大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・4『中ルートは香りの商店街』

2018-02-25 07:03:57 | 小説3

高校ライトノベル
通学道中膝栗毛・4『中ルートは香りの商店街』
        



 もう一つは中ルート。

 商店街のアーケードを通って行く。

 夏と冬は、もっぱら中ルートになる。
 暑さ寒さをしのげるのが理由の一つ。

 第一回でも言ったけど、都立希望ヶ丘青春高校に制服は無いけど、制服廃止前のセーラー服が女子の定番。
 セーラー服の冬の寒さは着てみないと分からないよ。
 裾が短い上にパカパカで、襟もとも大きく開いている。スースー空気が抜けて行って体温を奪ってしまう。
 女子の中には、セーラーの下にモコモコのセーターとか着る子がいるけど、あたしたちはしない。

 外見的に崩すことは絶対しない。

 フェリスとか女学館とか、セーラー服の名門校は、けして崩した着こなしはしないでしょ。ま、学校の指導が厳しいってことがあるんだろうけど、生徒自身に誇りがあるんだ。

 鈴夏と相談して、ネット通販でハーフコートを買った。昭和の女学校風で、とっても清楚。足許は黒のローファーとハイソで引き締め、首にはタータンチェックのマフラーを装着。装着なんだよね、間違っても毛糸のモワモワマフラーをグルグル巻きにして首の後ろで結ぶなんてことはしない。もう、なんちゅうか、学習院も顔負けって感じ。

 で、この格好で二人そろって商店街を駅に向かう。

 商店街を抜ける理由の二つ目は香りなんだ。

 朝の商店街は営業前。

 たいがいのお店は閉まっているけど、食べ物関係のお店は開店準備にいそしんでいるのだ。

 お惣菜のお店や蕎麦屋さんからはお出汁のいい匂い。魚屋さんは焼き魚、豆腐屋さんは油揚げを揚げる香ばしさ、ケーキ屋さんは甘いクリームの、もう開店しているパン屋さんは食欲そそる焼き立てパン、喫茶店からは挽きたてコーヒー、お寿司屋さんからは酢飯と、もう香りのバザールって感じ。

 帰りに通ると、これに天ぷら屋さんと肉屋さんの揚げ物の匂いが加わる。
 天ぷら屋さんは二種類で、練り物の天ぷらと普通の天ぷらとでは匂いが違う。あたしは、ごま油の天ぷらの匂いが好きだ。
 お父さんが、大阪には紅しょうがの天ぷらがあると言っていた。
「えー、それは信じらんない!」
 鈴夏は眉を顰めるけど、チャンスがあったら食べてみたい。あたしはショウガ大好き少女なのだ。
 これが最高というか、我が町の商店街のグレードを上げている匂いが、駅寄りの出口の方でする。

 花屋さんとお茶屋さん。

 食べ物の匂いもいいんだけど、お花やお茶の香りというのは心を気高くしてくれる。
「んー、分からなくもないけど、気高いかなあ?」
 鈴夏の感覚は、ほとんどいっしょなんだけど、こういうところにズレがある。
 まあ、神社のコマ犬みたいにそっくりじゃなくて、微妙に違いがある方が高校生らしくていいと思う。

 今日の帰り道は中ルート。

 お肉屋さんで揚げたてコロッケを一つづつ買う。一個60円なり。
 お屋敷街の100円自販機も安いんだけど、この60円にはかなわない。
 どうしてお肉屋さんのコロッケっておいしんだろ? 家で揚げてもこの味には絶対ならない。

 洋品屋さんのショ-ウインドウに二人の姿が写る。

 完全装備の女子高生二人がハフハフと歩きコロッケ。昔の女学校では禁止だったんだろうけど、こういう外し方はイケてると思う。

 歩きスマホよりもよっぽどいいな。そうは思いませんか?
 


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