大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ホリーウォー・14[ヒナタとキミの潜入記・2]

2017-11-20 06:53:21 | 小説3
ーウォー・14
[ヒナタとキミの潜入記・2]



「水餃子、めっちゃおいしかったね」

 普通の大阪弁で、普通の音域、音の大きさで言った。座席からレジへ向かう僅かの間にである。

 厨房にいた、陳水平は日本語は分からないが、水餃子という言葉と誉めてくれていることぐらいは分かった。
 ヒナタとキミは、完全なミーハーな日本人観光客を装っている。だから、このささやかな褒め言葉は増幅されて陳の耳に自然に入ってきた。

 そして、陳の思念が一度に解放されてキミのセンサーに飛び込んできた。

「あの陳水平のオッチャン、天壇の幹部食堂から回されてきたんやわ。ほんで、理由は……というつまらん理由。表面は料理の腕が悪いいう調理師のプライドに関わることやけどね」
「すごいね、キミちゃん。水餃子食べただけで、そこまで分かるの!?」
「大阪の中小企業なめたらあきません。食道楽の大阪、食べ物から情報取れる能力は世界一やで」
「そうなんだ」
「もっとも最初に分かったんは、水餃子作ったオッチャンと、おっちゃんが、なにか不満もってるいうことだけやったけど。レジ前のさりげない誉め言葉が、陳のオッチャンの鍵を開けた。ヒナタちゃんの絶妙な相槌も聞いたけどな」
「じゃ、とりあえず天壇に行ってみるか」

 天安門広場前で、二人は当面の行動を決めた。むろん会話は暗号化している。高性能カメラと盗聴機で、二人の会話を拾っても、餃子についての話にしか聞こえていないはずであある。

 天壇についたころには、二人は陳明花と陳開花という姉妹に化けていた。

 二人は、陳水平の娘ということになっている。
「父も、あれから考え直し、わたしたちに職場を与えてくださるという料理長さまのお言葉を素直にお受けすることにいたしましたの」
 見事な広州訛で、ヒナタは料理長に申し訳なさそうに言った。
「水平も頑固すぎるんだ。広州でくすぶっているよりは、この漢の天壇に来た方がずっと君たちのためになる。それを邪推して辞めていくんだから、どうしようもない。しかし、水平のやつ、よく承知したな」
「わたしたちが、文句言ったんです。しょせん魏民主国は漢にはかないません。天壇に来た方が、ずっと……でしょ。ねえ、お姉ちゃん」
「ええ。父は、ここを出て間がありません。ほとぼりが冷めたころに……父のこともよろしく」
「水平も幸せ者だ、こんな孝行娘を二人も持って。まあ、わたしの見た限りでは合格だが、君らには幹部食堂で働いてもらうつもりなんだ。接遇の責任者は、林息女同志だ。さっそく林同志に会ってもらおう」
 料理長は、ピカピカに剃った顎を撫でながら、二人を上物と皮算用した。

「よく来たわ明花、開花。食は広州。本当の料理と、もてなし方を漢のオッサンたちに教えてやって。魏は漢にけっして劣らないことを」
 林息女も広州の出身らしく、二人には大きな期待を持っているようだった。
「見かけは合格、あとは幹部相手に相当のお相手ができるかどうか、まずは、配膳の練習から……」
 二人は、配膳から接待の仕方まで、息女にチェックされた。わざと二三箇所間違えて息女の指導を受け、息女の優越感も満たしてやった。息女は、広州人として、漢の中枢で働くことに、屈折した優越感と野心を持っていることが分かった。

 まずは、第一関門突破。あとは……流れのままに。でも自信たっぷりの二人であった。 

ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 高校ライトノベル・秋物語り... | トップ | 高校ライトノベル・志忠屋繁... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説3」カテゴリの最新記事