大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・〔普通科高校の劣等生・6〕

2016-11-12 06:35:32 | 小説5
高校ライトノベル
〔普通科高校の劣等生・6〕




 ミリーの家は、天下に名だたる成城だった……。

 二百坪はあるだろう。でも、建物の品がとてもいいので、外観は、それほどのお屋敷とは感じさせない……と言っても、他のお屋敷と比べての話で、オレを3LDKの自宅と比較して、気後れさせるのには十分なお屋敷だった。

 ドアホンを押すとミリー自身の声がした。

「どうぞ、そのまま入ってきて。ロックはすべて解除してあるから」
 玄関だけで、オレの部屋よりも広い。ミリーは生成りのワンピースで迎えてくれた。制服姿のミリーしか知らないオレには、とても新鮮だった。同時に難しいと思った。生成りのコットンというのは表現がとても難しい。オレが持ってきた授業用の12色の油絵具ではとても表せないだろう……てなことを心配しているうちにリビングに通された。
「あら、絵の具持ってきてくれたのね」
「あ、うん。だって絵を描くんだろ。その……ミリーの肖像画。キャンパスは一応8号。ま、今日はとりあえずデッサンだけで終わりそうだけどね」
「あの……一応うちで絵具とか用意してあるの。できたら、それを使って欲しいんだけど」
 その一言で、かなり高級な絵具と画材を用意してくれているような気がした。12色以上の絵具を使ったことのないオレにはとても嬉しい。オレって、そのへん直ぐに表情に出る方なんで、ミリーは直ぐに喜んでくれた。
「朝の光を大事にしたいんで、お茶飲んだらすぐにかかってくれる?」
「うんうん、朝の光って人間の肌を一番きれいに見せるんだ。すぐとっかかろう……アチチ!」
 急いでお茶を飲んだので、舌をやけどした。そんなオレが可笑しいんだろう、ミリーはコロコロと笑った。

 サンルームは、12畳ほどの広さで三方が格子の入ったガラスの壁になっている。淡いグリーンを基調とした内装で、人物画を描くのにはうってつけだ。
 覆っている布が取られるまで、それがキャンパスだとは気付かなかった。なんちゅうか等身大。オレは12号以上のキャンパスなんて使ったことが無いから、サイズが分からない。畳一枚分と言えば分かるだろうか。
「ウワー……とりあえず、顔のデッサンだけやらせてくれる。人物画は顔が命だからね、描いてもらいたい姿勢と表情くれるかな」
 ミリーはあらかじめ決めていたんだろう、スックと立つと斜めに向き、上半身をこちらに捻り、軽く微笑んだ。
「お家の人は……挨拶とかしなくてもいいのかな?」
「親は二人ともお出かけ。家政婦さんはお休み」
「え……じゃ、兄弟とかは?」
「トドムくんは?」
「あ……オレも一人っ子。で、親父と二人の父子家庭」
「……そうなんだ」
 ミリーの表情が少し曇った。
「あ、おれ、そういうの気にしてないから。そんなの気にしてるようならダブって二度目の二年生なんかやってらんねえから」
「アハハ。トドムくんのそういうとこ好きよ。なんで、こんなユニークな生徒落第させるかなあ」
「学校にも好かれてんの。三年で出られたら寂しいって」
「アハハハ……」
 ひとしきり笑ったり喋ったりしているうちに、デッサンが出来上がった。
「え、あたしって、こんななの?」
「うん、オレの目を通してだけどね。そこの鏡を見てみろよ」
 ミリーは、デッサンを持って鏡の前に立った。
「……なるほど、あたしから迷いを取ったら、こういう顔になるんだ」

 オレは、分かっていなかった。ミリーの中の迷いや悩みを。互いに美しい誤解をしていたとおもう。逆に、ミリーの迷いや悩みを正確に知っていたら、この肖像画は引き受けられなかっただろう。
「じゃ、キャンパスに下書きしていこうか!」
「うん!」

 ミリーは生成りのワンピースを脱いだ。その下はなにも身に着けていなかった……。

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