緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

五木の子守唄を聴く

2014-10-05 18:12:53 | その他の音楽
昨日までしばらく暑いくらいの陽気が続いたが、今日は冷たい雨の降る寒い1日だ。
急に気温が下がったので、風邪などひかないように注意しないと。
このところリストのピアノ曲を聴きまくって西洋音楽にかぶれていたので、久しぶりに日本の曲が聴きたくなった。
浮かんできたのは「五木の子守唄」。
最も日本らしい、日本にしか生まれ得なかった曲だ。五音音階陰旋法による日本で昔からある伝統的な音階で作られているが、暗く悲しい曲だ。
何故、日本の子守唄は暗く悲しいのか。昔からそんな疑問が湧いていた。
外国との交流が殆ど無かった、島国日本の閉鎖的、抑圧的な環境の中で、貧しい農民などが日々の質素な生活の中で感じる気持ち、素朴でありながら日本の美しい自然の移り変わりを感じて歌ったものではないかと感じてきた。
「五木の子守唄」に心底感動したのは、学生時代に所属していたマンドリン・オーケストラで、鈴木靜一作曲「交響譚詩 火の山」を演奏した時である。この「火の山」の一節に五木の子守唄のモチーフが使われていたのだ。



ピアノの美しい分散和音が続いた後に、大きくクレッシェンドし、五木の子守唄のフレーズが現れる。ギター・パートは三連符のラスゲアードでの伴奏であるが、若かった私はこの部分を激しく弾いたものだ。五木の子守唄のフレーズの最後にフルートの美しい旋律が流れる。
日本の子守唄には、本来の子守唄(子供を寝かしつけるための歌」と、守り子唄(もりこうた)と呼ばれる唄とがあるといわれており、この「五木の子守唄」は後者の方である(ウィキペディアより)。
昔、源氏との戦いに敗れた平家の落人が熊本県の五木村の隣の五家荘村に移り住み、源氏は平家を監視するために武者を五木村に送り込み監視させた。その後源氏の子孫を主として、「よか衆」と呼ばれる地主と「かんじん」と呼ばれる小作人の2つの階級が形成されたが、この「かんじん」は農奴のような最低の生活を強いられ、娘たちは10歳くらいになると、よか衆などに子守奉公に出され、その悲しい子守娘の諦めの気持ちと、よか衆に対する小さな抵抗を唄ったものがこの子守唄の起源だと言われている(東京人権啓発企業連絡会のホームページより要約)。
なるほどこういうルーツがあったというわけだ。やはり苦しい農民の生活から生まれたのだと思った。
これほど暗く悲しい曲は外国には無い。しかし日本にはたくさんある。
昔、30年以上前だったか、「ネクラ」、「ネアカ」とかいって、暗いものは極力避けようとする風潮が蔓延ったことがあった。要するに暗いものは馬鹿にされたのである。それに比べて昔の日本人が、この「五木の子守唄」のように、暗く悲しい気持ちを率直に、誰にも憚ることなく、歌ったことに感心以上のものを感じた。
暗く悲しいことは人間の根源的な感情であり、悪いことではない。むしろ率直に表現されることにより人々の共感を生むのである。
今日、Youtubeでこの「五木の子守唄」でいい演奏がないか検索してみた。歌だけでなく、楽器への編曲による演奏もたくさんあった。
ギターでは、ドメニコーニの「民謡」という曲の中に五木の子守唄が使われている。



さてYoutubeでいろいろ探して最も心に残ったのは、熊本県五木村の道の駅の食堂で、恐らく店員の方(?)がサービスで歌っているのを録音した動画であった。



素人の方であろうが、実に素朴で飾り気がなく、心に染み入るような歌い方なのだ。こういう何も意識的に飾りをつけたりせず、見返りも期待せず、素朴に無心で歌う歌い方が最も好きだ。
残念なことに1分を過ぎたところで途中で終わってしまっているが、再生回数が1万回を超え、多くの人の気持ちを捉えたことが想像される。久しぶりに日本の情感を感じさせるいい演奏を聴かせてもらった。
なおこのYoutubeの動画で歌われている「五木の子守唄」は「正調」と呼ばれているもので、一般に広まっているものとは異なる。「正調」の旋律の方が深く心に響くかもしれない。
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4 コメント

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Unknown (Tommy)
2014-10-06 08:44:03
初めて訪問させていただいます。
定年退職後に初心者としてクラシックギターを習い始めて一年になります。最近講師にヴィラ・ロボスの練習曲楽譜コピーを頂き毎日練習すると役に立つと言われて検索しているうちにこちらのブログにたどりつきました。
ギター情報がいろいろ書かれており大変参考になります。これからもちょくちょく訪問させて下さい。
Unknown (緑陽)
2014-10-06 23:27:05
Tommyさん、はじめまして。こんにちは。
コメントありがとうございます。
ギター、ピアノ、合唱曲が好きで、週一のペースで思いついたことを書いています。
感じたことをストレートに書いていますので、つまらないこともあると思いますが、気が向いたときに見てやって下さい。
どうぞよろしくお願い致します。
鈴木静一展について (justmusic ono)
2017-03-27 14:05:38
私は鈴木静一展を主催する事務局兼コンマスを務めているものです。2016年の演奏の感想、拝読いたしました。あまりある賛辞に恐縮しております。火の山を弾いてみたいというお話を見てご連絡した次第です。来年には第4回目のコンサートを計画しております。間もなくHPにて曲目含めて詳細が発表されます。ちょくちょく覗いていただければと思います。
鈴木先生が亡くなられたその年に4年の演奏会で涙しながら邪馬台を弾いたことは深い思い出です。
一緒に弾くみなさんも様々な思い出を抱いてステージに立ちます。すばらしいコンサートだと思います。
 それでは、ご一緒できますこと楽しみにしております。
Unknown (緑陽)
2017-03-28 01:08:05
justmusic onoさん、はじめまして。コメント下さりありがとうございました。
鈴木静一展への参加、主催者様よりお声掛けいただけるとは全く思いもよらぬことであり、驚いております。ありがとうございます。
鈴木静一展に参加される方は皆、合奏経験がとても豊富なようで、私のように合奏を離れて30年以上経つ者からすると、想像もできないほどの高いハードルを感じます。
しかしこれからの人生で、鈴木静一の作品を多くの方々とともに演奏する機会は極めて少ないだろうし、それも鈴木静一の作品を敬愛する方々とならばなおさらのことであり、このような方々と一緒に演奏できることは夢のようでもあります。
仕事により休日勤務もあり、実現の可能性は難しいところではありますが、折角ご連絡いただきましたので、まずは考えさせていただきたく思います。

「幻の国 邪馬台」、懐かしいですね。
私も学生時代に演奏した想い出の曲です。

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