大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・小悪魔マユの魔法日記・8『ダークサイドストーリー・4』

2017-07-08 06:45:49 | 小説3
小悪魔マユの魔法日記・8
『ダークサイドストーリー・4』
        


 雅部利恵(がぶりえ)はヤキモキしていた。

 利恵は、片岡先生が、メリッサ先生と出会うのを心待ちにしていた。
 小悪魔マユといっしょに時間を止めたときに、利恵は確信した。片岡先生はアメリカ留学中にメリッサ先生のことを、好きになったのだ。
 片岡先生が、その女性を好きだという気持ち、それを押し殺していること。そして、片岡先生の心に浮かんだブルネットの女の人のDNAを読み取り、天国のスパコンで検索して、シアトルにいるメリッサを見つけた。そして、前任のスミス先生に宝くじが当たるように大仕掛けをして、英語の英会話の先生の席を空席にした。
 で、ネットで英会話の英語講師の募集が、メリッサの目に止まるようにして、たった一週間でメリッサを、この学校の英会話の先生にしてしまったのである。

 こんな離れ業ができるのは、利恵が、大天使ガブリエルの姪であるからである。ガブリエルは自分自身、一度天界を追放されたことがあり、姪の落第天使の利恵には目をかけていた。
 シアトルマリナーズの『踊るグランド・キーパー』というダンスガールをやっていたメリッサが契約切れになったことは偶然であるが、彼女がイチローの大ファンで、彼女の気持ちを日本に傾斜させることは簡単だった。
 そして、契約切れになった日に、ネットで、日本の学校が英会話の講師を探していることに気づかせるのは、もっと簡単であった。伯母のガブリエルは通信を司る大天使である。

 しかし、メリッサ先生が、片岡先生に出会うのは一週間もかかってしまった。メリッサ先生の勤務日が、週に三日しかないことや、いっしょになった日も、なにかと二人はすれ違い、会うことができなかった。

「マユ、あなた、わたしの邪魔しないでくれる!」

 二度目にすれ違いで終わってしまったとき、利恵は、落第小悪魔のマユのせいだと思った。
「わたし、知らないわよ」
 マユはむくれて答えた。ルリ子が、沙耶の宿題のノートをこっそり写しているところを邪魔していたところであった。
「そうだ、ポキポキ折れるシャーペンで写さなくても、携帯で写して、あとで書けばいいんだ!」
 マユが、シャ-ペンの芯折りの魔法がお留守になった瞬間に、小悪魔顔負けの悪知恵をはたらかせた。
「だって、こんなに二人の出会いが遅れるのは、悪魔の仕業としか思えないじゃないよ!」
「ああ、これって、やっぱし落第天使の仕業だったのね!?」
「声が大きい、マグル(人間)に聞こえちゃうじゃないよ」
「利恵の方でしょ、人間の声で話しかけてくるんだもん。それにマグルって言い方は、軽すぎ。ハリーポッターの言い方じゃないのよさ」
「とにかく、邪魔はしないで。わたしの単位がかかってるんだから」
「邪魔なんてしてないわよ。人には、持って生まれた運命があるのよ。下手にイジルとかえって、混乱やら不幸を招くわよ」
「なによ、悪魔のクセして、混乱やら不幸は、そちらの専門でしょうが」
「それって天使の偏見。悪魔ってのはね……!」

 その時、始業の鐘が鳴り、英会話講師のメリッサ先生がやってきた。

「ハロー、エブリワン。スタンダップ」
 みんなが行儀よく起立した。マユは、この学校の生徒の上っ面の行儀良さは気に入らない。
「え、この時間って、片岡先生じゃなかったっけ」
「朝、時間割変更があるって、副担のトンボコオロギが言ってたじゃないよ」
「あ、そうだっけ」
「だから落第すんのよ、あんたは」
「落第小悪魔に言われたかないわね」
 起立してからの会話は、心で行われたもので、人間たちには聞こえない。

「シットダウン、プリーズ」

 メリッサ先生が、皆のお行儀のいい挨拶をうけて、着席をうながしたとき、それは起こった。
 コロリと、力無くドアを開けて入ってきたのは片岡先生だった。
「失礼、教室を間違え……」
 片岡の間の抜けた慌てようにみんなが笑った。
 
 ガラ!
 
 いったん教室を出て、片岡先生は、人が変わったような乱暴さでドアを開け、ドアのところでフリーズしてしまった。
 片岡は、怒ったような顔をして口を開いていた。初めて見る、片岡のそんな表情にみんなは驚いた。
 二人を除いて……。

 人間というのは、非常な驚きに出会うと怒ったような顔になる。たとえ小は付いても、落第の冠が付いても、天使と悪魔には、それがよく分かった。

――やったー!!!!

 利恵は、単純に、そう喜んだ。この一つの善行で、落第はチャラになったと感じた。
――ちょっと変だ……。
 マユは、違和感を感じた。

 そして、その違和感は、片岡の次の言葉で確定的になった。
「シンディー……どうして!?」

 片岡の心には混乱しかなかった。
 そして、混乱した心からはドクドクと目に見えない血が流れ出していた……。

 つづく

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