４８ 大人の恋

　　　　　　　　大人の恋

　　　　　　　　　　　　　　　古木　怜
　　　　ひょんなことから　知り合って

　　　　いつか二人は　深い仲

　　　　愛はなにかを　知り尽くす

　　　　男おんなが　愛し合う

　　　　大人の恋は　なぜか悲しい


　　　　どこに住むかも　知らぬ人

　　　　次の逢瀬も　分からない

　　　　命絶えよと　縋りつく　　

　　　　あなた冷たく　背を向ける　　　　

　　　　大人の恋は　なぜか寂しい


　　　　これが最後の　恋になる

　　　　いつも逢うたび　そう思う

　　　　共に暮らせる　夢はない

　　　　今宵限りと　抱かれてる

　　　　大人の恋は　なぜか悲しい

４７ 雑草

　　　　　　　雑　草
　
　　　　　　　　　　　　　古木　怜
　　　　若者だつたある夏の日

　　　　埃っぽい道で雑草と出会った

　　　　烈しい草いきれの中で

　　　　逞しく生長していた


　　　　その時くぐもる心に

　　　　雑草の声を聞いた気がした

　　　　利発になれ愚鈍で終わるな

　　　　もっと真剣になれ


　　　　あれから幾年になるだろう　

　　　　そうして生きた自負はあるが

　　　　真っ赤な夕陽を見るたびに

　　　　己生いの雑草を思い出す

４６ 昭和生まれの演歌歌手

　　　　　昭和生まれの演歌歌手

　　　　　　　　　　　　　　古木　怜
　　　　人の心に　沁みる歌

　　　　唄いたかった　一度でも

　　　　演歌ブームは　彼方に去って

　　　　私一人が　売れ残る

　　　　昭和生まれの　演歌歌手


　　　　きっと迎えに　来るからね　　

　　　　縋るあの娘を　諭したが

　　　　巡り会えたか　優しい人に

　　　　思いだすたび　辛くなる

　　　　昭和生まれの　演歌歌手


　　　　燃える夕陽に　背を向けて

　　　　今日も行脚の　流れ旅

　　　　売れずじまいの　持ち歌一つ

　　　　後生大事に　抱きしめて

　　　　昭和生まれの　演歌歌手