言葉の泉

一粒の種から言の葉が茂ることを願って。

小三治の芸

2017年07月17日 | 日記その1


卵かけご飯はじつにおいしい
この生卵ごはんの一番おいしい食べ方の薀蓄(うんちく)をさせたら柳家小三冶をおいていない。

この生卵ごはんの食べ方を寄席で枕に延々と語るのだから小三冶って変わり者。
というよりか話芸もここまでくればたいしたものだ。
日常の食事を寄席話まで昇華させるのだから「生卵ごはん」は消化がよいわけだ・・・??ひょえ?

と枕が長すぎると読者からクレームが来そうだ。
 本論に入ろう。
 この柳家小三治の独演会に行った時の話をしようと思う。

 柳家小三冶の独演会に行ってまいりました。
 のっけから客はきつい皮肉をひとひねりやられました。
 っというのも名古屋の客はいけねえ~!
 開演時間は6時半だというのに遅れてくる客が一杯!

 開演時間が遅らされた。いわゆる「名古屋時間」時間を守らない客。
 小三冶さんはそれを「枕」にして、皮肉もたっぷり。たっぷり皮肉をきかせたあげく最後の言葉が効いた!
 「そういう名古屋時間の客って「好きよ!」」とやらかしてくれる小三冶さん。

 前座は三三(さんざ)。
 前にオカミサンの本を読んでいたので「ああ!あの三三」かあ!とひとりにんまりしながら前座の話をきいたのでありました。
 オカミサンの本によれば、この三三は大の寝坊。
 小心者。この小心者の三三はある日、結婚をしたい人がいると言い出したそうな。それも年上。しかも、おなかにはもう赤ちゃんが。

 オカミサンは叫ぶ!
 「まったく、まったく。・・芸をまねろってエの!手の早いところだけそっくり師匠似って、どういうのヨ!」
 これをひょいとおもいだしちまった私。
 もうまともに三三の話をきけなくなってしまったのでありました。


 さて、さて、前座が終わるといよいよ真打登場!
 待ってました!小三冶!

 舞台中央には濃紺の台。その上には真っ白なふかふかの座布団。
 お茶がふたつきの湯のみ茶碗に出されている。

 そこへ出囃子「二上がりカッコ」に乗って小三冶さん登場。
 黒紋付の羽織に着物。
 お!と息を呑んだのは真っ黒の紋付の羽織の紐!

 おおおおお!なんと赤い紐。

 粋だねえ!黒紋付の着物と羽織の真ん中に一点赤をおくなんざあ、洒落ているじゃあござんせんか!

 それも赤が赤でもワイン系の赤。
 漆黒の着物に赤いアクセントがぴりりと効いている。

 この羽織を一席話している間に、もう、うっとりするようなしぐさで脱ぐのだからたまらない。
 赤い紐をするりと解いて一度両手で前に紐をそろえる。
 話をしながらこれを何食わぬ顔でしかも、粋なしぐさでやるのだ。
 そしてついっと袖口を両手でもって羽織を肩口から後ろへとするりと脱ぐのだ。

 お茶椀のふたをとってお茶をぐびりと飲む。またふたをして座布団の脇におく。

 廓(くるわ)話が前半。ちょっと話が長かった。

 後半は休憩が入って古典落語「小言こうべい(小言念仏)」

 もうこれは至芸と言って良いほど。

 長屋の大家は「小言」ばかりのうるさい親父。
 小言こうべい。このこうべいさんが長屋に一軒だけあいている部屋を貸すことになった。
 貸してくれとやって来た客の品定めの問答が抱腹絶倒。

 宗派をもじったり、長唄がでてきたり、おばあさんになったり、歌舞伎の声色がでてきたり、女になったり、いなせなあんちゃんになったり、仕立て屋になったり変幻自在。八面六臂の話芸の極みここにあり。

