大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・36「最後の立ち入りを許可します」

2017-06-19 12:19:17 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)36
「最後の立ち入りを許可します」
                   



 部室棟の周りに足場が組まれた。

 本格的な解体修理作業が開始されるようだ。


「四時から五時まで最後の立ち入りを許可します」
 
 昨日の部長会議で、瀬戸内美晴が通知した。
 解体修理が決定した先週、一応の運び出しはやったのだが、なんせ築八十年、いろんなものが溜まっている。

「今回は、自分のところ以外の部室を見てもらいます。ちがった目で見れば、見えてくるものも変わってくると思うからです。不要なものは解体に伴い全て搬出されて廃棄されます。今回搬出したものはいったん中庭に出してください、先生や同窓会の方々にも見ていただいて、最終的に保存するモノを決定します」

「瀬戸内さん、賢い人ですねえ」
 お茶を入れながら千歳は感心した。
「そうか、この部屋は、これ以上は入れへんで」
「そうだろうけど、啓介はめんどくさいだけだろ?」
「俺は、グローバルクラブの再建に忙しいんです」
「なにい、そのクラブ?」
 先週入部したばかりのミリーには分からない、啓介は「しまった」という顔になり、須磨と千歳はクスクス笑っている。
「あとで教えてあげる。それより金目の物を見つけたら、必ずチェックね」
「お、売り飛ばして演劇部の資金に!?」
「ばか、演劇部のイメージアップよ。少しでも学校に貢献して置けば、さきざき風当たりも弱くなるでしょ」

 先月の部員定数問題では、生徒会の盲点を突いて、演劇部の存続を認めさせた須磨を単なるマキャベリストかと思っていたが、一目置く気持ちになった啓介だ。

 部室棟の中は解体寸前で、部室どころか、廊下もゴテゴテしている。
 邪魔になってはいけないので、千歳は中庭で待機しているつもりだった。

「いっしょに行こ」

 ミリーが車いすを押し、須磨が先導して部室棟の中に入った。
「さすがに二階はむりだなあ……」
「あたし、千歳といっしょするから、先輩は啓介と周ってください」
「サンキュ、じゃ、そういうことで」
 演劇部は二班に分かれて捜索に掛かった。

 ほとんどの部室は手つかずと言っていい状態だった。

 なんせ八十年以上ほったらかしの校舎で、部室棟になってからも半世紀が経過している。
 残している品々は、備品というよりはガラクタ……というよりはゴミの山だ。
 美晴が、最後にもう一度見ておこうと言ったのは、このまま取り壊したのでは学校の評判に傷がつくと思ったからかもしれない。

 千歳とミリーのコンビは三つめの音楽部の分室に踏み込んだ。
「あ、あれ、ピアノ?」
 車いすの視点の低さが幸いしたのか、ガラクタの下に覗いたピアノの脚に気づいた千歳。
「どれどれ……」
 ミリーがガラクタをかき分ける。
「よいやっさ!」
 乗っかっていたガラクタをカバーの布ごと引き落とす。

 すると、ホコリまみれのピアノが現れた。

 ピアノは、元々の脚は無くなって、ボディーだけだ。
 千歳が気づいたのは、脚の根元で、普通の目の高さでは気づかないように思えた。
「……これ、スタンウェイやんか!」
「え、スタンウェイ!?」
 ミリーも千歳もピアノをやっていたので、その値打ちが分かる。
 世界的な名器で、ものと状態によっては一千万円以上の値打ちがある。

「「す、すごい!」」

 二人が感動したのと同時に中庭でも歓声……いや、悲鳴が上がったのだだった!

 
 
ジャンル:
小説
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