振り返った。
「風間さん……」

 そう、風間さんだった。
 去年の秋、駅のホームから電車に飛び込んだあたしを救けた議員秘書の風間寛一さんだ。もう遠い記憶になっているけれど、春風さやか議員の目を覚まさせるために、風間さんは、あたしに憑依って大活躍だった。その後、昏睡状態が続いて、秋の終わりごろに亡くなってからは、意識に昇ることも無かった。
「もう一度、恵子さんの力を借りたいんだ」
 風間さんは、とても長い話をしたようなんだけど、家まで歩いたのは電柱二本分ほどだ。

「大食いになった理由が分かりました……あたし、風間さんの分まで食べていたんですよね」

 風間さんは、ちょっと恥ずかしそうにしたけども、嬉しそうに微笑むと、降りしきる雪の中、静かに消えていった。
 声にしなくても分かるんだ、あたしは風間さんの願いを聞いてあげることにした。

 今夜は、オデンとカマンベールチーズと奈良漬がいっそう美味しくなりそうだ。
 
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