緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

弦楽合奏の名曲「弦楽のための三楽章 トリプティーク」芥川也寸志作曲

2012-04-14 22:57:27 | 邦人作曲家
こんにちは。
2週間ぶりの投稿です。先週は土日も仕事で休みがありませんでした。
最近20歳代によく聴いた伊福部昭のCDを探していたら、作曲家芥川也寸志氏のCD
が出てきました。
芥川也寸志氏はかの有名な作家、芥川龍之介の三男なのですが、私が初めて知ったのは
中学校時代にNHKの音楽番組で司会を務めていた頃です。
しかし彼の音楽を初めて聴いた(演奏した)のは、ずっと後の大学時代でした。
大学時代、私はマンドリン・オーケストラのギターパートに所属していたのですが、この
時に芥川也寸志が28歳(1953年)の時に作曲した「弦楽のための三楽章 トリプ
ティーク」のマンドリン・オーケストラ版に出会いました。
このマンドリン・オーケストラ版を演奏していた時は、あまりこの曲の素晴らしさに気
付きませんでした。演奏会が終わった後、一切この曲を演奏することはなくなりました。
でも何故かこの曲が私の心から消えませんでした。
大学を卒業して社会人になり数年後の20代半ばの頃、ふと立ち寄った秋葉原の石丸電気
でこの曲のCDを見つけました。マンドリン・オーケストラではなくオリジナルの弦楽
合奏で、作曲家自身が指揮をした録音です。そして迷うことなくこのCDを買いました。
何故このCDを買う気になったのか。恐らくこの曲が心に刻み込まれていたからではない
か。





この曲は短い三楽章の弦楽合奏なのですが、非常に完成度の高い曲で、聴き手を終始惹
き込む力を持った名曲です。音楽の構築力、旋律、リズムどれをとってもレベルが高く、
28歳で作曲したとはとても思えない優れた名曲です。
とくに子守歌と名づけられた第2楽章はものすごくいい曲です。是非聴いて下さい。
作曲者が自身の娘のために作曲したと言われるこの第2楽章は、聴いて眠くなるどころ
か、却って覚醒し、心の深いところにある感情が呼び覚まされてきます。聴き手の心の
深いところまで刻み込まれるものを持った曲です。だからこの曲を忘れることができな
かった。
この第2楽章を聴くと、今はもう殆ど消滅してしまった日本の情景、情感を感じ取る
ことができる。戦後間もない頃までは確かに存在した、美しい日本が生み出していた
もの、夜の静けさや風の音、純粋な人のやさしさなど。
1960年代に入り、西洋の音楽が大量に入ってきて、日本の音楽界もそれに合わせて
変化していった。芥川氏の音楽もこの曲の作曲後は作風がかなり変遷した。
しかしこの「トリプティーク」は西洋の音楽に影響されない日本独自のものがある。
この曲を聴くことで、聴き手は自分の心のどこかに忘れていた、日本が古来から積み重
ねてきた日本人の心情、日本人だから感じとれる何かを思い起こすに違いない。
因みにトリプティークとは「三連画」を意味し、芥川氏が愛聴していたアレクトル・
タンスマン(ポーランド出身でフランスで活躍した作曲家。ギター作品も多い)の
同名曲から採ったとか。
この曲は1回限り聴くだけではもったない。何度も聴くことでその素晴らしさがわか
ってくる種類の曲である。
私は20代で出合って、この曲の良さが理解できるまでに20年以上かかった。
さてこの曲の名演は先のCD、芥川也寸志指揮、新交響楽団のライブ録音(1986
年)の他に、1963年に録音された、森正指揮、東京交響楽団の演奏があります。



このCDはバブルの頃、復刻版のシリーズもの(10巻)の一つとして発売されたもの
ですが、今は廃盤のようです。
他の録音も聴きましたが、この2つの録音がお勧めです。
この曲の演奏は上手に弾くだけの演奏だと聴いていられないです。多少破綻があっても
聴き手の心に深く入ってくるような演奏でないとこの曲の素晴らしさを理解できないで
しょう。
その意味でもこの曲は演奏するのが非常に難しいのだと思います。





コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (Largo)
2017-03-06 15:41:27
突然コメント失礼致します。この曲初めて聴いた時から非常に印象的でした。1楽章の締めくくりの和音がすごい。2楽章もいいのですが、何といっても3楽章の中間部で出て来るゆったりとしたあの和声、あのメロディー、なぜか懐かしさでたまらなくなります。それでは。
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Unknown (緑陽)
2017-03-07 00:54:10
Largoさん、はじめまして。コメント下さりありがとうございました。
この曲を知ったのは、学生時代にやっていたマンドリン・オーケストラで編曲版を演奏したときでした。
その時はあまりこの曲の真価を理解できなかったのですが、社会人になり、原曲の弦楽を聴くうちにこの曲の素晴らしさに気付きました。
この曲は、芥川也寸志の最高傑作であり、日本が世界に誇るべき名曲だと確信しています。
本当に素晴らしい曲ですね。
おっしゃるように本当に懐かしい、今まで長い間忘れ去っていたものを思い起こさせてくれる曲です。
マンドリン・オーケストラ版の楽譜は紛失してしまったのですが、昨年、この曲の原曲の楽譜を偶然見つけ、手に入れました。
これから楽譜を見ながら聴くのが楽しみです。
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