言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

KING OF HOBBY 趣味の王様

2016年10月16日 | 日記その1

趣味はアマチュア無線。
 と言うと、大体の人が「何それ?」と尋ね、半分の人が「女性なのに珍しい趣味だね」と言う。

 子供の頃読んだ本の中にアマチュア無線の魅力について書かれた記事があり、
 アンテナと無線機を介して世界中の人と話ができるとあった。

 結婚してから、最難関の第一級アマチュア無線技士の国家試験にチャレンジした。
 庭に巨大なタワーを建てるのを反対した夫が、もし最難関の第一級アマチュア無線技士国家試験に受かったら建ててやると約束した。
どうせ、理数科が苦手な私が電子工学ができるわけがないとタカをくくっての約束だ。
 そこで一大決心をして受験することにした。

 高校のときは物理が大嫌いだったのに「好きこそものの上手なれ」ということわざにあるように、
 一日に8時間、家にこもって電子工学の問題集を解きつづけた。
 モールス信号の受信テストもあるので、毎日一分間で100文字の欧文のモールス信号を聞き続けた。
買い物に行く途中、車のナンバーをモールス符号で口の中で言い、街の看板の文字をモールスに直して口で「ツーツート、、トトツート」と言ってみたりした。
 もうほとんど頭の中はアマチュア無線の試験一色になった。

 電子工学の問題では微分積分で解く問題があったので高校の問題集を買って解いた。
 オームの法則も知らない無知な私が一から勉強するので独学はつらかったが、問題集がぼろぼろになるまで解いた。
 理系の夫に教えてもらおうと思ったけれど、「こんな問題も解けないの?」と言われて、大喧嘩になり、独学することにした。
公式がいくつもあって、それを使って解くので面倒、面倒。
 回路図とにらめっこして、計算問題を解くのは慣れたら楽しくなった。
 キルヒホッフの法則を使った回路図は夫と二人で競争して解いたが、面白くてのめりこんだ。
 

 勉強嫌いな私なので、試験勉強は短期決戦。
 一回で落ちたらもう二回目は挑戦せず、アマチュア無線もやらないという背水の陣を引いた。

 計算はチラシの裏に書きまくった。
 あまりの一心不乱ぶりに夫があきれて、最後は鉛筆を削ってくれるまでになった。
 その鉛筆を2ダース使い切ったところで受験の日がきた。

 問題集一冊を7回繰り返して勉強したので、電子工学の試験は思ったほど難しく感じなかった。
 見渡せば、受験生はオッサンばかり。
 女性は私一人だけだった。
 
 いよいよ苦手なモールス信号の受信テスト。スピーカーから流れてくるモールス符号を聞きとって試験用紙に書いていく。
 「あ!簡単!」と思ったとたん、手がブルブル震えて、左手で右手を抑えないと震えがとまらないほど、動揺してしまった。
 大きな字で試験用紙いっぱいになり、もう書く余地がなくなったところで、やめの合図になった。

 「ああ~終わった!」

  やりきった!こんなに勉強したのは生まれて初めての経験。
 本当に「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものだ。

 発表のはがきが我が家のポストに配達された日。
 合否の結果のシールをはがす手がまた震えてはがれない。
 えいやっとはがすと「合格」の二文字があった!

 近所中に回覧板を回したいほどうれしかった。
 
 庭の真ん中に巨大な30メートルの高さの巨大タワーが建立され、家の屋根を覆い尽くす17メートル近いアンアテナが設営された。






 近所のランドマークになったアマチュア無線のアンテナである。
初めて交信したのはオーストラリアの女性だった。
 英語での交信に、膝ががくがく震えた。
 名前と住んでいる場所は聞きとれた。嬉しい!
 今度は自分の番。自己紹介をし、アンテナの種類、無線機の紹介をし、雑談をして終了した。
 汗ビッショリノファーストコンタクトだった。それからアフリカ、南極、ヨーロッパと次々といろいろな国の人と話をし、
 子供のころ読んだ本のとおり、 毎日、世界中の国々と交信し、楽しい日々が過ぎて行ったのである。
 世界各国に友達ができた。

 苦手な電子工学と微積分の数学を克服し、獲得した最難関の国家試験資格である。
 あの数か月の受験勉強の日々で、自信がついた。

 やればできる!
 
 たかだか趣味の世界だけれど、極めようとするには努力がいる。

 頭が悪い私だけれど、夫も少しは見直してくれたかもしれない。
 「僕が鉛筆を削ってやったおかげさ!ありがたいと思え」と恩を売る夫。

 アマチュア無線は「趣味の王様」と誰かが言っていた。
 妻の趣味のために多大な犠牲を払ってくれた夫は「我が家の王様」。
・・ということにしておこう・・。
  
 

 
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3 コメント

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こんばんは! (みいやん)
2016-10-16 22:18:13
アマチュア無線~
懐かしいこの言葉におもわずのコメントです。

ろこさん凄いです。
今息子と話をしていました。
第一級は半端なく難しいと息子は話していました。
すごぉい~なかなか合格しないんだよっ。と言っていました。

息子は六年生の時にアマチュア無線の免許を取りましたが
昔は電話級と電信級と言っていた様な....
三級までしか取っていないそうです。
モールス信号の試験は子供なのですぐ覚えてできた様ですが
私にはさっぱりわからなかったです。
受けていませんが(笑)
小学生なので無線の試験の時は一番(笑)

私と娘は息子に無理くり勧められ鴻巣まで勉強に通いアマチュァ無線の資格を取りました。
一番優しい第四級だと思います。

取りましたと言っても何の興味もなく模擬テストは丸暗記でした(笑)
それで受かり交信するのは息子とだけ(笑)
一度誰かと繋がったのですがなんだかとても怖かったです(笑)
毎年電波代の請求が500円あったような(笑)
そのうち更新の手続きもやらなくなりあやむやになってしまいました。
アンテナはろこさんのような凄いものではなく家の屋根に立てていました。

懐かしい無線の話に今日は息子と盛り上がりました。

流石です。ろこさん。参りました。

息子もまた勉強をやりたくなったと言っています。

ろこさん~今でも交信はやっているのですか?



再度 (みいやん)
2016-10-16 23:36:23
今読み直しましたら~。
無線の試験の時は一番のところは。

試験の日は大人の人に混じって息子が一人小学生だったらしいのですが
一番早く終わったんだそうです。
あれ...自慢話?になっやったのかしらね。
失礼いたしました。

懐かしい話題だったので嬉しかったです。

ありがとうございました。


みいやんさんへ(4アマと3アマ) (ろこ)
2016-10-16 23:37:28
みいやんさんへ
 こんばんは。
 みいやんさんと息子さんもハムなのですね。
 4級と3級、電話級と電信級ですね。
 そうそう2級まではなんとかとれますが、一級は電子工学と、国際法規、モールス信号受信一分間に60字でした。今は簡単になったようですが。
 私は出力1キロワットまで出せる落成検査にも合格しましたので、ハイパワーで全世界と交信していました。
 落成検査に合格するにはご近所に電波障害があるかないかの調査をして、はんこをもらわなければならないので、一級国家試験よりもご近所さんのほうが大変でした。
 私は国内との交信ではなく、海外での英語を使っての交信が目的なのでどうしても、高度の高いタワーとアンテナシステムが良いものが必要でした。
 何十年とアマチュア無線を通じて英語で交信していたので、なまりのつよい英語も難なく聞き取れるというメリットがありました。英語を聞きながらメモを取る癖がついてしまいました。
 

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