<ことしの春ごろのことになりますが、今頃のアップです>
今年の桜は長いこと咲いていたように思う。が、曇りや雨の日が多く、きれいな青空に桜が映えたのは
2日くらいしかなかった。
その女の人は良くシート付きのシルバーカーを押してスーパーマーケットに買い物に行っていた。
お名前も知らない人だけれど、お隣の号棟に住み、小雨の時も腰を前方に傾げてシルバーカーを押していた。
傘がさせないことを気の毒に思ったこともあった。
寒い冬の間もゆっくりゆっくりではあったが、日々の買い物をこなし、ああ、お元気なのだと思っていた。
その後しばらくは出会わなかったし、忘れるともなく記憶から薄れていた。
そんな花冷えの夜、隣の号棟に救急車が来た。ストレッチャーを押した隊員は、知り合いのSさんのお
宅?に入ってゆくではないか。けれど、それはSさん宅ではなく、お隣のドアだった。
翌日になって、一人暮らしの年配の女性が亡くなったことを知った。
新聞が何日も溜り、生活音がしていなかったそうだ。
そして、その人は、私がよく外で見かけていたあのご婦人であることが分かった。
「ロングスカートをはいて、シルバーカーを押していた~~」と話すと、
「ああ、あの人ね」と他のみんなが知っているのだった。
お気の毒に・・・。と思うかもしれない。でも、自分に置き換えてみたら、そうは思われたくないと思った。
その人は、ゆっくりゆっくりではあったが、一人で買い物をし、食事を作り、日々の暮らしを営んでいたのだ。
たまたま健康上の理由で、早く逝かれてしまったが、きっと日々を充実させていたに違いない。
買い物に行くことは、その人の元気な意志だった。
私たちは、声に出さなくとも、ひそかに声援を送り、見守り続け、本当に必要なときには、
お手伝いも「遠慮なくどうぞ」ということができる相互システムが欲しい。
「その人は、決して気の毒な人などではない。きっと、彼女は自らの人生を全うした人だよね」
そう友人と話した。
植物博士、ルピナスさんならではの季節の花々、楽しませて頂いています。
ご近所の、「ご自分の人生を全うされた方」のお話、しみじみと心に響きました~。
軍事郵便のお話も感動的でした。どれも、ルピナスさんご自身の人生観を垣間見る素敵なエッセイですね。
このブログの生き物を拝見していると、それぞれの季節に美しさがあるな~、としみじみ思います。
コメントありがとうございます。
マンネリに漂うことの多い、我がブログですが、大いに贔屓目に見てくださり、有難き限りです。
チヒロさんのお心が、あたたかく広い許容量をお持ちの所以ですね!
日常でふと目にしたことども、せめて大切に心にとめなくてはと思います。
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