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馬の文献:義足手術(Vlahos and Redden. 2005)

2011-05-11 | 文献
「馬の遠位肢の断脚術:適応症、手技、長期的ケアー」
Vlahos TP, Redden RF. Amputation of the equine distal limb: indications, techniques and long-term care. Equine Vet Educ. 2005; 17(4): 212-217.

この症例論文では、馬における断脚術(Amputation)および義足手術(Limb prosthesis)の治療効果を評価するため、遠位肢(Distal limb)の重篤な運動器疾患(Severe musculoskeletal disorder)に対して断脚術&義足手術が応用された26頭の患馬における、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

この研究の術式では、球節(7頭)、冠関節(10頭)、または蹄関節(9頭)の部位での断脚が施され、断脚端(Amputated stump)の部位に蹄叉(Hoof frog)の組織を自家的移植(Autologous transplantation)することで、荷重の際に断脚端の軟部組織が損傷されるのを予防して、体重支持を容易にする手法が用いられました。この研究における義足手術の適応症(Indications)としては、蹄葉炎(Laminitis)と感染性関節炎(Septic arthritis)を併発した場合が31%(8/26頭)と最も多く、蹄葉炎のみを発症した場合が27%(7/26頭)、感染性関節炎のみを発症した場合が19%(5/26頭)を占めていました。

結果としては、義足手術を受けた26頭の患馬のうち、長期生存率(Long-term survival rate)は42%(11/26頭)でしたが(長期生存:手術から一年以上生存)、平均生存期間は二年半(31ヶ月)で、最長では12年間(144ヶ月)も生存したことが報告されています。このうち、前肢における遠位肢の義足手術では、長期生存率は18%(3/17頭)で、平均生存期間は一年以下(11ヶ月)であったのに対して、後肢における遠位肢の義足手術では、長期生存率は89%(8/9頭)と顕著に高く、平均生存期間も五年半以上(68ヶ月)に及んだことが報告されています。このため、馬における遠位肢の義足手術は、救援療法(Salvage procedure)として考慮される有用な治療法の一つであり、特に後肢においては高い治療成功率と、良好な予後が期待されることが示唆されました。

この研究では、断脚端に蹄叉組織を移植することで、術後から一週間〜十日目という短期間のうちに、患肢への良好な体重負荷(Weight-bearing)が行われるようになったことが報告されています(上写真は術後の八日目)。そして、堅固で角化した蹄叉組織が断脚端に存在することで、義足手術を受けた遠位肢のうち87%(26/30肢)において、健康な断脚端の形成(Healthy stump formation)が達成されました。また、この移植された蹄叉は、普通の蹄と同様に伸びてくるので、定期的な削切を要しました。

この研究では、手術直後における外固定法(External fixation)として、管骨に通した二本のピンをギプス素材に埋め込むことで、遠位肢に経固定具ピンギプス(Distal-limb transfixation pin cast)を装着させて、その断端に金属製の仮義足(Temporary prosthesis)を連結させる手法が用いられました。しかし、15%(4/26頭)の症例において、麻酔覚醒(Anesthesia recovery)の際に、ピン穴箇所での致死的管骨骨折(Catastrophic cannon bone fracture)を発症して、安楽死(Euthanasia)となったことが報告されています。この研究の術式において、断脚端に移植された蹄叉組織は、手術直後ではまだ荷重が出来ないため、外固定法による支持を要しますが、この際には、吊起帯(Sling)やプールを使った麻酔覚醒によって、患肢を保護することが重要である事が改めて示されました。

この研究では、義足手術を受けた26頭の患馬のうち、手術時の年齢が若いほど予後が有意に良い傾向が見られました。例えば、五歳未満の患馬における長期生存率(91%)や平均生存期間(64ヶ月)は、五歳〜十歳の患馬における長期生存率(0%)や平均生存期間(5ヶ月)、および十五歳以上の患馬における長期生存率(17%)や平均生存期間(9ヶ月)よりも、有意に高い&長いことが示されました。この理由については、この論文内では明瞭には考察されていませんが、子馬〜若齢馬のほうが断脚端の良好な治癒が起こり易かったり、体重が軽い症例が多かったことが影響していると推測されます。

この研究では、義足手術を受けた26頭の患馬の品種を見ると、サラブレッドが9頭と最も多かったものの、このサラブレッド種における長期生存率(22%)や平均生存期間(22ヶ月)は、非サラブレッド種における長期生存率(53%)や平均生存期間(35ヶ月)よりも、やや低い&短い傾向が認められました(統計的な有意差は無し)。このため、神経質な気質(Disposition)を示すことの多いサラブレッドでは、各患馬の性格や賢さを術前に観察して、義足手術の実施の是非を慎重に判断することが重要であると考えられました。

この研究では、義足手術を受けた26頭の患馬の性別を見ると、牝馬(Mare)が21頭、種牡馬(Stallion)が4頭、去勢馬(Gelding)が1頭となっており、長期生存率は牝馬では38%(8/21頭)であったのに対して、種牡馬では50%(2/4頭)で、平均生存期間は牝馬では27ヶ月であったのに対して、種牡馬では35ヶ月というように、いずれも性別による生存率&生存期間には有意差は認められませんでした。他の文献では、種牡馬よりも温和な性格である場合の多い牝馬のほうが、義足手術には向いているという指摘もなされていますが(Koger. Eq Med & Surg. 3rd Ed. 1982:1027)、この研究では、牝馬のほうが良い予後を示すというデータは示されていません。

この研究では、四頭の症例に対して、両側性の断脚術&義足手術(Bilateral amputation and prosthesis)が実施されました(四頭とも両前肢の断脚)。しかし、これらの患馬では、一年以上生存した馬は一頭もなく(長期生存率:0%)、平均生存期間は3ヶ月半以下にとどまりました。また、この四頭のうち二頭が、慢性感染(Chronic infection)およびピン孔箇所での管骨骨折によって、安楽死となったことが報告されています。このため、馬における両側性の義足手術は、術後ケアーが難しく、予後不良を呈する危険性が高いことが示唆されました。

Photo courtesy of Equine Vet Educ. 2005; 17: 212.

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