そっけない魚と、まるい葉っぱ。

おしゃべりが、とても下手なのです。

し そ そ ろ え

2017年05月24日 01時20分15秒 | 日記
ずっと前。

1000キロ以上の異動で、引越した後

縁もゆかりも、知り合いもいない地で
初めて有期の仕事についた。

指示がまず、方言が強すぎて難解だった。
でも職員の方は気持ちが温かく
時間の経過と共に、個人的なおしゃべりも
増えていった。

そこで覚えた言葉。

しそそろえ。


方言だと思い、小さく復唱したら
頭の中で、束ねられた紫蘇が浮かんだ。

「 紫蘇 揃え!」

ああ、八百屋さんで10枚一揃えに
束ねられて売っているアレだ。

ソフトプレスでもするのか?と思うくらい
葉の大きさが揃った、ズレのない重なりに

この内職をする人がいるんだ
と、地味だが緻密な出来栄えに
喉が塞ぐ思いがした。


その紫蘇揃えを、隣席の職員さんの妻が
されていたというお話であった。

夫があれだけ若かったのだから
妻も私より若いはずで。

その頃はフェミニズムも知らず
内職仕事の単価がどれだけ低いかも
そのずっと後の生活で知ることになった。


庭の鉢で繁った紫蘇の葉を
何枚かハサミで採り、揃えてみる。

そうか、規格外の大きさは
この時点で選り分けられ
葉のサイズを揃えるところから
始まるんだ。

茎の長さも同じにし、折れないように
ミニサイズのゴムで留めるのだったね。
そうやって店先で売られている。
細やかな神経を使う仕事

ひと束 1000円くらいで売ったら
しそそろえ という名のパートは
認知されていくのだろうか。
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お引越し、やめました。

2017年05月15日 20時06分21秒 | 日記
あらかた処分が終わった昨日、事態は急変した。
未練たらたらの私に夫が電話でこう言ったのだ。

「 まだ、間に合うと思うが 」

新たな社宅への準備に会社が動き出してはいるが
今なら謝り倒してひっくり返せるぞ、という
最後のタイミングを差し出してきたのだった。

まだ・・・、間に合うの?


拙い私の脳は、一生懸命 特殊な足し算をしていた。

あっちの通帳の数字と、こっちの数字と
これらが売れれば、その数字になるんじゃないか?
足らないか?   

