Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

C.ロセッティ:もう一度の春

2015-11-08 00:05:57 | 音楽
作曲家木下牧子氏の合唱曲集『C. ロセッティの4つの歌』からNO.4「もう一度の春」を弾いていると、いつもその詩の透明な哀しさとその哀しさを突き抜けた向こう側にある静まり返った朗らかさに胸打たれる。
楽譜の最後の2頁にある静かに命を燃やす炎のような朗らかさとは対照的にそれまで連ねられた言葉の数々に込められた悲しみの深さに苦しみを、そして奏でられる音の澄んだ長調の響きがその悲しさをより深めている気がする。
”もういちど、春に会えたら/If I might see another Spring”と4回繰り返されるこの言葉に込められた思いの深さに思い当たる時、愕然とするとともに、最後の節に彼女の希望を見いだす気もする。
     
クリスティーナ・ジョージナ・ロセッティ(Christina Georgina Rossetti, 1830年12月5日 - 1894年12月29日)は、19世紀 ヴィクトリア朝時代の英国を代表する女性詩人。画家・詩人ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの妹で兄をはじめとするラファエル前派の画家たちの作品のモデルにもなった。1874年に大病を患い、隠遁に近い生活をしていたという。


『もう一度の春』              Another Spring
クリスティナ・ロセッティ(岡田忠軒 訳詞)   Christina Georgina Rossetti       

もういちど、春に会えたら          If I might see another Spring
夏の花を植えて、待ったりはしない      I'd not plant summer flowers and wait:
わたしはすぐに、クローカスを咲かす     I'd have my crocuses at once,        
葉のない、ピンクのメジリオン        My leafless pink mezereons,            
冷たい葉脈のスノードロップ、もっとすてきな My chill-veined snowdrops, choicer yet
白か空いろヴァイオレット          My white or azure violet,
葉にくるまったプリムローズ、なんでも、   Leaf-nested primrose; anything
おくれず、すぐに咲くものを         To blow at once, not late.             

もういちど、春に会えたら          If I might see another Spring
私は昼の小鳥を聞こう            I'd listen to the daylight birds
巣づくり、つがい、さえずる小鳥を      That build their nests and pair and sing,
相手のいない、ナイチンゲールを待たず    Nor wait for mateless nightingale;
元気な牛の啼声を聞こう           I'd listen to the lusty herds,
まっ白な子供を連れた雌羊も、        The ewes with lambs as white as snow,
霰の中に、吹く風のすべてに         I'd find out music in the hail
歌の調べを見出そう             And all the winds that blow.

もしも、もういちど、春に会えたら―     If I might see another Spring--
ああ、わたしの過去を突き刺す言葉      Oh stinging comment on my past
過去がみな、「もしも」で終わるなんて―   That all my past results in 'if'--
もしか、もういちど、春に会えたら      If I might see another Spring
今日という、その日を笑おう、束の間の今日を I'd laugh to-day, to-day is brief;
何も、もう、待ったりせずに、        I would not wait for anything:
短い命の、今日を生きよう          I'd use to-day that cannot last,
今日こそ楽しみ、そして歌おう        Be glad to-day and sing.

ロセッティについて調べている中で、彼女の詩は金子みすゞも愛読していたとのことを知った。そしてその金子みすゞを「若き童謡詩人の中の巨星」と賞賛した西条八十の訳による『風』という詩を見つけ、よく知られているこの詩がロセッティの作品だということを、初めて知ることができた。(遅っ
 

『風』                  The Wind 
クリスティナ・ロセッティ(西条八十訳)

誰が風を見たでしょう?          Who has seen the wind? 
ぼくもあなたも見やしない、        Neither I nor you;
けれど木の葉をふるわせて         But When the leaves hang trembling
風は通りぬけてゆく。           The wind is passing thro'.

誰が風を見たでしょう?          Who has seen the wind?
ぼくもあなたも見やしない、        Neither you nor I;
けれど樹立ちが頭をさげて         But when the trees bow down their heads 
風は通りすぎてゆく。           The wind is passing by.
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« el Día de los Muertos/万霊節・死者の日 | トップ | 旅する一葉 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