言葉の泉

本と徒然

第百四十六回芥川賞受賞作品『共喰い』

2012-02-15 | 書評
文藝春秋 2012年 03月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
文藝春秋


 昨日は文藝春秋に載っている第百四十六回 芥川賞作品を読了した。そう。テレビで受賞会見をやったとき、「しかたがないから受けておいてやる」と名言、迷言を吐いた田中慎弥の受賞作である。
 『共喰い』
 17歳の主人公篠垣遠馬は父と義母の性行為を盗み見る。父親の尋常でない性行為、殴りながらでないと快感を得ないという性行為に反発しながらも、自分も父の性癖を受け継いでいるのではないかという思いのなか、一つ年上の女友達と日々性交を続ける。
 実母、義母、女友達、アパートの女、父と自分が織りなす性行為の中に少年の混沌が重く積み重なっていく。
 環境描写が実に丁寧。特に川がキーワードになっている。父親は川を「女の割れ目」だという。少年は汚水まみれのどぶ川についてこう吐露する。

 「なんが割れ目か。川なんかどうでもええ。こういうところで生きとるうちは何やっても駄目やけ。どんだけ頑張って生きとっても、最終的にはなんもかんも川に吸い取られる気ィする」

 と父と息子の考え方の違い、少年の混沌と懊悩を川になぞられ、うなぎ釣りにデフォルメしているところが白眉。
 そして結末も川とかかわりながら終わる。
 構成の緻密さ、丁寧な環境描写は光る。少年の欲望まみれの日々と父親と女たちの欲情の暗さは澱みに澱んだ川にも似て、プスプスとガスを伴ったへどろのような熱を感じる作品だった。
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