大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト【大西教授のリケジョへの献身・1】

2016-10-15 06:25:38 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
【大西教授のリケジョへの献身・1】



 大西教授は、今年定年退官である。

 助手時代から営々三十四年間、幕下大学の生物学研究室で地味に勤め上げた学究の人であった。ただ、人間関係がヘタクソで、かつ謙譲の精神の体現者……と言えば聞こえはいいが、研究成果を人にパクられても文句一つ言わない。また、人が実験に困っていたりすると、まるで我がことのように熱心に協力。時に教授の力により研究成果が上がっても、人はめったに大西教授に感謝せず、また教授も、それでいいと思っていた。

「これで幕下大学が世に認められ、生物学や医療科学が進歩するのなら、それでいい」

 そう思ってニコニコしていた。
 しかし、そんな人のいい彼は家庭的には恵まれなかった。大西教授は晩婚であった。四十を超えた準教授のとき、当時健在であった母親が心配し、お見合いパーティーに連れていかれた。当時のトレンドは、面白い男で、芸人さんたちがとんでもない美人を獲得したりしていた。ベシャリがまるでダメな大西準教授は、一人片隅でウーロン茶を飲んでいた。

 そんな大西準教授に目を付けたのが、今のカミサンである。

 カミサンは、そのお見合いパーティーでは一番華のある美人で、大西準教授よりも一回りも年下であった。
 カミサンは、準教授という肩書きに惚れた。そして、いいカモであると思った。
 男関係が派手だったカミサンは当時妊娠していたが、父親が誰か分からなかった。可能性のある男五人に「あんたの子よ」と迫ったが、偶然五人とも同じ血液型で、当時の技術では、誰が子どもの父親であるか絞り込めなかった。

 で、カミサンは、高学歴のハイソな男しか集まらない、お見合いパーティーに参加した。

 ただ、情報が流れてしまっていた。五人の男のだれか、ひょっとして何人かがリークしていた。で、主だった男性参加者は、その事実を知っており、最初から敬遠していた。

 そして、大西準教授は、カミサンと結婚することになってしまった。

 知り合って、半月で肉体関係……下戸の大西準教授は、目が覚めた時の状況で、そう思いこまされていた。
 そして、お腹が目立たないうちにということで、一カ月で挙式。七カ月後には、早産にしては大きな女の子が生まれた。人のいい大西準教授は、すっかり自分の娘だと思って可愛がった。

 娘とは、小学校の高学年までは、うまくいっていた。父子ともに実の親子だと、思いこんでいた。

 ところが、娘が六年生の時に交通事故に遭い、詳しい精密な血液型が分かった。大西準教授は、初めてハメられていたことが分かった。愕然とした大西準教授は一瞬人間不信に落ち込んだが、すでに娘に愛情を感じている自分に気が付いた。そしてカミサンにものっぴきならない事情だったんだろう……そう、理解し、何事もないように家族の生活を続けた。

 カミサンは、あろうことか、そんな亭主に苛立ってきた。元来は良心の呵責であるべきだったが、いら立ちに転訛させてしまった。大西準教授は、その性格が災いして五十を超えても教授になれなかった。カミサンは、それを亭主のふがいの無さだと思い、事あるごとに当たり散らし、ある日、酒の勢いで娘に真実を言ってしまった。

 娘は、それから絵に描いたように悪くなってしまい、大西準教授は、所轄の警察と仲良くなるほどの不幸に見舞われた。

 大西準教授は、仕事に没頭することで気を紛らわせた。そして、彼によって業績をあげられた後輩たちが大学に働きかけ、やっと一昨年教授になれた。

 カミサンと娘は、退官されて収入が減ることを恐れ、特認教授として大学に残ることを勧めた。

 そんなとき、研究室の若きリケジョである、物部瑠璃が、スタッフ細胞の開発に成功した……。

 つづく

ジャンル:
小説
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