夜をかける死神@デスノート the Last name

とりあえず、ネタバレがイヤな人のために言っておく。
『デスノート the Last name』は本年度最高の商品である。
あなたの期待が裏切られることは恐らくないだろう。
映画を観て納得したい人にとっても、映画を観て楽しみたい人にとっても、映画を観て驚きたい人にとっても、この作品は水準を大きくクリアしている。
だから予言しとくけど、超の付く大ヒットになるであろう、ファッファッファッ(誰?)

おれの結論としては、映画『デスノート the Last name』は(物語として)原作よりも優れている
ゆえに映画としてはソツのない映画以上のなにものでもないのだが、原作が持っていたポテンシャルを物語のレベルで昇華させたのは漫画版ではなく、映画版の方だ。
その理由を簡単に記せば、映画版の物語には極めて明確に「民主主義」と「法治主義」に対する批評が存在しているから、ということになるだろう。
原作が中盤以降つまらなくなったという声が多いのは、恐らくこの「民主主義への批評性=個人の物語」であることをLの死以降、描くことができなくなったためだと思われる。
つまり、「法治主義=ルールによる、ルールを無限に更新し続ける、ルールのための展開=虚無なゲーム化」はつまらないのだ。
しかし、この映画完結編は民主主義VS法治主義という構図を最後まで保つことに成功している。
法の支配(当然それは、デスノートのルールでもあるし、現実の法のルールでもある)に反発するのは、結局のところLや夜神総一郎などといった個人でしかありえないのだ。
「神という個人になりたい」というキラの願望は、「法治主義と民主主義の両立」なる幼稚な矛盾を必然的に孕んだ妄執的かつ非現実的なものであり、原作が陥った罠とは、すなわち「ルールに対抗するのはルールでしかない」という法と法の虚しい千年戦争であったのではないだろうか。

そうではない、と映画版『デスノート』は主張する。
ルールに対抗できるのは、やはり個人であり、また個が確立されたままに集結した「正しい有志」なのである。
神のルールは、正しき有志の前に敗れ去る。
ただし、その代償は最も確立された、また突出した知能をもったLという個人であった。
だからこそ、その悲劇を映画『デスノート』は死神として具体化する。
死神は人の世を今日も、明日も放浪し、飛び続ける。
その死神と、我々はこれから闘っていかねばならないのだ。
周囲に流されるだけの弱々しい個ではなく、毅然とした個として、我々は正しく有志であらねばならない。
そのような倫理感をもって、この映画は幕を閉じる。

今日も放浪し続ける死神が見える一室には、「みんな忘れちゃった」というひとりの少女が横たわっている。
彼女もまた、死神によって2度も犠牲となった弱々しい個であった。
その代償として、彼女は短い生を終えるだろう。
それが現実だというこの物語の厳しい道徳感が、観る者の背中を押す。
私たちは毅然とした個であらねばならないという、そんな決意で背筋が張り詰める。
映画としての長丁場を乗り越えた物語の力の前に、今回ばかりは賞賛を送らねばなるまい。
基本的に反物語主義者なんだけどな、おれ。

業務報告
●あのドス黒い終わり方をした原作より、こっちの方がすごく優しい終わらせ方だとも思う。
だって、原作は「デスノートを利用しつくしたキラ=夜神月は死神によって然るべき報いを受けた」という結末だったのであって、映画用に脚色された本作では、「デスノートを偶然手にした夜神月こそが、最も不幸なデスノートの犠牲者だった」とされているのだから。
説明だらけでちっともおもしろくなかった前編に比べると、この後編は広げた風呂敷を一気呵成にたたみ込んでいく勢いがあり、展開のおもしろさとソツのない演出で長丁場をほぼダレ場なく見せ切っていると思う。
これほど商品性と作品性が両立した映画は極めて稀であり、よっておれは、この映画が大ヒットするのは当然だし、言い方は悪いかもしれないが正しいことだとすら思っている。
ところどころダラダラだった原作と比較してみても、また上記した倫理的優しさという基準に照らし合わせてみても、題材が見事に圧縮された『デスノート the Last name』は、「凝縮された芸」である映画の適性と時間的経済性をもクリアしており、やはり一個の物語映画としてほとんど完璧と言っていいのではないか。
●ただ、クライマックスのリュークの見せ方だけはもうちょっとがんばって欲しかったな。
あそこだけはもっとドス黒くていいんじゃないかと。
ひょっとこはいいですよね、ひょっとこは。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 17 )
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コメント
 
 
 
 (メビウス)
2006-11-06 19:31:38
ryoddaさんこんばんわ♪TB有難うございました♪

ryoddaさんの太鼓判(?)はもしかしたら初めて見た気がしますね(^▽^;)(笑)でも自分もなんか納得ですね。
10月末に異例の速さでテレビ放映された前編の相乗効果も相まっているので、超ヒットは間違いなしですね。青森のコロナシネマの超行列が変に印象的です(汗
 
 
 
2時間待たされっこ (ryodda)
2006-11-06 19:48:57
でしたよ。苦笑

ヒットするのは間違いないでしょうし、それをどうこう言うつもりもないんですが、本音では「もっと反物語的な映画も観ようよ、みんな」ですね。

去年も物語的な『シスの復讐』が反物語的な『宇宙戦争』を興行・世評両面で圧倒しましたし、どうもこの「映画=物語」という風潮が気になります。

そうじゃないのにな、って思いますが、反物語は今んところ一部を除いて「商品失格扱い」なんですよねえ。

反物語エンタテイメントって、ちょっと前まではアメリカ映画の大作として受けてたはずなんですけどね。

文学回帰しようとしてるのかしら?
 
 
 
ブラッカイマーは今すぐ『パイレーツ3』を金子監督に撮り直させるべきだ (にら)
2006-11-07 16:07:44
瀬戸朝香の名を知る手立てに見られたように現実の法則がかすかに残っていた前編に比べ、後編では見事に払拭されて、あらゆるトリックがデスノートという「ゲームの規則」に則って展開されてましたね。
デスノートそのものも、書くべき対象から、交換されたり隠匿される対象になり、そのことで頭脳戦だけじゃない「活劇」の面白さも加わっていたように思います。
デスノートは人を殺すだけじゃなく、鹿賀丈史に派手な立ち回りをやらせるパワーも秘めていたわけです。

ただ、あまりにも非映画的な藤原竜也の存在だけが心残りですが、他に誰がライトを演じられるかと問われても思いつきません(笑)。

てなわけで、TBありがとうございました。
 
 
 
いやあ (ryodda)
2006-11-09 14:47:29
『パイレーツ3』はヴァービンスキーでいいと思います。笑
金子修介にそこまでの器はないかと。

>ただ、あまりにも非映画的な藤原竜也の存在だけが心残りです

個人的には合ってたと思いますよ。
それにおっしゃるとおり、他にいませんし。笑
まあ、その辺が企画の難しさですよね。
やっぱ、この問題を突き詰めていくと「映画に向いた企画とそうでない企画がある」という命題に突き当たるのだと思います。
 
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