言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

夏の思い出

2017年08月09日 | 日記その1

じりじりフライパンの上で炒られるような夏。
 暑い盛りをカメラを持って神代植物公園に行ったのを思い出す。
 植物園の花の写真を撮って、分類して、それを英語で書くと生物の単位でAをもらえると聞いてでかけたのだ。
 広大な敷地にたくさんの植物があって、宿題も忘れて珍しい植物や美しい花たちに魅せられた。
 友人A子にもその写真や分類した英文をそっくりシェアした。
 その見返りにA子からは手芸を教えてもらうことにした。
 わが家に来てもらって、おいしいケーキと紅茶のおやつが済むとレース編みの講習会がはじまる。
 一対一なので、わからないところを徹底的に教えてもらえる。
 
 高校に入ってびっくりしたのは、友人たちと銀座で待ち合わせて映画に行くと、全員自分で縫ったワンピースやスカートを着ていることだった。
 学校の帰りに寄り道する店は、生地屋さん。そこで安くて可愛い生地を選んで好きな服を縫う。
 誕生日のプレゼントはほとんど自作の小物が多かった。
 私の様にどこかで買うなどとはもってのほかなのだ。

 カルチャーショックだった。
 良家の子女が通う学校。財界の大物や有名人の子どもが多かった。
 ブランド物のものを持って自慢するのでなく、自分で安い生地で自分の服を縫う。
 手作りの品をプレゼントするのを最高とする気風がみなぎっていた。
 人を押しのけたり、足を引っ張るなど考えたこともない子たちばかり。
 謙虚でエレガント。

 区立の中学から編入したに私には異次元の世界がそこにはあった。
 いろいろな環境の子がまざった区立から来た私は、母の教え虚しく、ガサツな女の子だった。
 男の子にまじって野球をし、勉強も負けずとがりがりやり、クラス対抗のバレーボールの試合では応援団長をした。
 そんなバンカラな男の子のような女の子が入学したのだからびっくりものだ。

 仲良くなった友人Aからは手芸を教えてもらって夢中になった。
 なんでもすぐ熱中する私はレース編みでベッドカバーを編み、緞通じゅうたんをつくり、母の茶羽織をレース編みでこっそり編んで誕生日にプレゼントしたこともあった。

 母は喜んで客が訪ねてくるたびに、レースで編んだ茶羽織を箪笥から出して見せたものだった。
 大きなダックスフンドの縫いぐるみは、いつのまにか父の昼寝用の枕になった。

 バンカラでおてんばで、男の子のようだった私はいつのまにか、すこしだけ女の子らしさを身に着けるようになった。
 A子のおかげだ。
 
 ブログをサーフィンしていたら、懐かしい神代植物公園の写真を載せている人がいた。
 暑い夏は巡ってくるけれど、あの懐かしい夏はもう二度と来ない。
 A子とくったくなくおしゃべりした夏。
 母がおやつを持ってきてくれて、三人で笑った夏はもう来ない。

 A子は新婚早々、赤ちゃんがお腹にいた時、ご主人を白血病で亡くした。
 運命の糸車はカラカラといつしか血の赤を織って行く。

 A子から暑中見舞いが来た。
 あの時の子どもが結婚したという。

 焦げるように暑い夏、運命は自ら良い方向に動かすものだと知った。
 
 
 
 
 
 
 
 
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2 コメント

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ありがとうございました。 (雀(から) )
2017-08-09 12:26:15
第2の青春の四十代に🙋 みんなが 20代に 行っていた尾瀬に通いました✨
燧ヶ岳至仏山景鶴山行って良かったのか?
でも美しい自然は行けない今も心を優しく慰めてくれます👼
雀(から)さんへ(思い出) (ろこ)
2017-08-09 12:50:53
雀(から)さんへ
 歌は思い出を手繰り寄せてくれますね。
 雀(から)さんの心にも、尾瀬の思い出が美しく記憶されている。
 記憶って素敵なものですね。困難な時でも、記憶の宝箱をあけると思い出が花開いてくれます。
 雀(から)さんの記憶の宝箱に入っている素敵な思い出が、雀(から)さんを満たしてくれますようにと祈ります。

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