ギリギリ、足りるみたいだ。


父に相談をしてみると、
「 買ったらいいじゃないか 」 と
呆気なく言う。


「 じゃ、買う 」
そう返事をしてからは早かった。



夫は今日、家主と会社に
最新で最後のお返事をし、

父は、その確認をとってから
私の有価証券を、きれいさっぱり
売り払ってくれた。

ヤフーニュースで
今日は株価が下がっている、と
今朝見たばかりだったのに

売ったんだ、
売れたんだ、

と、

足の筋肉は衰えているのに
そっちの、ものすごい瞬発力に
唖然だった。




足し算を繰り返してみた。


うーん・・・・


消費が下手だった自分を顧みる。
使うアテの無いお金を貯めても
それを悔いて死ぬだけだろうに、

それを
こんなデカい買い物に
一気に投入した自分の
買い物下手に

もう一度、あきれた。




医療保険の保険料分だけ残すような
ほんのわずかな残高が
残る計算になる。

もう、軽自動車一台 買えない私。

だけど、不動産屋さんには
オラがこの家さ、買う。と
お返事をした。



転勤族は、終わりだ。
8回目の引っ越しは、しない。


家の中、スカスカだけれど
お庭の緑は今日も元気で、
天窓はいつものように
太陽の光を送り込んでいる。



やっと安らかに
死ねる場所が出来た。

それが素直な気持ちだった。

他人様の持ち家である社宅で、
孤独死したら

私も、その家主も目があてられない。



お墓には入りたくない私が
お墓の替わりに
住まいを買ったと思えばいい。


もう、悩まなくていいんだ。


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辞書を処分した。何かが終わった気がした。

2017年05月13日 20時09分57秒 | 日記
今、住んでいる社宅は
コンパクトな4LDK で

その4部屋それぞれに、毎日
厳しい視線でチェックを入れた。

使用頻度の低いものや
死蔵品を掘り起こし、袋に分けて玄関へ。

庭周りのガーデニンググッズや
日避け網を収納していた
ガーデンコンテナごと車に積み込む。
灯油ポリもひとつ。傘も軍手も。
枕も、辞書も。

トランクぱんぱん。
後部座席も、後部が見えない。

助手席には生活ゴミ、鉄類、ペット類
リサイクルプラスチック…

たまにハサミが動かなくなる高枝切バサミ
大きな突っ張り棒は車内を斜めに横断。

たぶん要るものまで捨てたと思う。
まだ使えるものが、ほとんどだった。
でも それを残していたら
前に進めない、と自分に叱咤した。

なんだか途中で、よくわからなくなった。
どうしてこんなことを
たったひとりやっているのか、と。

実家の方が、よほど棚も納戸も
ギシギシの、ぱんぱんなのに。


B'z の稲葉さんと大コラボしながら
黒いサングラスして、外れの処分場へ走った。

信号で止まるたびに
車内の荷を見られているような
気がしたが

そういえば熊本から引き上げてくる日も
デミオに布団を積みに積んで
壁のような後部座席を、次男とケラケラ
笑っていたんだ。

あの頃の次男は天使みたいだった。


処分場に乗り付けたら
職員のおじさんに笑われた。

ようけ持ってきたの、てな感じで。

そ、一人でね と自虐的な笑いを返し
次々と車から荷を引っ張り出した。

きっとおじさん、私が近々離婚でも
するのだと思ったんじゃなかろうか。



帰りは、車内がスカスカ過ぎて
空も飛べそうな感じだった。

わたし、こんな思いをするために
夫と結婚したのだろうか。

息子たちのすごく難しい時、
息子たちの巣立つ時、

家族の引越し、

全部、私が 担当 みたいに
ひとり渦中に立たされた

会社に行く夫というのは
会社に行くというだけで
何度でも使えるジョーカーを
持っているようだった。

甚だ勘違い、ジョーカー。
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天窓の下の分岐点。

2017年05月10日 13時35分21秒 | 日記
結果から言ってしまえば、
家を買うことを諦めた。

諦めるに至るまで
連休中の7日間ほど
自分の中で、

「 買おう、買えない 」が

二転三転を繰り返した。

福島の物件がまだ未処理なので
手元の貯蓄を大きく食ってしまう。

でも、この家を手にすれば
永遠に家族の居場所、
私の死場所が確保され、
安心して明日を生きられる。

そう思っていた。

でも、曖昧な否を唱えたのは夫であり
この家で育った息子たちも
まるで未練は無いと言い切った。

私の独りよがりであったのだ。

でも、それでも
普段 ここで
一人暮らす私が こんなにこの家を
気に入っている。

それが大事なんじゃないかと
昔、この地でフェミニズムを覚えた頃の
闘志みたいなものが、むっくりと
私の中で起き上がっていた。


「 私が買おう 」


そう思いついて、自分の複数の口座と
有価証券の評価額を探った。

キャッシュで買うには、100万円足らなかった。
だが実家の父が「土地も建物もおまえの名義になるのなら融資するぞ」

と、生前贈与的なことを言い始め
夢を見た。


この話を夫に提案してみた。
すると。


俺たちが離婚する事態になった時は
いくら名義が妻のものでも
財産は全て半分こだから。と言われた。


もう絶句だった。
呼吸も止まりそうだった。


割りにあわねぇ、と思ったのは
私の方だ。


転勤族になったばかりに
詳細は省くが、私は自分の契機の多くを
東京に捨ててきた。

思春期の息子たちの大ピンチを
直接 真っ向から請けたのも

その息子たちが巣立つ時に
命を削るような激しい引越しを
こなしたのも私。

夫は仕上がった部屋に後から来て
乾杯して酔っ払っただけの人だ。

社用と個人の飲み会を合わせたら
何百回になるのか?

私はその間、ずっと家にいたのだ。
社会人としての私の成果は
ほぼゼロに等しい。

職務経歴書を埋めた有期の仕事たちは
自分への未練がナメクジのように
這いずった痕だ。


それも これも 全部、半分こにされてしまうのか????



なんて小さい器。
小皿のような夫。




そんな人を選んだ私が
大馬鹿者だったのだ。





家族が帰っていった静かな家の
一番お気に入りの天窓を見上げながら


夜に向かう光の下で
吠えるように、泣き続けた。


私の涙は
階段の手すりに
いっぱい いっぱい 染み込んだ。




来月あたり
窓の細長いアノ家に引っ越すことに
なるのだろう。
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オシャレな街の、不具合な家。

2017年05月08日 00時48分22秒 | 日記
会社が提示してきた新たな物件は
新興住宅街の真ん中にあった。

近くには大きなショッピングモールがあり
街全体がオシャレな雰囲気を放っている。

10人いたら9人は
喜んで移り住むだろう、と
言えそうな物件であった。

でもそこも社員のお宅であり
家主は南九州に勤務している。
その人物が性格的になかなか
ダークな人物だということも
夫は語っていた。

その社宅に連休前まで住んでいた夫婦が
私達の無理を聞き入れてくれ、
引越しのバタバタの最中、間取りを
見せてくださった。

外から見ると立派な注文建築だが
中は細長い長方形を無理に細かく
部屋を仕切り、

天窓が無いせいか、上天気の日にもかかわらず
家の中は暗かった。

次々と説明をくれる知人夫婦。
部屋数はたっぷりあるが、
トイレと台所換気扇のところで
「壊れてしまい、家主に言ったのだけど
直してもらえなかった。」

と渋い顔をされた。

私なんぞ、
「し、信じられない」と
呟いてしまったほどだ。

我が家の家主は給湯器に30、
ガス台に10、自身の判断で外装塗り替え100 も
近年まとめて出費してくださった。

それに比べ、あちらの家主の
なんとケチというか
大人の対応が出来ない非常識ぶりに
「こんな物件、誰が入るもんか」と

忙しい最中に
内覧させてくださった2人に
心から礼を述べながら
そこに7年もすみ続けたその夫婦に
同情すら覚えた。

つづく
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