言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

団塊の世代の老後

2017年06月18日 | 日記その1


地域の中高年のサークルに出かけるといろいろな人にめぐり合って楽しい。
本来「人間好き」な私はこうした集まりに出かけると様々な人の容貌や、言動や、文や一挙手一投足に眼が行って忙しい。

人が大勢集まると先ず目に一番飛び込んでくるのはやはり容貌が図抜けて美しい人だ。
K子さんは年齢不詳の魅惑の人。
目鼻立ちがはっきりして、ハイソな雰囲気がただよう人だ。
黒のノースリーブに羽織ものをなにげなく肩にかけて嫣然としている。
サンダル靴からでている足の指にはまっ赤なぺディキュアが塗られている。
お住まいは配られた住所録から見ると新しく出来た高級住宅街。
「英語」のレッスンもされているという。

次は60代半ば過ぎの女性。
イブサンローランの渋いワンピースを着て、高級品のオーストリッチのハンドバッグを持っている。
サークルに集まっている人に何か配りだした。
私にもくださるので見ると、チョコレートとクッキー。
何でもフランスに旅行してかえってきたばかりだとおっしゃる。そのお土産のお裾分けらしい。
「お!メルシーブクー」

がらっぱちな私は、こんなハイソな人ばかりの集まりは性(しょう)に合わないと逃げ腰になると、一人の男性に眼が行った。
実は何を隠そう、私はこの男性に一番興味がひかれたのである。
一見、好々爺風の人の良さそうな人だ。もうおじいさんと呼んだ方がよさそうであるが屈強な体格からは風格がにじむ。

この人、先ずその声のよさが図抜けている。
おなかの底から力強いバリトンが響いてくる。
ここは歌の場所でないので歌がうまいかどうかはわからないけれど、オペラでも歌わせたら素晴らしそうだ。
そしてなによりも、文章がすごい。
簡潔で腹の据わった文を書く。
よく聞いてみると鉄鋼関係の労組のトップだったという。
そうか!歴戦の勇士なんだね!と納得。
学歴はないと自分ではおっしゃる。
しかし、老いてなおその向学心は衰えるどころかその火は燃え盛るような勢いだ。
西洋美術史について学び始めたばかりだという。
知りたい、知りたいと思う気持がこの人を燃えさせている。
眼をじっと真正面から見つめて話す。
久しぶりに見た綺麗な瞳と真っ正直な姿勢に打たれた。
最近、こうして相手をまっすぐに見て話す人は少ないことに怒りをおぼえていたので嬉しくなった。
そうそう。人と話すときはこうでなくっちゃね!

団塊の世代が退職する時期を迎えてこれからの老後をいかに過ごすか考えている人がおおいことだろう。
どこのサークルに行ってもこうした団塊世代の男女が多い。

家族のため、生活のために身を粉にして働いてきた人たちが、ほっとその任を解かれて自由になったとき、この労組時代トラックの荷台でアジを飛ばしていたこの男性のように、「学ぶ」喜びを獲得し、燃え盛るような勢いがほとばしるのをみるのは好もしい。

帰りに車の中からこの「労組さん」が歩いてくるのがみえたので、合図すると丁寧に腰をたたんでお辞儀された。
私は車に乗っていたので会釈を返して手を大きく振った。
するとぱっと顔がほころんで笑顔がはじけ、大きく手をふりかえしてくれた。
白いシャツがまぶしかった。

 

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