言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

私はカルメン!

2017年06月13日 | 新・随想


 自分の書いたものや、草稿途中のものを家族に見せることはない。
 それが先日魔が差して夫に見せてしまった。
 原稿などとはまるで縁遠い夫はめんどくさそうに原稿を読んだ。
 読み終わって
 「どうだった?感想を教えて」
 と言うと、
 「う~ん」と言ったきりだ。
 「う~ん、だけじゃわからないじゃない」
 と言うと
 「なんだかぴりっとしたものがないなあ」
 と言った。
 「え!ぴりっとしたものがないってどういうことよ」
 と気色(けしき)ばんで尋ねると
 「読み終わって余韻が残るものがないんだよな」
 と言うではないか!
 「なによ、みせなきゃよかった」 
 と私が言うと、夫は
 「みなきゃよかった」
 と言って出かけてしまった。
 
 夫に原稿など見せるのではなかったとぷんぷん怒ってみたものの、そういわれてみると、そうかもしれないと思い返した。
 それから二週間、毎日考え直し、推敲を重ねた結果、また初めから書き直すことにした。
 自分でもすっきりと納得いかない文だったからだ。
 一から書き直すというのはゼロと同じだ。
 一行も書かないまま、放ったままにしておいた。
 頭の中であれやこれやと考えては消してと頭の中の原稿用紙に向かうこと二週間。
 昨日やっとパソコンに向かって打ち始めた。
 出来不出来は別として、頭がすっきりとして一気に書き上げた。
 朝一番に夫に見せると
 「う~ん、ほろりとさせるなぁ」 
 と原稿を返してきた。
 「やった~ぁ!」
 単純な私だ。
 ほろりときてくれれば大成功だ。
 鼻歌を歌いながら夫の弁当を詰める。
 徹夜明けの頭もすっきりさわやかだ。
 「安倍政権はどうなのかしらね?」
 などと上機嫌で夫に尋ねる。
 なにか返事があったようだけれど、聞いちゃあいない。
 テーブルの下の足は十二拍子を打ち鳴らしている。
 ダンスは人間に備わった原始のリズムが体をうごかさせる。 血がたぎる時が人間にはある。
 松村由利子さんの歌集『鳥女』(本阿弥書店)にこんな歌がある。

・エスコビージャ足踏み鳴らすわたしくしは太古のおんな地と響きあう

フラメンコは特に足を踏み鳴らし、己が激情を、熱情を、慟哭を叩きつけ、大地から響いていくるものと共鳴しあい、共振し、増幅して一つになる。
  太古から連綿と続く原始のリズムが踊り手の体を通して躍らせているようだ。
  またこんな歌もある。

・踏み鳴らす足も手拍子(パルマ)も楽器なり十二拍子は血を沸き立たす

確かにフラメンコは躍るほうも、観るほうも血がたぎってくる。
今日は一日カルメンになって火と燃えよう・・・な~んちゃって!
 朝から気分高揚。真っ赤に燃える紅葉。原稿だしてこうよう(こよう)!!






 

 
 
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4 コメント

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おはようございます (tempo1078)
2017-06-14 05:02:49
写真や
あなたの文章から、

BizetのCarmenを
連想しました。

spaniardなpassionの世界。

日本人には無い
生命の躍動感。
tempo1078さんへ(朝と夜のあわいに) (ろこ)
2017-06-14 09:21:32
tempo1078さんへ
 おはようございます。
 いつもいつも過分なお言葉をありがとうございます。
 
初めて (hirorin)
2017-06-14 20:48:30
知った歌人ですけど。
すばらしいですね。
この歌!

うまく説明できないけれど、己の中の情念とか温度とかを表しているようで。

きっと、誰にでもそんな思いはあるんでしょうね。
そういうのをうまく表現されていると思います。
松村由利子さん、ちょっと探してみます。
hirorinさんへ(元新聞記者) (ろこ)
2017-06-14 21:08:49
hirorinさんへ
 わあ~、嬉しい!
 松村由利子さんの歌に共感し、興味を持ってもらえて記事を書いた甲斐がありました。
 松村さんは元毎日新聞の女性記者で、さすがに時事関連の歌を歌わせたらシニカルで的を射ていて素晴らしいですが、それよりも何よりも、シングルマザーとして男の子を育てながら熾烈な新聞社に勤務。その時から短歌の世界に入った方です。このブログのカテゴリーに「松村由利子の歌に寄せて」とスレッドを立てました。
 ぜひご覧ください。
 千葉から沖縄石垣島に引越しされましたが、その道中、我が家にも車でお立ち寄りくださいました。
 美しく凛々しく知的で、謙虚で私が憧れる人です。
 さすがhirorinさん!
 興味を持ってくださって大変うれしいです。

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