大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・小悪魔マユの魔法日記・31『フェアリーテール・5』

2017-07-31 06:08:09 | 小説4
小悪魔マユの魔法日記・31
『フェアリーテール・5』



「この人……白雪姫さんよね?」
 マユがたずねる。

「そう、眠れる森の美女じゃなければね」
 レミが答える……ため息混じりに。
「ね、そうでしょ!?」
 レミは、矛先をアニマ王子に向けた。
「あ、ああ……スノーホワイトかもしれないし、シュネービットヒィエンかもしれないけど」
「それ、英語とドイツ語に言い換えただけじゃないの」
「あ、ああ……そうだよね。でも彼女がスノーホワイトなら、英語じゃなきゃ伝わらないし、シュネービットヒィエンならドイツ語でなきゃ。ボクは日本語だから微妙に違うかも……なんて、言い訳はしないからね」
 アニマ王子は、長いため息をついて、うなだれた。
「まあ、現実を認めるようになっただけ進歩だけどね。ね、スニージー」
 レミはガラスの棺を撫でながら、つぶやいた。

ハーックション!

 とたんに大きなクシャミがして、棺の向こうからドワーフが、現れた。
「やあ、レミ、世話かけるね。そちらさんが?」
「そう、魔法使いのマユ。やっと来てもらえたの」
「そりゃあいい。もう、この世界はこんぐらがっちゃってるからね。よろしくマユ」
「こんにちは、スニージー。他のドワーフさんたちは?」
「みんな山に行ってるよ。鉱石掘りが俺たちの仕事だからね。夕暮れになったらみんな戻ってくる。もう少し時間があるから、俺も行っていいかなあ」
「いいわよ。でも、あの山の向こうで、つま先立ちしてるお星様たちが顔を出すまでには戻ってきてね」
「うん、分かった。それじゃ、ちょっくら行って来るわ」
 スニージーは、アニマ王子に一瞥をくれると、サッサと、ツルハシをかついで行ってしまった。

「ドワーフさんたちも、持て余し気味のようね」

 その見かけよりも速い足どりで山を目指して駆けていくスニージーを眺めながらレミが言った。とたんに彼方のスニージーが大きなクシャミ。そのコダマが収まる頃に、マユが訪ねた。
「ねえ、白雪姫のお話って、王子さまがキスして、白雪姫が生き返り、メデタシメデタシになるんじゃないの?」
「それが、そうならないから、苦労してんのよ」
「ああ、いったい、どうすればいいんだ……!!?」
 アニマ王子が、頭をかきむしりながら身もだえした。
「簡単でしょ。キスしちゃえばいいんだから」
「それがね……」
 レミが腕組みをした。
「ひょっとして、王子さまって○○……なの?」
「そんな、ボクは○○でもなきゃ××でもない! 心から白雪姫のことを愛している!」
「だったら……!」
「ボクが王子でなくて、白雪姫が王女でなきゃ事は簡単なんだけどね」
「ハア……」
 組んだ腕をほどいて、レミはため息をついた。

「ボクと、白雪姫がいっしょになったら、どうなると思う……」
 アニマ王子は、空をあおいでつぶやいた。
「ハッピーエンドにはならないの?」
「考えてもくれよ。一国の王子と王女だよ。それが好きになって結ばれたら、二つの国が合併することになるんだよ。うまく根回ししても、強力な同盟関係になったと思われるし、現にそうなってしまうだろう」
「そうなんだ……」
「ここは、北にシンデレラの王国、南に眠れる美女の王国、そのまた南が白雪姫の国だ。うちと白雪姫の国がいっしょになれば、この微妙なファンタジーの世界のパワーバランスが崩れ、緊張関係がいっそう増してしまう。王子であるボクは、自分の思い通りには行動できないんだよ」
「でもね、でもさ……そんなことやってみなければ分からない事だってあるんじゃない。塔の上のラプンツェルだって、その好奇心はハッピーエンドに終わったわ」
「あれはディズニーが、無理矢理話をねじまげたからさ。ファンタジーの世界はもっと残酷で、リアルなんだよ。なんなら、このグリムの原作を読んでみるといいよ」
「それぐらい知ってるわよ。グリムの残酷さぐらいは魔法学校で習ったわ。でも、しっかり現実を見てごらんなさいよ!」
 マユは、見かけよりずっと強い力で、アニマ王子を白雪姫の棺の前まで引き据えた。
「マユ……」
 マユの強引さに、レミは、思わず声をあげた。
「愛しているんでしょ!?」
「う、うん……」
「だったら、何も考えることは無し。キスしちゃえ!」
 ありったけの魔力で、王子の顔を白雪姫の顔に近づけた……しかし、アニマ王子は渾身の力で抗い、その唇は五ミリの距離を置いて止まってしまう。
「……なんてガンコな根性無しなの!」
「だって、ここで二人が結ばれたら、まず、白雪姫の国で内戦がおこるよ。王妃側と白雪姫側に分かれた血みどろな内戦が!」
「それをなんとかするのが、王子でしょうが!」
 アニマ王子が、顔を真っ赤にして、何か言おうとしたとき。人の気配がした。

「あの……このへんでライオンさん見かけませんでした?」

 その子は、白と水色のギンガムチェックにフンワリ半袖のワンピース。髪はツインテール、バスケットを腕に下げ、赤い靴を履いていた……。

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