上の写真の字幕「もっとも大切なのは」・・・この後、あなたなら、どう続けますか?
写真に写るのは、2007年11月に、17人のチームを組んで原付バイクで台湾一周13日間の旅を成し遂げた、おじいちゃん・おばあちゃんたちです。
平均年齢なんと81歳、合計年齢1500歳以上というオールド・バイカー。
彼らの13日間の旅の様子は、『不老騎士』というドキュメンタリーフィルムとして記録されています。
いくらバイク天国の台湾でも、80歳にもなるお年寄りが、自分で原付を運転して九州ほどもある大きさの台湾を一周するなんて、前代未聞でした。
『不老騎士』に登場する17人のお年寄りたちが伝えてくれるのは、「大切なのは、幾つになっても夢を諦めないこと、夢を持ち続けること」という強いメッセージです。
台湾では、「台湾一周」が一種のステータスのようになっていて、「いつかはチャレンジしたい」という憧れを持っている人は少なくありません。
最近では、夏休みなどを利用した、自転車やバイク、ローカル列車などによる台湾一周の旅が若者の間で流行していますが、仕事や家庭を持つ年齢になった人にはそう簡単な事ではありませんし、リタイア後はもう体力的に難しくなってしまいます。
そんな、台湾一周の夢を持つお年寄りたちの願いを実現しようと企画されたのが、「不老騎士」、おじいちゃん・おばあちゃんのバイクツアーでした。
バイクツアーを企画・実行した弘道老人福利基金会(台中市)の担当者
「無謀」と言われたこの企画が生まれたきっかけは、2006年に視察で日本を訪れた事に始まるんだそうです。
老人福祉を専門とする同基金会の職員らは、日本で「東京から大阪までの徒歩旅行」に参加するお年寄りたちの生き生きした姿に、衝撃を受けたと言います。
台湾では、積極的に外に出て日々を楽しんでいるお年寄りを目にする事がとても多いように感じるのですが、「遠いところに行く」という発想はあまりないんだとか。
基金会が日本視察でまとめた資料
聞き取り調査した日本のお年寄りたちの夢が紹介されている
(直木賞受賞、シルバー世代の台日合作映画作製など色々)
日本に触発され立ち上げた企画「不老騎士」でしたが、17人全員が何かしらの持病を抱えていましたし、11月とは言え地域によってはまだまだ暑い台湾で、お年寄りたちが、険しい山道や交通量の多い大通りを連日自分で運転するのは大変なこと。
家族に反対されて大喧嘩になった人もいましたし、体力がもたず途中でリタイアする人も出ました。
それでも、フィルム『不老騎士』からは、夢を実現させようと奮闘する、平均年齢81歳の想いやパワーがガンガン伝わってきます。
バイクツアーに同行し『不老騎士』を撮った華天灝・監督
今年29歳という超若手
「学生時代、映画を撮るという夢を毎日語り合ったけれど、夢は若者だけのものだと思っていた」と話す華・監督。
不老騎士の撮影を通して、幾つになっても、何をしていても、夢を持ち続け、諦めない事の大切さを教わったと言います。
バイクの正面に亡くなったおばあちゃんの遺影を掲げる人、道中、80年の人生で初めてのゲームセンターに立ち寄り夢中になる人、ツアー中に90歳の誕生日を迎えた人、80数歳にしてなお「次の夢」を語る人。
雨の中レインコートを羽織って一心に運転したり、初めて訪れる東部の深い緑の中で暴走族の真似事をしてみたり、13日間の冒険全てが、かけがえのない想い出とチャレンジに満ちていたようです。
また、ほとんど台湾語しか話せないおじいちゃんや、戦後中国大陸から渡ってきたと思われる強いアクセントの中国語を話すおじいちゃんたちが、ケンカもしながら、助け合って笑い合いながら目標を成し遂げていく様子には、台湾の姿が凝縮されているようにも思います。
日本がきっかけとなって実現した、平均年齢81歳の台湾一周の旅は大成功を収め、この企画はその後もずっと続けられています。
「夢を追い続けて、人生を楽しもう」、そんな勇気がわいてくる『不老騎士』。
チャンスがあったら、日本の皆さんにもぜひ見ていただきたい作品です。(華)
『不老騎士』紹介ページ(中国語のみ)
『不老騎士』予告片(YouTube)
年齢以上の速度でグランド・ライダー。
勇気を与えてくれます、フェリーで日本へも来て欲しいところ。
私も80歳になっても風と友達、ローリング・ライダーで在りたい。
「転石、苔を生ぜず」
ではまた