言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

『センス・オブ・ワンダー』

2016年10月18日 | 書評
センス・オブ・ワンダー
レイチェル・L. カーソン
新潮社

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 最近永久歯が生えてこないという子どもがふえているという。
 環境汚染が一因とか。
 1962年、レイチェル・カーソンは『沈黙の春』を著し、その中で化学物質による環境汚染の重大性について、警告を発し世界中に大きな反響を引き起こした。この本はベストセラーとして世界中に問題を提起した。しかし、44年経った今猶、環境汚染と破壊は繰り返されている。

 さて、今回紹介する本は同じ著者によるもので、詩情あふれる美しい作品となっている。
 著者は病魔と闘いながら本書を最後のメッセージとして我々に遺していった。
 この本には地球の美しさ、人間サイズの尺度の枠から解き放たれた自然への畏敬の気持ちが満ち溢れていて読者に深い感動を与える。

 ある秋の嵐の夜、著者は一歳八ヶ月の甥を毛布に包んで雨の中、海岸へ降りて行った。
 とどろく波の音と波しぶきの中、心の底からわきあがる喜びに満たされた瞬間、不思議なことに幼い甥も同時に笑い声をあげ大自然の力に包まれた感動を分かち合ったのだった。
 これを機に著者は穏やかな日も雨の日も、浜辺や森を幼い甥と共に探検し、散策し、妖精の国を訪れたような地衣類の神秘的美しさを楽しみ、満月が海いちめん銀色の炎に包まれながら沈んでいく様子を心に刻んでいくのだった。
子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激に満ち溢れています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄み切った洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直観力をにぶらせ、あるときは失ってしまいます。
 もしもわたしたちが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力を持っているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見張る感性」を授けて欲しいと頼むでしょう

センス・オブ・ワンダーをいつまでも新鮮に保つためには、感激、神秘などを子どもと一緒に再発見し、感動を分かちあってくれる大人がすくなくともひとり、そばにいる必要があります。
 子どもたちが出会う事実の一つ一つが、やがて知識や知恵を生み出す種子だとしたら、情緒や感受性はこの種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです

「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でないと言う著者のことばは、知識の詰め込みに腐心するあまり、感性を豊かにすることを忘れた者たちの目を覚まさせてくれる。 

見渡せば都会にも田舎にも春は訪れ、鳥は歌い、風は季節の移ろいを教えてくれる。
私たちは、身近な自然をみているようでみていないことが多い。
夜明けや黄昏の美しさ、流れる雲、またたく星、雨粒の長い水の旅路。
そんな身近な自然の美しさに感動し畏敬の気持ちを抱くことの喜びを著者は静かに深い詩情で綴っている。
月を仰ぎ、花に心を寄せるとき、人は心が解き放たれる。
心の中に清らかな水が湧き出てくるような美しい本書は読者を深い感動に包んでくれる。

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