ちょっと待って

「パパ？　ちょっと、く、くるし～んだけど！」

久しぶりのツーショットに、パパはもう自分のことしか頭になかった。

「ねぇえ？　パパ？　ちょっと、　ちょっと待ってくれない？
　この格好、なんか、　く、くるしぃーの・・・。
　もっ、もうちょっとだけ下に降ろして欲しいんだけど？」

ハッピーの叫びは届かず、そのままママはシャッターを押してしまった。

「パパのバカッ！　苦しぃ～って言ってるのに聞こえないの？！
　自分だけ一人すましちゃって！
　変な顔で写ってたら許さないからーー！！
　もー！　パパのバカ！！」

・・・・・。
結構・・・いい顔で撮れてたよ・・・？！

ちゅっ！

「もー　ちゅっちゅ　ちゅっちゅって　うるさいのよー　
　今度はママ？！　はい　チュッ。」

最近の”ちゅー”は、なんかそっけないのです。
”ちゅー”をせがむ二人に少しうんざり気味のようです。
もう”ちゅー”ではなく、”鼻ちょい”です・・・。

・・・・・。

な、なんか最近ママに似てきたなぁ・・・

たいくつ

「はぁ～・・・。
　ひまだなぁ～・・・。
　誰か遊んでくれないかなぁ～・・・。
　パパはいつも同じでつまんないのよね。

　ママはまだ帰ってこないし・・・。

　おなかもすいてきちゃった。
　・・・・・。

　はぁ～・・・。」

そんなハッピーのため息が聞こえてきそうです。

おっ、　おーーい。
はっ、　はっぴーぃーーちゃーーん。

知らない人

「この人たちは・・・だれなの？・・・パパ・・ママ・・」

初めて私たち以外の人に可愛がられ、
ハッピーはとっても戸惑っていました。

大丈夫だよ。
ほら。みんなの顔を見てごらん。
みんなとってもいい笑顔でしょ？
ハッピーがいるとみんな笑顔になるんだよ。

もっともっと人に可愛がられ、
もっともっと人の暖かさを知ってください。

そして、たくさんの人に幸せを運んで来てください。

きれいね。

「ママの座り方 きれいね・・・」

ハッピーは女の子。

最近、自分の格好が気になるらしい。

いつもママの姿を観察している。

「・・・あたしも いつか・・・」

・・・・・が、がんばれ ハッピー。

ん？ごはんなの？

「いま ごはんって言ったの？」

隠れ部屋からうれしそうにハッピーが出てきた。

ハッピーは隠れ部屋を見つけました。
何か悪いことをすると自分からテーブルの下に身を隠します。
ここが唯一の隠れ部屋で、そして反省部屋になっています。

近頃ちょっと目を離して戻ってくると、目をまんまるくして
上目づかいでこちらを「じーーー」と見ています。

「どうしたの？」

「じーーー」
反応はありません。

そういう時は決まって何か悪いことをしています。

互いに「じーーー」と相手の様子を伺っていると、
口が金魚の口のように、ちょっとだけ動き始めます。
「パク。・・・　パク。・・・・」

ん？よーく見ると、口から何かはみ出していて・・・。

「あーーー！」
と同時に隠れ部屋へ。

やっぱり・・・。靴下を持って来ていました。

ハッピーは何が悪い事かを理解しています。
でもまだそれを我慢できません。

君の成長をゆっくり見守ります。

お外って楽しいね！

「お外って楽しいね！」
まるでそう叫びながら走っているようです。

「そうだよ。これからもっと楽しいことがいっぱいあるんだよ。」
ハピーが初めて見せた無邪気な姿がうれしくて、
我を忘れ一緒に走っていました。

「よかったね！ハッピー！　よかったね！ハッピー！」
ママの声が少し上ずって震えているのが分かりました。

ハッピー。君はやっぱり幸せを運んできてくれたのですね。
ありがとう。ありがとう。

パァ～パァ～！

「パァ～パァ！」
泣き出しそうな顔でトコトコ駆け出してきた君・・・

君は生まれて初めて大地を駆けだした。
よーくがんばったねハッピー

そのけなげな姿に涙が・・・。

頼りにされている。
そのことがとてもうれしかったのでした。

こ・こわいヨ～

初めての外出

ここはどこ？
いつもと違ってこわいヨ～・・・ママのそばにずっといるもん

不安げな顔のあなたがカワイくて、ずっと抱きしめていたいけど・・・

ハッピー、パパが呼んでるよ！行っておいで！

パパへ

「パパはね。ハッピーが大好きなんだよ。
パパのところへも行ってあげてね。」

私がそう言うとじっと考えた後・・・。

「・・・パァーパァー・・・　どこ・・・」

パパよかったね。

やっぱりハッピーもパパが大好きなんだね。