いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

驚くべき日本語  ロジャー・パルバース 著  早川敦子 訳

2014年07月04日 | その他
各地で集中豪雨に見舞われています。首都圏でも今年の梅雨は熱帯のスコールのような降り方で持っていた傘がほとんど役に立たないほどずぶ濡れになることが続けてありました。今年の梅雨は長いという予報がでているようですが・・・。

世間では安倍政権の集団的自衛権の行使容認の閣議決定で物議を醸し出しているこの頃です。何だか憲法改正なくして解釈だけが変わるというのは腑に落ちません。ひとつの政権が解釈を変えてもよいことになってしまったら、今後大変なことになってしまいそうな気がするからです。ところで、これって、日本語にも問題があるのでしょうか?英語だって構成は簡単な文章なのに解釈の難しい文章はよくお目にかかるように思いますが「日本語の曖昧さはとても難しい」と日本語を母語としない友人たちに何度も言われたことがあります。

安倍政権が大きなスローガンにしている経済政策の方は、今年4月からの消費税増税の一方、法人税の減税が検討されています。政府の狙いは法人税を下げて企業の設備投資や外国企業の誘致による経済の活性化のようですが・・・。少子高齢化の日本では、これからは外国人の労働者が増えることが予想されます。そうなれば、いくら、日本人の日本語力が下がっても、英語を使える日本人が増えても、当然ながら日本で暮らす外国人が増えれば日本語を使う人の人口は増加することになります。

それとも、ロボットの導入が進んで高齢化社会に対応できるようになるのでしょうか?それにしても、
ロボットが高齢者の日本語を理解し、必要に応じて返事をしなくてはなりません。これからの社会が目指しているもの、私たちが高齢者になった時、介護ロボットとしての役割を果たして欲しいものは鉄腕アトムのような人間の感情までもある程度理解できるものなのです。

そんなロボットを作成する人々にとって、言語、つまり日本人が使う日本語の仕組みを正確に解析していかなければなりません。問題は、言語の解析から人間の感情や感覚にどれだけ迫ることができるかです。それは、大人になってから外国語を効率よく学ぼうとする時、文法を学ぶことと似ているような気がします。

そんなことを思っている時、偶然出会ったのが、「驚くべき日本語」でした。日本語を母語としないパルパース氏が英語などの他の言語と日本語の違いや特徴などをとてもわかりやすく解説されていて、たいへん興味深く読むことが出来ました。

というわけで、前置きが長くなりましたが、今回は、ロジャー・パルバース氏の「驚くべき日本語」です。前回の記事の「日本語が亡びるとき」の英語圏で長年暮らされた水村氏とは対照的に、日本語を母語とせず20歳過ぎから長年日本で生活されていらしたパルバース氏の日本語や日本に対する見解が書かれています

20歳を過ぎて新しい言語を習得することの難しさは嫌というほど感じてきた私ですが、考えようによっては、聞いたり話したりするだけなら、最近はスピードラーニングなどの教材の普及でかなりのところまで到達することができる人も多いと聞いています。

日本語も同様、聞いたり話したりするだけなら、もうかなり以前からそれほど難しくない言語だということを、外国籍の友人たちが言うのを聞いていました。但し、漢字文化圏以外の国の人々にとって、大人になってから新聞を読んだり、日本語の記録文や手紙を書いたりするための漢字習得はかなりの根性が必要のようです。パルバース氏はまず日本語が他の言語に比べて比較的簡単な部分に着目することで、日本語が如何にわかりやすい言語であるかを説明しています。

ここでは日本語の特徴について細かく書かれています。そのひとつひとつについては多少反論したい部分もあるのですが、日本語の魅力がとてもわかりやすく丁寧に説明されています。私たちが何気なく使っている擬態語つまりオノマトペの世界・・・日本人なら当たり前すぎて見過ごしてしまいそうな驚きは逆に新鮮さを感じました。母語でないから感じる音の世界の不思議さなのでしょうか?

最後の吉本ばななさんのエピソードやパルバース氏の家の中の会話のエピソードには思わず苦笑しました。私も海外生活をしていた時はパルパース氏と同じような体験をしたからです。

それは「郷に入っては郷に従え」と言うところでしょうか。我が家の会話も長い間、二つの言語がいつもごちゃ混ぜ状態でした。最近は、ずっと日本で生活しているので、英語の文章の方は何かを強調したい時にしか使わなくなりましたが…。

30年前に比べたら、日本語を話す外国人は大変多くなったと感じます。もちろん日本語もすいぶん変化したように思います。最近は来日した海外の友人に私が「これは英語(中国語)でなんて言うの?」と尋ねるのではなく「日本語でなんて言うの?」と聞かれる方が多くなりました。

この本を読むと日本語は健在かな?と思います。でも、何だか宮沢賢治をもう一度本棚から引っ張り出して読んでみたくなりました。


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