 江戸前のいなせな言葉が小気味よく、年齢、職業、性別ごとに言葉の使い方、勢い、そんなものを使い分け、演じわけて見事。
 さすがに当代きっての噺家。

 間が絶妙。客を引き寄せる技に長けている。
 「枕」が長いので有名な小三冶だけれど、よ~く注意してみると、この「枕」の反応で客の呼吸を計っているようだ。
  枕を話している間に客を一身に自分に引き寄せ手繰り寄せ、雰囲気をつかんでいる。

 コンサートでも落語でもやはりライブは命。
 CDなどで聞くすべもあるけれど、ライブ、生は格別なものがある。
 それは客と演じ手とが双方でかもし出すもの。
 それが芸をひきだすのだと思う。

 ひさしぶりに「粋」な話芸というものを堪能した夜だった。
 甘露甘露。







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8 コメント

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おはようございます (tempo1078)
2017-07-17 03:58:56
寄席もそうでしょうが、
コンサートもLIVEには
CDなどでは味わえない
雰囲気、迫力・・・・

これは
何物にも替え難い。
いいなあ😉 (雀(から) )
2017-07-17 06:15:22
落語大好きです(´∇`) 昔は よく nhk で 落語の 番組 とか 劇場中継とか ありましたが 今はほとんど 見られません 残念です😥
ろこさんの 寄席中継は テレビより 奥深く 素敵でした ありがとうございます🙏 座布団10枚🙋
私も聞いた気分です・・・ (ひろ)
2017-07-17 07:16:38
ブログから独演会の様子が・・・もう私もご一緒した気分に。
落語大好きです。
もう無くなってしまいましたが含笑寺落語会の
会員になって毎月出かけていました。
また 落語会へ行きたくなりました。
tempo1078さんへ(ライブ) (ろこ)
2017-07-17 09:02:34
tempo1078さんへ
 おはようございます。
 仰せの通り。
 会場に行って、演奏者、演者の生の音、生の声、お姿に接してこそ味わえるものがありますね。
 会場の雰囲気も格別。
雀(から)さんへ(寄席) (ろこ)
2017-07-17 09:08:07
雀(から)さんへ
 座布団10枚もいただいて、笑点にでたような(笑)
 そうそう。NHKでよくやってましたね。
 新内までやっていたことがありました。
 落語好きの親の影響で、よく寄席に行ったものです。
 志ん朝さんが好きでした。
 ふかふかのお座布団をありがとうございました。
ひろさんへ(通) (ろこ)
2017-07-17 09:14:46
ひろさんへ
 お!ひろさんは落語がお好き!
 含笑寺落語会の会員だったのですか!それはもう通ですね。
 私の塾の生徒さんが、大須の芸人さんになった時は驚きました。
 人前でしゃべることが苦手な子だったので。
 私は東京出身なので末広亭に通ったものです。
 寄席の雰囲気は独特ですね。
 私も落語会に行ってみたいです。
 ひろさんの意外な面を発見!嬉しくなりました。
 ありがとう。
 
Unknown (藍)
2017-07-17 13:35:40
ろこさんの中継、
臨床感たっぷりで、引きこまれました。

8つ上の兄が 志ん生が大好きで
ラジオでよく聴いていたのを
おもいだしちまいました。
    ↑
(ここのとこ、無断借用お許して下さいませ)
藍さんへ(落語好き) (ろこ)
2017-07-17 15:25:46
藍さんへ
 お兄様が落語がお好きなのですね。
 そうそう。家族の誰かの影響で好きになったり、聞くようになることが多いですね。
 わが家も、父が落語に歌舞伎、小唄、新内、都都逸が好きときて、自然に子供の私もすきになっちまったというわけです。
 あ、浪曲、浄瑠璃も聞いていました。長唄も。
 柳橋の芸者さんが、車で父を送ってきて大騒ぎ。
 変な家でした。
 環境っていろいろな面で影響を与えますね。

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