大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・29『第七章・1』

2016-10-15 06:07:12 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・29   

 これは前出の『まどか 乃木坂学院演劇部物語』の初稿です。紛失していたもが出てきましたので再掲載しました。

『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第七章 涙を乾かすには優しすぎて……1』

「おーい」
 という声で目が覚めた。


 ボンヤリと白い服を着た人たちが目に浮かんできた……天使さんたちだ。
 十五歳のこの歳まで、わたしは、いい子でいた……自己評価だけど。だから、わたしは天国に来たんだ……そう思った。
 中央に、大天使ミカエルさま。両脇にきれいなオネエサンの天使がひかえていらっしゃる。
 でもいいのかな。うちって、たしか浄土宗か、浄土真宗……じゃ、これは阿弥陀さま?

 ドタっと音がして、阿弥陀さまの顔が、マリ先生のドアップの顔に入れ替わった。
「気がついた、まどか!?」
 ドアップが叫んだ。
「こまりますね。これから、いろいろ検査しなくちゃいけないんだから」
 阿弥陀さまが文句を言った。
「すみません」
 ドアップのマリ先生の顔が、視界から消えた。

 そして、ようやく気づいた。
――わたしってば、助かったんだ……。
 頭の中が、ジーンと痺れている。こういう時って、その混乱のあまり泣いちゃったりするんだろうなあ……ひどく客観的に見ている自分がいた。自分でも意外に冷静。
 これが精神的なマヒであることは、あとになって分かってきた。
 阿弥陀さんだと思ったのは、お医者さん。天使は、看護師のオネエサンだった。
 その向こうに、うれし涙の、お父さんとお母さん。さっきドアップになったマリ先生の顔があった。
――でも、どうして、わたし助かったんだろう……あの燃えさかる倉庫の中から……?

「もう、その袋、放してもいいんじゃないかな」
 阿弥陀……お医者さんが言った。
 わたしってば、衣装の入った袋を握りっぱなしだった。そのときは……素直に……は手放せなかった。
 手を開こうとしても、袋の握りのとこを持った手は開かない。ナース(看護師って言葉は、このとき馴染まなかった)のオネエサンが、その見かけより強い力で、やっと袋を放すことができた。
 それからCTやら、なんやらいろいろ検査があった。
「大丈夫、どこも怪我はしていないよ」
 お医者さんが笑顔で言った。
――よかった。
「でも、インフルエンザに罹っている。注射一本うっとこうね」
 さっきのナースのオネエサンが注射器を、お医者さんに渡した。
「ちょっとチクってするよ……」
 チクっとではなかった。グサッ!……ジワジワ~と痛みが走る。
 お医者さんの向こうでニコニコしているナースのオネエサンが、白い小悪魔に見えた。

 やっと解放されて、ロビーに出た。みんな待っていてくれた。
「お母さん」と、言ったつもりだったんだけど。白い小悪魔にマスクをさせられていたので、「オファファン」にしかならなかった。
「こいつが、おめえを助けてくれたんだぜ。さすが大久保彦左衛門の十八代目だ!」
 お父さんが、そいつを押し出した。
「ども、無事でなによりだった……」
 ヤツは……忠(ただ)クンは、煤と泥にまみれた制服姿で、ポツンと言った。
「ども、ありがとう」
 マスクをつまんで、わたしもポツンと応えた。

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