大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・87『永遠の0』

2016-11-08 06:48:42 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・87『永遠の0』

この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


見て下さい……それ以外、一言もありません。

 見る方一人一人、いろんな感慨が有ると思います。私の押し付けは、映画をご覧に成った後でお読み下さい。

 さて、連休初日の土曜日とあって映画館は満員。年齢層はバラバラです。岡田君ファンの若いカップルからご老人まで、ざっと見てどの層が突出しているとは見えません。ちなみに、私の隣は初老の紳士と若い女性、親子には見えない……どういう関係なんでしょうね(余計な詮索)。映画が終了、エンドクレジットになっても殆ど席を立つ人はいませんでした。桑田の歌う“蛍”を聴きながら、それぞれ余韻をかみしめておられるのがわかります。
 単なる反戦映画ではありません。泣かせるだけの作品でも、日本人にしか解らない作品……そんな、ちっぽけな映画ではありません。百田尚樹の原作は、これから読むのですが「海賊と呼ばれた男」の経験からすると、この映画の背骨には原作がしっかり入っているのだと思います。

 原作者/百田尚樹と監督/山崎貴(三丁目の夕日)を改めて見直しました。“永遠の0”は、これまで何回もドラマ化のオファーがあったそうですが、脚本に納得がいかず断っていたそうであります。原作を読んで、何が作者を納得させたのかを考えるのも楽しみ。
 役者の演技はひとまず、本作の片一方の主役は素晴らしいCGの仕上がりでした。蒼穹に舞い上がる零戦の美しさ、繰り広げられる空中戦のリアル。 数量、性能共に優勢に成っていく米軍機を相手に最後まで互角以上の戦いをする事ができたのは、その軽量を生かした(防御が薄いという事です)航続距離と機動性です。 照準器に捉えられても、直進しているように見えて微妙に進路をずらす「滑り」というテクニックを、はっきり映像で確認できました。零の20㎜砲に比べて、圧倒的に直進性能に優れる機銃相手に「零マジック」と恐れられた操縦方法で……いやいや、そんなオタク話はどうでもよろしいでんな。
 
 さあて、漸く俳優さんの演技。CMは百田/岡田の二人で各局を走り回っていましたが、その時必ず百田氏が口を極めて褒めていたのが岡田准一の笑顔。作中、主人公/宮部久蔵が印象的な笑顔を浮かべるのですが、その笑顔の意味は総て違います。そのままに喜びであったり、裏に悲しみや寂しさ、諦観、覚悟が隠されている笑顔。岡田准一見事であります、きっちり演じ分けていました。彼の笑顔を見るだけで満足できます。演じる者として、当然出来て当たり前の演技ではありますが、岡田が物語を完全に理解し、宮部久蔵に深く入り込んでいる結果であります。精神主義の日本軍の中にあって、愛する者のために 徹底的に“生き残り”にこだわる。「臆病者」「面汚し」の汚名必至ながら、信念が揺らがない、この主人公の強さと しかし、戦況悪化の圧力の下 徐々に蝕まれて行く……この存在の悲しみが余すところなく演じられる。これは脚本と演出の構成の勝利でもあるでしょうが、まず岡田を賞賛したいと思います。

 物語は宮部の妻/松乃の葬儀が行われている葬儀場から始まる。泣き崩れる祖父(夏八木勲さん/本作が遺作になってしまいました)が、実の祖父ではなくお婆ちゃんの再婚相手だと知れる。孫二人が実の祖父を知ろうと かつての戦友を訪ね、映像は過去と現在を往復する。こういうテーマではオーソドックスな作りになっています。
 しかし、オーソドックスながら本作を非凡な作品に仕上げているのは原作の力と岡田以下共演者総ての人々のリアルな世界観です。 殊に橋爪功の死を目前にした老人、田中民(ミンの字は正しくはサンズイが付きます)演じるヤクザのの親分が出色。孫達はインタビューの初めには祖父を卑怯者と否定する話しか聞けない、橋爪功の井崎老人から初めて祖父の実情を知らされる、橋爪の淡々とした語りが胸にしみる。逆に田中の景浦は個人では抱えきれないほどの怒り悲しみを持ち続けている。田中の背後にそれが炎のごとくに立ち上がってみえる。そして、意外な所に最大の理解者がいた。
 老優の素晴らしさもさることながら各人の現役時代を演じた濱田岳/新井浩文/染谷将太らの熱演も光る。戦争の時代を手探りながらもリアルに演じた。当時、理解しきれなかった宮部の生き方が、自らの人生の中で深く理解されていった経緯が鮮明に見える。
 宮部は、ある想いから特攻に出て還らぬ人となる。必死で帰りたかった妻と娘を残して……残された二人が、戦後のある時期以降 幸せな人生を送れたであろう事が、そしてそれは間違いなく宮部の生き方が生んだ奇跡であることが、この物語を救っている。
 最後に、田中民さんの想いが本作の総てを言い表していますのでお借りします。“耐えて守るべき個人の正義/他人の可能性をどこまでも信じること/死のギリギリまで生命の輝きを見続けること……” 素晴らしい映画でした。

ジャンル:
小説
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