言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

書評『カーネーション』

2017年07月16日 | 書評
カーネーション (くもんの児童文学)
いとう みく,酒井 駒子
くもん出版

 
 主人公「日和」は女子中学生。
 父と母、妹の4人家族の長女として生まれた。
 
 日和の心を幼い頃から言葉や視線で傷付けるのは母の愛子。
 母に嫌われている。なぜ?
 なぜ母は自分を嫌うのだろうかと苦しむ日和。
 妹は溺愛されているのに。

 一方母の愛子自身も、なぜ自分はわが子を愛せないのかと苦しむ。
 次女には無条件に愛を注げるのにと苦しむ。
あたしは、まだ母に愛されたいと思っている。
  いつか母は、あたしを愛してくれると信じている。
  そんなことは無理だとわかっていても、あたしはあたしの深いところで、いまも願っている。

 恋しいほどに母の愛を求めてやまない「日和」の言葉が胸に突き刺さる。

 女には母性が備わっていると言われてきた。
 親子の愛は不滅・普遍などと思われてきた。
 しかし、母性神話などはなく、子供を愛せない親はいるのだ。
 一方、子供は理由もなく親を慕う。愛されたいと、ひたすら願う。
 その双方の苦しみと葛藤を著者は児童文学に取り入れた。

 最後に日和がだした結論。
 「どんなに願ったって、祈ったって、母はあたしを好きにはならない」「あたしは母を捨てる」
 血を吐くようなこの言葉の先には、凛とした決断がにじむ。

兄弟への差別などでなく、子どもを愛せないという親がいるということ。
 理由などなく、わが子を愛せない親というものがいるのです。
 母親ならみんな母性があるという神話はないという点に焦点を当てた作品。
 心を痛めている子供さん、親ごさんにぜひ読んでもらいたいですね。
 厳しい内容ですが、人間というものの多様性の中にある真実に焦点を当てたものです。

 家族の崩壊を身を持って知る男友達の桃吾の優しさや、おもいやりが、この物語を温かいものにして、胸にしみる。
 妻の心の葛藤と、娘の悲しみを知りながら逃げる父親が、現実の私たちの姿のよう。

 読了後表紙の絵とタイトルにハタと膝を打った。

 裏表紙にこう書いてあった。
「カーネーション」
  聖母マリアが、処刑されたキリストのために流した涙から咲いたという伝承のある花。
  カーネーションは母の日に贈る、母性の象徴としての花でもある。 
  しかし、花言葉は色によって異なる。
  母への愛、純粋な愛、そして軽蔑、拒絶、失望。

表紙絵は 酒井駒子 画。

 内容の深さ・濃さは読み終わってタイトルの意味と表紙絵にもう一度教えられ、感動を深くさせらた。
 酒井駒子がこの本をじっくりと読み取り組んだことが表紙にあらわれていて、表紙の持つ重要さを再認識させられた。
 酒井駒子。すごい!

 
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4 コメント

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読んでみたい (dingo)
2017-07-16 09:51:33
絵が酒井駒子さんなんですね。
内容は深刻そうですが。昔読んで、ドラマ化もされた「ハッピーバースデー」という児童書を思い出しました。

私はさして兄弟間の差別というような事は感じずに育ちました。まあ弟は末っ子長男なのでかなり愛情が注がれていた気もしますが、私も妹もそんな弟が可愛くて可愛くて仕方なかったので、親が弟を叱ったりすると逆に怒りでいっぱいでした。まあお蔭で、甘々で頼りなさげな40男に育ちましたが(^-^;

が、仲のいい友人が真ん中の生まれで、聞いていると本人としてはかなり差別されたような感じで、いい年になった今でもその感情が拭えず辛そうです。友人は、早くに出産したけれど、兄弟がいると可哀想だから、と1人しか産まず、最大限の愛情を注いで息子さんを育て上げました。

まず私が読んでみて、友達の心の傷を癒してくれそうな内容ならプレゼントしたいなぁ。
dingoさんへ(差別でなく) (ろこ)
2017-07-16 10:47:26
dingoさんへ
 おはようございます。
 書き方がよくなかったですが、内容は、兄弟への差別でなく、親が子どもを愛せないという点です。
 理由などなく、わが子を愛せない親というものがいるのです。
 母親ならみんな母性があるという神話はないという点に焦点を当てた作品です。
 心を痛めている子供、親ごさんにぜひ読んでもらいたいですね。
 厳しい内容ですが、人間というものの多様性の中にある真実に焦点を当てたものです。
そうですか (dingo)
2017-07-17 10:14:55
どっちにしても切ない事ですね。読んでみます!
dingoさんへ(ぜひ) (ろこ)
2017-07-17 10:38:07
dingoさんへ
 一読する価値は十二分にあります。お勧めです。

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