言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

桜湯

2017年04月05日 | 日記その1

 お茶会などでは茶席の準備が整うのを待つ間、迎え湯といって客を迎えるために白湯を出したり、桜の花を塩漬けにしたものにお湯を注いだものがだされる。
 この桜の花の塩漬けにお湯をそそいだものは、八重桜をもちいる。
 おめでたい席で用いられることが多いので軸をつけて二つ附いているものが出される。

 その昔、わが家で知り合いのお姉さんがお見合いをした。
 そのとき、もじもじしているお姉さんとお見合い相手にこの櫻の花の塩漬けにお湯をそそいだものをお出ししたのは、子供だった私。
 台所で固唾(かたず)をのんで待機していた家族に
 「ねえ、ねえ、二人はどんなだった?」
 と聞かれて実況中継したのも私だった。
 そのとき、面白おかしく実況中継したバチがよもや自分の身に降りかかるとは思わなかった。

 大人になって付き合っていた彼がいよいよ父に結婚の許しをもらいに来たときだしたのも、この櫻の塩漬けのお茶だった。
 緊張のあまり冬だというのに額に汗をにじませた彼がいよいよ父に「結婚」の二文字をいったとたん、あろうことか父は「ぷふっ!」と櫻のお湯を口から吹き出してしまったのだった。
 「あ~あ、」とそこらじゅうを拭いてまわる私とあわてる父。
 だめなのかと真っ青になった彼。

 一生に一回の大事な決定的瞬間がみごとにだいなにしになってしまった。
結婚を申し込みに来ると知っていたはずなのになぜ父はそのとき、むせたのか謎だ。

 桜の季節になるとこの「櫻の塩漬け湯」を思い出す。

 ・櫻花(さくらばな)ひらけばゆかし湯の中に縁(えにし)寿(ことほ)ぐ春のよき日に(ろこ)

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