言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

追憶の彼方に

2017年07月16日 | 日記その1
 
書評『カーネーション』⇔参照してください
『カーネーション』を読了後、私の過去の追憶をたどった話を書こうと思う。
 私はこの『カーネーション』の中の母の部分が父に置き換わった心の暗部をもっていた。
 私も幼い頃より、父になじめなかった。
 母が嘆くほどであった。
 外国人のような彫りの深い父。
 金縁の眼鏡越しに私を見る目が冷たかった。

 それはまだ小学校低学年頃のことだった。
 いつも多忙なうえ、子供三人には興味も関心も寄せない父が珍しく相撲を取ろうと言い出した時のことだった。
 すぐ上の姉が最初に父と相撲を取った。
 母も声援をして、座敷がにぎわった。
 運動神経が良い、ガキ大将の姉がわけもなく父に転がされた。
 次は私のバンだ。
 小さな体で父に突進していった。
 家族全員が笑い声をあげながら応援してくれた。
 あっというまに、畳に転がされた。
 みんなが「あ~あ、負けちゃった」と言ってはやし立てた。
 私は真っ赤になってまた父に向かっていった。
 父はまた赤子をひねるように、わけもなく、ぽんと私を畳の上に投げた。
 その次も、その次も、それから何回も、起き上がっては父に突進していった。
 その様子はだんだん異様になってきた。
 仁王様のような大きな父と、小学校へ上がったばかりの幼い女の子との戦いである。
 何回か目の対戦の末に私は畳にしたたか、叩きつけられた。
 体力が尽きた私はもう起き上がることができなかった。

 生まれて初めて私の心の中に「憎しみ」と「悲しみ」という種が宿った。
 「お父さん、なぜ私を畳に何回も叩きつけるの?」
 「お父さん、私のことがそんなに嫌いなの?」
  「お父さん!お父さんは、私のことが嫌いなんだね!」
  声にならない声を心の中で叫びながら私は泣いた。

 しばらくしたお正月のことだった。
 炬燵で宿題をしていた。
 父はテレビを見ていた。
 姉がやってきて、理由もなく宿題をやっていた私の鉛筆を奪った。
 返して、返さないと姉妹喧嘩が始まった。
 なかなか返してくれない姉に我慢がならず、
 一部始終を見てた父に、
 「お父さんに、どっちが正しいか言ってもらおう」と提案した。
 父はそれを聞いても、黙ったままだった。
 冷たい視線を浴びせたまま、テレビを見続けた。
 
 姉は勝ち誇ったように鉛筆を戦勝品として私から奪っていった。

 私はその時、心に決めた。
 「もうこの人のことは信じない」と。
 それ以来、私の心の中から父は消えた。
消した!!!
特大の消しゴムで、
 「父」という存在を心の紙が破けるほどこすってこすって消した!!
 
 
 
 







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4 コメント

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私にも(^^)v (雀(から) )
2017-07-16 16:49:42
どうしようもなく 深く 暗い 心の 傷があります
ーーちゃんはじいちゃんの子供だからこれ以上駄々を捏ねると承知しないぞ!と言う祖父の叱り声を思い出すと自分の全存在を否定したくなるのです(-""-;)祖父の愛情を独り占めしていた私は、ぎりぎりのところで祖父の本音を知ってしまったようでびっくとして打ち消してもトラウマになって折りに触れて浮かび上がるのです😨
雀(から)さんへ(特大の消しゴム進呈) (ろこ)
2017-07-16 17:32:44
雀(から)さんへ
 雀(から)さん!
 特大の良く消える消しゴム、雀(から)さんにあげるね。
 トラウマなんて消しちまえ!
 傷はかさぶたができて、いつかポロリと取れて、なくなるよ。
 もし、今、雀(から)さんが傍にいたなら、ぎゅって抱きしめたい!
Unknown (anne)
2017-07-17 09:45:00
両親に愛され、大事に育てられた「ふつうの家庭」の子だと思うのですが、長女だったせいなのか、私に対しての母の期待度は大きかったように思います。お手伝いするのは当たり前で「ありがとう」などの一言もなく、下手なお手伝いではかえって完璧にすることを要求されましたし、バレエの発表会で失敗すれば、無言で首をひねる姿を何度目撃したことか。
親としては悪気ない姿なのですが、子供心に「失敗できない」「何をしても褒めてもらえない」というプレッシャーや委縮は大きかったです。
親なんてそんなものだと思っていたけれど、今頃になって、あの育て方は無いでしょう!と思ったり。
今、たまに遊びに行く息子が同じような小言を言われているのを見ると、自分の追体験をするようで
耐えられなくなります。もう2年ほど、遊びに行っていません。
たとえ兄弟・姉妹であっても、個人が感じる傷や痛みは、共有できないものがありますね。
anneさんへ(追体験) (ろこ)
2017-07-17 10:36:27
anneさんへ
 いろいろな想いがあるのですね。 
 親だからと言って、大人だからと言っても、未熟な部分はありますからね。
 自分の夢や期待を子供にかけるのは、子供としては重たいです。
 条件のない愛を注ぎたいものですね。100点だからまるで、90点ならバツではなく、まるごと愛す。
 anneさんは、親御さんから受けた良い点、悪い点を参考に子育てができますから、ラッキーですね。
 俗にいう反面教師になりますから。
 完璧な人などいませんから、補い合うことが肝要に思います。
 私も父に対する負の想いは今は解けました。
 生い立ちや、環境、時代の影響を受けて育った父を距離をおいて眺めると、理解できる部分が多いです。
 みんな足りない部分を持っているので、それを満たす器になれるよう生きているのでしょうね。
 いつも純な心の裡を吐露してくださって嬉しく思います。しみじみありがたく嬉しく思います。

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