大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・新 VARIATIONS*さくら*27(さくら編)≪ねだめカンタービレ・5≫

2017-06-19 05:52:03 | 小説4
新 VARIATIONS*さくら*27(さくら編)
≪ねだめカンタービレ・5≫



 校長先生の家で晩御飯を勧められた。

 地下のスタジオから戻ると、息子さんご夫婦も帰っておられて、準備が整っていたので、断るのも失礼かとお誘いに乗った。
家にはスマホでお母さんに連絡。
「かえって気を遣わせてしまったみたいね」
「いいえ、友達のマクサや恵里奈とはしょっちゅうですから」

 お料理は、気取らない多国籍料理だった。

「いいえ、冷蔵庫のありあわせの無国籍料理。共働きの三世帯でしょ、時間もまちまちだし、長年やってるうちに、こうなっちゃった」
 感じとしては煮物と炒め物にサラダ。それが微妙にエスニック。これも各自の好みを聞いているうちに四捨五入して「手抜き」という絶対数で割ると、こういうものになると、奥さんの弁。ちなみに息子さんと娘さんは大学生で、あたし同様、朝家を出たら糸の切れた凧のようだ。
「わたしたちの時代じゃ許されなかったけどね」
 そう言いながら、お祖母ちゃんが遅れて地下から上がってこられた。
「あ、そうだ。サクラさんに名刺渡しとこう」

 相変わらず、この「サクラ」は、あたしのことか、ひい祖母ちゃんのことか分からない。

――よろずクリエーター、白波園子――と書かれていた。

「この『よろずクリエーター』って、なんですか?」
 無邪気に聞くと、みんながホタホタと笑った。
「ようは、なんでもやりたがり屋。好きなことをやってはブログ書いたりYouTubeに投稿したり……お母さん、さっきの佐倉さんの投稿なんかしてないでしょうね!?」
 校長先生が顔色を変えた。
「もちろんアップしたわよ。だって、あたしと桜の仲なんだもん。ねえ、桜!」
 これは完全にひい祖母ちゃんと間違われている。
「ちょっと、確認」
 校長先生はテレビを点けると、入力をパソコンにした。
「『ゴンドラの唄 桜』で出てくるわよ」

 校長先生が、そう打ち込むと、まるで本物のスタジオで歌手が歌っているように、カメラ3台の画像が切り替わりながら、あたしの歌を流していた!
「いい出来ね。ネット仲間でテレビのメカニックさんがいてね。昨日来てもらって、こういう仕様にしてもらったの。ホホホ」
「佐倉さん、ごめんね、すぐ削除してもらうから」
「なによ、こんなにいい出来になったのにい」
「お母さん、肖像権の問題とか著作権の問題だとか……」
「著作権は切れてるからOK。写っているのは桜だし、ねえ」
「え、ああ、いいですよ。あたしYouTubeなんて載ったことないし、良く撮れてるし、記念になっていいです」

 そう答えたのが運命の分かれ道だった。

「ちょっと、さくらのアクセスすごいわよ!」
 帰るなりさつきネエに言われた。
 パソコンには、校長先生の家で観たのと同じ画面が写り、その下のアクセス回数は1000を超えていた。コメントも10個ほど来ていた。
 懐かしー! 若いのに上手! 大正ロマン!などなど、ご年配と思われる人たちのコメントばっか。
「これ、いつものさくらの鼻歌のレベルじゃないわよさ。なんか特訓した?」
「ううん、お姉ちゃんがのど飴ぶちこんだぐらいよ……」
 そこまで言って気づいた。
 こうなっちゃったのは、秋分の日の夜。尾てい骨骨折やって、なんだか無性に眠くなるようになった。で、そのあくる日にひい祖母ちゃんが夢に出てきて、それからだ……お彼岸ミステリー!
「ハハ、まさかね」

 まあ、一晩だけのジババのアイドルぐらいに思っていた……。

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