あいおらいと

主に、お友達への連絡用でたまに、日々を綴ったり…していたはずが、いつのまにやら作品置き場になりつつあります。

おたんじょうびおめでとう、なもうそう。

2016-10-12 00:00:00 | もうそうはきだし中
そういうわけで、今年もお誕生日おめでとうな日なのです。



「土曜日は空けておいて。」
カレンダーで確認すると、彼女の誕生日の翌日は土曜日だったから、一日遅れの誕生日デートをしようと、何よりも先に日程の確保を行う。それから。
「それと。リクエスト、ある?」
誕生日プレゼントの希望を聞いてみた。
「あなたが選んでくれるなら、何でもいい…って言うと困るのよね、やっぱり。」
「うん。具体的な希望を教えてもらえると助かる。」
当日まで内緒にした方がいいのかもしれないけれど、付き合いが長くなるとオーソドックスなプレゼントはほぼ贈り尽くしているから、最近ではお互い、事前に希望を聞きあうようにしている。
「お花とか。最近もらってないもの。」
言われてみれば、最近彼女へ花を贈る機会がなかったな、と気づく。花の種類は僕が決めて、学校帰りに渡すことにした。
相変わらず仲いいのね、となじみの花屋さんにからかわれつつ、花の手配をして、ほっと一息ついたところで街の中を散策してみる。
花は綺麗で喜んでもらえるけれど、後には残らない。
カメラで撮ってデータを残すことはできるけれど、残るのは姿形のデータのみで、匂いとか触れた感じとか、その時の気持ちとか、データにできないものは残らない。うっかりデータを消去してしまえば、姿形すらも失われてしまうのだけど。
ほんの少しだけ、僕はそれが不満だったりする。
ただのエゴだってわかっているけれど、彼女が僕のものだって主張するためにも、彼女のそばにはいつも、僕が贈った物があってほしいなんて願ってしまっているから。
そんなことを考えていたら、いつの間にか駅ビルのそばまで来ていた。あれこれ考えるより、実際に見て回った方が答えがみつかる気がして、駅ビルの中にあるショップをのぞいてみる。
彼女の好きそうなものはいくつもあったけれど、どれも決め手に欠けて脳内リストにプレゼント候補として記録しながら歩いていると、前方に挙動不審な少年を発見した。
物陰から様子を伺っているかと思えば、その場をぐるぐると回ってみたり。一体何をやっているんだろう、と彼の視線をたどってみれば、そこにはアクセサリーショップがあった。入ろうか否か、迷っているのだろう。
あの年頃の少年には、あのかわいらしい店構えはそれだけで脅威を覚えるものだ。躊躇するのも無理はない。僕や友人たちにもそんな時期があったし、大人と呼ばれる年になった今でも少しだけ勇気がいる。
でも、ここで引き返したら本当に欲しい物は手に入らない。一度小さく深呼吸して、敢えて彼の目の前で店の中へ入ってみる。恥ずかしがっていると逆に目立ってしまうから、そう悟られないように堂々とした風を装って。
店の中は、入り口から見えていた以上にたくさんの色に溢れていた。その色を眺めていると、ほんの少しだけ懐かしい気持ちになる。
恥ずかしいのを我慢して、彼女のことだけ考えて一生懸命プレゼントを選んだ僕に、彼女はとびきりの笑顔をくれたのだ。
あの笑顔が欲しくて、折りあるごとに頭を悩ませてしまう。あの笑顔にはそれだけの価値があるから。
そんなことを考えながら展示品を眺めていると、意を決したらしい少年がおそるおそる店の中へと入ってきて、おっかなびっくりといった様子で品定めを始めた。
大人になった僕には、この店の商品は少し幼すぎる。
良い物がみつかるといいね。
見ず知らずの彼に、心の中でそっとエールを送ってその店を後にする。
さてどうしようか、と再び駅ビル内を散策していると、不意に色とりどりの花が目に入った。
花、といっても生花ではなく、布でできた花や葉っぱが、店の一画に丁寧に並べられていた。
店の看板を見れば、そこは和布を使った小物屋だ。そういえば最近、こういうものにはまっていたな、と思ったから参考までに覗いてみれば、先ほど注文したばかりの花にそっくりの花と目が合った。
細かく切った布を貼り合わせて作ったと思しきそれを眺めているうちに、ふと気づいてしまった。
花が欲しいとは言われたけれど、生花という指定はなかったな、と。

「誕生日、おめでとう。」
そう言って渡された花は、私の誕生日の花。
調べたのか、それとも花屋さんが気をきかせてくれたのか。どっちにしろ、大好きな人にこんな綺麗な花を贈られて嬉しいばかりだ。
誕生日の夜は家族で食事に行くから、一緒に過ごせるのは家に帰りつくまで。
「お願いがあるんだけど、いいかな?」
明日デートの約束をしていても、長いようで短い帰路が終わってしまうのが寂しいと思っていると、彼が神妙な顔で切り出す。
「何?」
「ちょっとだけ、じっとしてて。」
言うや否や、彼の手がこめかみをかすめて、耳の上でぱちりと小さくはじける音がした。
「明日はこれを着けてきてくれると嬉しい。」
言われて手を伸ばせば、そこに何か着けられたのはわかった。それがなんなのかを確認しないまま無理に外して髪を痛めたくないから、部屋に戻ってから鏡を見て確認する。
そこにあったのは柔らかな色を纏った、一輪の布花。
彼が手ずから着けてくれた小さな髪留めは、今日もらった花に似ていて、とてもかわいい。
花は枯れたら残らないから、わざわざこうして形に残してくれたのだろう。
そして、最近私が和の小物にはまっていることも、気づいていてくれたらしい。
「生花って、指定はしなかったけど…。」
私の事をよくわかってくれていることが嬉しくて、だけどほんの少しだけ照れくさくて、彼らしい気配りにそうぼやいてみたけれど。
どうやったって、嬉しい気持ちは隠せそうにない。
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