言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

機関銃で殺されそうになった旅

2017年06月16日 | 旅物語


十数年前の晩秋のことだった。
それは夜行寝台列車でスロバキアからチェコとの国境を抜けようとしていたときの事である。
スロバキアを通過するにはパスポートの他にビザが必要だった。
 乾燥した寝台列車の中でよせばいいのに顔をパックしたのだった。
 まだ乾かないパックにいらいらしているうちに、いつのまにかうとうと寝込んでしまった。
 すると突然、列車が「ガタン」と音を立てて止まり、ドアを激しく叩くものがいた。
 鍵をがちゃがちゃと壊さんばかりにして、騒いでいる。
 激しくドアを叩き続けるので恐る恐る開けると、そこには機関銃を構え、迷彩服を着た兵士と黒服の男が立っていた。
「きゃーっ」
 と叫ぶと迷彩服の機関銃男が私に銃口を向けた。
 そのときの私の顔はパックのまま。
 真っ白な仮面をかぶったような顔だったろう。

 黒服の男が機関銃男を制して下手な英語で叫んだ。
 「パスポートとビザを見せろ!税関だ」
 どうやら列車はチェコとスロバキアの国境で止まったようだった。
 黒服の男がパスポートに判を押すと、機関銃男が口を開いた。
 「タバコ、持っているか?」と。
 私は震えながら「持っていません」
 というと列車の網棚の上をじろっと睨んで、二人はようやく出ていった。

 「ひゃー、怖かった」
 共産圏ってこんなすごいところなんだと驚きながら洗面所の鏡を覗くとそこには世にも恐ろしいものがいた。
 白塗りのパックが半分剥げ、残りの半分は、目と口だけ出た奇怪な顔があった。
 怖かったのは私じゃなくてきっと私をみたあの機関銃男と黒服男だったことだろう。


ジャンル:
きいて!きいて!
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2 コメント

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ごぶさたしてました (ひろ)
2017-06-16 21:05:18
ゆっくりお休みしてかなり元気になりました。
久しぶりにブログを拝見と思ったら
恐ろしいタイトルにびっくり!
ご無事で良かったです(笑)
夜汽車でもパック忘れないろこさん すごい!
ひろさんへ(お帰りなさい) (ろこ)
2017-06-16 21:23:16
ひろさんへ
 たっぷりと休養がとれましたか?
 大きな会を催すとその準備や責任感や緊張で心身ともに疲れますからね。
 ゆっくりと復活なさってくださいませ。
 恐ろしいタイトルのあと、結末が可笑しくて笑っていただけたでしょうか?
 女は夜汽車の中でもパックですよ!
 とにかく乾燥して喉が痛いほどでしたからね。
 きっと機関銃構えながら怖いやら、なんだこいつ?とおもったでしょうね。
 大笑いです。
 ひろさん、大いに笑ってリラックスしてください。
 

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