大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・新 時かける少女・11〈S島奪還・2〉

2017-07-01 06:19:11 | 時かける少女
新 かける少女・11
〈S島奪還・2〉
 



 あたしの後に救急患者が運ばれた。

 あたしは瀕死の重傷だったけど、とぎれとぎれに視覚と聴覚は戻っていた。
 患者は、具志堅君だった。具志堅君は、その場で死亡が確認された。声で仲間先生が来ているのが分かった。一瞬とどめを刺されるんじゃないかと思ったけど、すぐに気配が消えた。具志堅君をやったのはエミーたちだろう。で、仲間先生は身の危険を感じてフケた。

 そのころお父さんは、S島から帰還した牛島一尉ら四名と決死のコマンド部隊を作った。

 むろん、お父さんには指揮権など無い。かろうじて自衛隊員の身分を保っている。
 状況に大きな変化が起こる前にS島を奪還しようというのだ。裏ではエミーたちのアメリカのエージェントが関わっている。
 今のアメリカには正面だってC国と争う姿勢はない。でも、現状に危機を感じている者も少なからずいる。米軍は、秘密裏にお父さん達を援助した。

 C国は、S島の支配を完全にするために、一個大隊の派遣を決めている。奪還するのは、この24時間しかないだろう。

 米軍は、故意に軍事衛星の制御を不能にし、ジャミングをかけ続けた。その間に、お父さん達五人のコマンドは、自衛隊機に擬装した米軍のオスプレイから、パラシュートで、S島の東海岸に降下した。米軍は、島の西側に絶えず照明弾を落とし、島の7名の残存部隊を牽制した。米軍としては、戦闘行為ギリギリの行動で、C国政府も抗議していた。C国政府は、島に接近する米軍機に、島から威嚇射撃することを認めた。そして、本当に携帯型の地対空ミサイルを撃ってきた。お父さん達は、その隙間を狙って、降下したのだった。

 勝負は三十分でついた。

 お父さん達五名のコマンドは、全員二回以上のレンジャー訓練を受けたベテランたちで、牛島一尉ら四名は、つい二十時間前に、ここで戦って、敵のクセを把握していた。
 島には、日本とC国の戦死者の死体が、まだ、そのままにされていた。お父さん達は、その戦死者達に紛れて、S島の残存部隊に接近した。
 C国の七人は、まだ息のある味方の負傷者を周囲に集め、その気配に隠れていた。

 敵の七人は、瞬時に五人が即死。二人が捕虜になった。

 そして、島に奪還を示す日章旗が掲げられ、待機していた米軍が撮影。その動画は、二分後に動画サイトに投稿され、世論も瞬時に変わった。

――自衛隊5人のコマンド、S島を奪還――
――凄惨な戦場!――

 キャプションが付いた動画は、サイトの暗号化に成功していたG社によって、C国国内にも流れた。
 島に生き残っていたC国の七人は、負傷していた自衛隊員に残虐にもとどめをさしていた。明らかに戦時国際法や交戦規定に違反していた。日本人を本気で怒らせたことはもちろん、アメリカの世論も日本に味方し、安保条約の規定通り出撃し、S島を目指していた、C国の一個大隊の半数を輸送機ごと撃破した。

「わたしたちは命令に反して出撃しました。シビリアンコントロールに反する行為です。責任をとって、辞職いたします」
 お父さん達五人は、部隊章、階級章をむしり取り、自ら武装解除した。

 国民の世論は、圧倒的にお父さん達を支持し、最初の無理解な命令を出した政府を非難した。
「なぜ話し合いをしなかったのか!?」
 そう報じたA新聞は、その日のうちに百万人の購読者を失った。

 あたしは、この状況を夢として見ていた。もう助からないなと、自分でも、そう思った。

 お母さんが、一睡もしないで付き添ってくれた。
 最後に目に入ったのは、涙でボロボロになったエミーの顔だった。
 お父さんが駆けつけてきたときには、あたしは天井のあたりから眺めていた。

 ああ、幽体離脱したんだ……。

 そう思った瞬間、あたしは時間の渦に巻き込まれていった。小林愛としての人生が終わり、別の人間として、また時空をさまよう。時かける少女なんだ。

 あたしは……。

ジャンル:
小説
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